一二三四五六七

その時に感じたことを書きたいです。

『祝姫』感想

「祝姫(非18禁) (DMM) (2016-01-29)」メッセージ既読数100%

 プレイ中には没入が阻害された要因もあって(完全に自分のせい)、周りが絶賛するほどか?とか思っていたんですけど、色々書くために設定とか丁寧に整理していくと筋の通った納得の行く説明が自分の中で出来たので、プレイ後の今は結構良かったなぁと思っています。

序盤から中盤、だいたい6章辺りまでは「声優さんの演技すごいな~~これからどうなるんだろう?ワクワク(*´ω`*)今のところ80点だけど以降の展開では85以上もあり得るぞ~~楽しみ~」って感じでした。

それ以降は「ふむふむ、現実で起こっている問題が、序盤の霊障で示唆されていて、それを回収していく感じなのか。ひぐらしでいう出題編→解答編みたいな流れみたいだな~。扱う問題も想像以上に重いところがあって、結構心が抉られる!」という感じでした。

自分にとって強烈に刺さるような+αがなかったので、記憶には残るけれども記念には残らなかったという印象です。グロとか生理的嫌悪感を抱くようなものが苦手というのもありましたね。

 

さて、今回は「全体の構成」について書いていきたいと思います。

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前半で提示された物語群が後半の展開や問題を示唆、象徴していたというオーソドックスな構成です。

「04.痕姫」が途中に挿入され、「06,07,08」は順不同であったので、どれがどれに対応するのか少し分かり難くなっていたように感じました。(最初01ではなくが04が椿子に対応しているのかと思い混乱していた。)

 霊障で白昼夢を見せるという作中の設定を利用して、複数の物語を提示する以上抱えざるを得ないパラレル性を上手く回避して、一つの現実世界として通していたのには少し感心しました。

同じ作者の作品である「ひぐらし」だと平行世界を用いてたんで構成的には一緒なんですけどね。(基本的にこの類の構成は夢や記憶やループや並行世界で達成することが多く、今回は夢に当たるのだが、そのような物語を提示する夢を見るきちんとした理由が、霊障という「煤」に強く関連する設定で与えられていたのが良かった。)

 それでも、「04.痕姫-10.シャチホコ・グレートデイズ」の存在意義が薄かったり、上の画像の線の対応がぐちゃぐちゃなので綺麗になるように番号配置したほうが良かったなぁと思ったりと、隔靴掻痒の感があるのは否めないかなぁと

そういうところも詰まっていると自分にとってかなりプラスになり得たので、ちょっと惜しかったです。

あ、後、せっかく声優さんの演技が凄いのに、2016年のゲームにも関わらずボイスカットオフ機能がないのはかなり不便でした。次回作があれば必ず実装して欲しいです。

 

((本当は「呪いの煤」の設定についてプレイ中に気になってしまって没入しきれなかったんですよね。プレイ後に頑張ってバックログ調べてスクショ撮って自分なりに纏めたら、作中で提示されていた情報から気になった部分に納得の行く解釈が出来たので、長々と書いていたのがあえなく没になりました。悲しい。))

 

2016/8/22 追記

・椿子ルートについて

『祝姫』では、序盤の物語群は白昼夢のなか不可解なままで終わってしまうが、実はそれが各ヒロインの抱える現実世界での問題を象徴していた、という構造になっており、これは各ヒロイン√をプレイした時点で明らかになります。

(前半プレイ時には夢か現実かの判断が完全にはつかず、各物語が劇的な終わり方をするので、章ごとの繋がりが唐突でぶつ切りになっていたように感じてしまったのは自分だけでしょうか...)

いま、対応の例を挙げると

鼎√:「02.幻姫」↔「06.鼎」

莉里杏√:「03.歌姫」↔「07.莉里杏」

であり、この2人についてはプレイした人にはすぐ納得してもらえると思います。

 さて問題なのは、椿子についてです。いろいろな感想に目を通させてもらいましたが、この椿子√の対応については不鮮明だとかよく分からないという意見がぽつぽつありました。

全くもってその通りだと自分も感じたので、どういう要因で分かり難くなっているのかについて少し説明を試みてみようと思います。

 

・椿子:「01.呪姫」↔「08.椿子」の対応が分かりにくい理由

一番の要因は、他の√では主に一つのことを象徴していたのに対して、椿子の√では主に2つのことを象徴していたことになるかと思います。その2つのこととは、

①椿子が幼女時代にパパおじさんからされた仕打ち 

②涼のお嫁さんになりたいという夢があること

です。これらが複合的に絡み合っており、「01.呪姫」が一番最初に置かれていたり、「04.痕姫」の存在することもあって、分かりにくさに拍車をかけています。

また、「01.呪姫」において以下のことを前提としたいです。

ⅰ.「01.呪姫」は椿子が霊障を受けて見た白昼夢である。

ⅱ.椿子は現実世界において、①の記憶を封印していた。

 

・①について

単に①を意味したいのであれば、「01.呪姫」において風呂場で怪物に嬲られていた人形の顔は椿子でよかったはずです。しかし、実際にやられていたのは十重でした。

これは、「01.呪姫」の時点において椿子がこの仕打ちを記憶から封印していた(ⅱ)以上椿子であってはならないのでやむを得ません。

では、なぜ十重だったのでしょうか?これは、「01.呪姫」が最初の章であり十重しか他にいなかったから、というのもあるでしょうが、②にも無関係ではないと思います。

 

・② について

「01.呪姫」が椿子を苦しめるような内容の白昼夢である(ⅰ)ので、②の夢が叶わない、つまり、椿子が複数回忠告したのにも関わらず涼が他の女に取られてしまう展開になるのは自然なことだと思います。

この時、他のヒロインが「01.呪姫」の主眼となる必要があり、これが最初の物語である「01.呪姫」で成されていることにより、「01.呪姫」が椿子の話であるということを一層分かり難くさせているように感じます。

(自分もはじめは『「01.呪姫」=十重の話or単なる導入』だと考えていました。)

また、作品冒頭の右も左もわからない状態で十重にスポットライトを当てることで、十重=メインヒロイン感をプレイヤーに与える効果もあったかと思います。

 

・結局の構図

「椿子は記憶を封印しているので嬲られるのは椿子以外の必要がある(①)」↔『「01.呪姫」は椿子の物語だが主眼は十重』↔「悪夢なので椿子以外のヒロインが涼と結ばれんとする(②)」

 

 つまり、「01.呪姫」において主眼を十重に置き、そのことをハブとして①と②の2つことを象徴していたということが、椿子√の対応を分かりづらくさせていた要因ではないかなと。

まぁ個人的には一つの物語で2つのことを意味するのは上手いなと思うんですけどね。

 

終わりです。