『アステリズム』感想
『アステリズム -Astraythem- (Chuablesoft) (2012-06-29)』コンプ。
姉ゲーでしかも結構面白いという評判だったので、姉スキーの自分としては割と期待してましたが、いざプレイしてみると初っ端で「義姉」と判明してちょっと悲しくなりました。
血縁関係があればプラスだけど、でもまぁ義姉でもマイナスにはならないしいいか~、と気を取り直して進めるとかなりのシスコンだったので、早々にOKサインが出ました。物語もタイムトラベル物で、設定もなんか作ってそうで良さげ雰囲気が出てましたね。
途中までは。
(´;ω;`)
そう、重複融合が出てくるまでは...
「親殺しのパラドックス」などを回避するために、本作では並行世界について次のような設定がありました。
・過去及び未来へタイムトラベルをすると、別の並行世界に移動するので、元の世界の事象を変えることは出来ない。
(例)世界Aで過去に飛ぶ→Aの過去に行くのではなく並行世界B(≠A)の過去に行く→そこで改変を行っても、AではなくBの過去しか変わらない。また、Bから未来へと再度タイムトラベルを行ったとしても、(問題が解決された)新たな並行世界Cに行くのみであり、タイムトラベルにより元の世界に戻るのは不可能である。
つまり、タイムトラベルは別の並行世界への移動と同義であり、元の並行世界に戻らないことで種々の問題の解決を図っているわけです。
次に「重複融合」について説明します。これは、
別々の並行世界に居る複数の同一主体が
①同一時点にタイムトラベルする
②同じ強い想いを持っている
の2つを満たす場合に、複数の記憶の和集合を持つ単一の存在としてその時点にタイムトラベルがなされる、というものです。
(例)いま、2つの世界から同じ時点にタイムトラベルする場合を考える。
同じ時間を指定してA世界の太郎くんとB世界の太郎くんがタイムトラベルすると、「A世界の太郎くんはX世界に行き、B世界の太郎くんはY世界に行く」のではなく、「AとBの両方の記憶を持った存在が、指定した時点のX(orY)世界にタイムトラベルしてくる」のである。*1
これは非常に由々しき事態です。
タイムトラベルは別の並行世界への移動と同義であり、任意のタイムトラベルの行き先が他のタイムトラベルと異なっていたのに対して、重複融合ではタイムトラベル先が被る場合が出てきてしまうわけです。
一番の問題だと思うのは、「これからの未来、常に主人公の身に重複融合が起こり得るので、記憶の同一性が担保されていない」ということです。未来からタイムトラベルしてこられ、未来の記憶を持った自分と混ざってしまう場合があります。
具体的に本作のエピローグ部分について考えてみましょう。
C4世界における現代(2012年)の8/12を指定し、重複融合が起こります。
その時に、主人公が満たしていた条件は次の2つでした。
①2012/8/12の20:00を指定しタイムトラベルをする
②姉への強い想いがある
これで重複融合を果たし、C4世界において主人公はC3の記憶を持ち姉と結ばれHappyEndとなるわけですが、もしC4世界の未来において姉に危機があり、主人公が①時点にタイムトラベルしたらどうなるでしょうか。
答えは、「強制的に未来の記憶を持たされ、2012/8/12から人生やり直し」です。
記憶の連続性が自己の同一性を担保するのであれば、いつ他の記憶を混ぜられ”別人”として2012/8/12からやり直させられるのか分からないまま一生を過ごすわけです。こんなのHappyEndどころか、生きているとさえ言えないのではないかと思ってしまいます。あまりにもひどすぎる結末です。
さて、このことについて幾つか反論が浮かぶと思います。
・「重複融合は移動する時間の方向が同じでないと起こらない設定にすればよい」
2012/8/12の重複融合は、5日前と1999年という両方とも過去からのタイムトラベルだったから起こった、という設定にすれば、未来からのタイムトラベルでは重複融合は起こらない!やったね!という話ですね。
この反論は無意味です。
なぜなら、「C4の未来」→「2012/8/12以前の過去」とタイムトラベルしてから、2012/8/12にタイムトラベルすればいいだけだからです。
このことから、「重複融合」が「①同一時点にタイムトラベルする」という条件が比較的に緩いことも実感できます。
・「過去時点と未来時点での姉の危機は違うものなので、想いが違うから重複融合は起こらないよ説」
過去時点では汚染が姉の危機であり、それから救う(救った)という想いであったけれども、未来時点の危機をそれとは違うものにすれば、想いが違うので「重複融合」の②の条件が満たされず、重複融合は起こらない!やったね!という話です。
さて、作中起こった2012/8/12の重複融合について思い返してみましょう。
C4世界に元々いた5日前の主人公(姉に汚染の危機なし)と、C3世界1999年主人公(汚染の危機あり)の重複融合でした。つまり、汚染という危機の有無は主眼ではなく、「姉に対する強い想い」が重要なのでした。そして、これは次の文章からも読み取れます。
だとすると、未来においても主人公が「姉へを心の底から愛して」いれば条件は満たされることになります。なので、未来からの重複融合は否定しきれないでしょう。
以上のことを纏めると、「タイムトラベルは別の並行世界への移動と同義であるという設定」と「重複融合の設定」に矛盾する部分があったことが問題だったと思います。
(本気で集中できずプレイしてしまったことに起因する自分の拙い理解が悪いのでしょうが、「設定により並行世界間の移動という理論的問題が生じないように上手く構成されている」などのタイムトラベル物としての無矛盾を褒めている感想は理解不能でした。)
まぁここからが本題です。
なんというか、自分はプレイ中に、「極端な例を代入して作中の設定を無理やり検証する」ということをやってしまいます。作中の設定の自由度が高いほど、その入れる例がより極端になってしまって、納得行かない可能性が高くなり、モヤモヤすることが多くなります。「いやいや、これこの場合だと変なことになるんだけど、この設定は一体どうなってんの?」って感じです。
なので、自由度を高くしない(タイムトラベルとかを用いない)とか制約を多くする(コードギアス)とかだと、極端な例が狭まるので有り難いです。
そんな余計なことを考えさせないほど設定や説明がきちんとしていたり、物語にのめり込ませるような作品が一番いいんですけどね。こればっかりは自分の問題なのでプレイしてみないと分かんないです。
自分はこういうところが気になるんです、という記事でした。
P.S.
素朴に考えれば、九厘は主人公の実母ということになると思います。実姉という可能性もありえますね。ちなみに、九厘が一番好きでした。
ーーー姉さんに恋をして、 姉さんも恋をして、姉さんと恋をした
*1:これがZ世界ではなくCorD世界である理由は、作中でC4に融合されるからです。