一二三四五六七

その時に感じたことを書きたいです。

『トライアンソロジー ~三面鏡の国のアリス~』感想

『トライアンソロジー ~三面鏡の国のアリス~(07th Expansion(同人)) (2016-08-31)』コンプ。

プレイ時間は12時間ちょっとくらいだったと思います。

ボイス無しのゲームなので、感覚的には結構がっつり読んだかなという印象です。

 

特筆すべきは、やはりナカオボウシさん手掛ける演出ですね。

 

もうね、むっちゃ動きます。E-moteとか3Dとかではなく、なんというか「ノベルゲームの中で出来る最大限、ノベルゲームとして動きを持たせている」って感じです。

まぁこればっかりはナカオボウシさんが演出した作品をやってみないとなかなか伝わりにくいと思うので、興味のある方は本作でもやってみてください。3000+税でこの演出が体験出来るのなら、ある程度満足出来る選択肢ではないかと思います。

 

(本作やりたくけどナカオボウシさんの演出には興味アリ!って方には、氏が代表を務めるサークルの「W-standard, Wonderland Lv.1」がオススメです。まだ完結していないんですけどこの段階でも十分面白かったですし、演出も凝っています。)

 

 

 さて、ではズバリ本作が面白かったかどうかなんですが、個人的には「まぁそこそこ面白い部分もあったかなぁ」、くらいです。

全体的に素材自体は悪くなく、演出という名の最高の調味料もあったのに、如何せん肝心のシナリオや構成という調理方法が追いついていなかったかな~と。

 

ライターの言いたかったであろうこともその熱量も伝わってはくるんですが、全体を通してみると話題が二転三転するので、ちょっとブレてしまったという印象が拭えないです。一つ一つに対する掘り下げが十分には丁寧でなかったというか。ひとことで言うと、「なんか惜しい」って感じです。 

 

ここからはネタバレありで、適当に少し掘り下げて箇条書きでお送りします。

 

ついでに言っておきますが、自分は別に竜騎士さんのファンでもなんでもないです。

『ROSE GUNS DAYS~ベスト盤~』のついでに買っておくか~、くらいの軽~い気持ちで特にシナリオには期待もせずに本作をやりました。(ナカオさんの演出には期待してました。)

 

なので、竜騎士さんのシナリオの特徴や癖についてあまり知らないですし、それを理解していない人間の感想だということを一応断っておきます。

 

・異なる3つの物語が1つに繋がっていく楽しみ...?

 

ひとつ、「のどかな田舎の世界」
…田舎育ちの仲良し4人組が高校進学を機に見事なまでに変わってしまった青春ドラマ。

ふたつ、「キラキラと輝く都会の学園世界」
…ちょっぴり怠惰な主人公が夏の終わりに「伝説の勇者」になっちゃう学園を舞台にしたドタバタ恋愛モノ。

みっつ、「遠い未来の戦争の世界」
…未来編では、人類と類人猿型宇宙人がファーストコンタクトに失敗、
全面戦争へと発展した世界の、あるところで繰り広げられている戦場を描いたハードSF!?

―――これは“腸裂きのアリス”と呼ばれる残酷な魔女が紡ぎだす、3つの世界をめぐるお伽噺…

場所や時代がまったく異なる世界で語られる3つの物語。
全てを目にした時、新たに開かれる未知なる体験をとくと堪能くださいませ!!

とらのあなWebsiteより引用)

 

このあらすじを読んで、 「田舎の青春ドラマ」と「ドタバタ学園ラブコメ」と「ドンパチ未来バトル」という全く異なる3つの物語がどのようにして一つの物語に収束していくのか、という部分をとても楽しみにしていました。ぶっちゃけかなりワクワクしていました。

 

というのも、「一見異なるように見える物語群が、実は現実世界でのある出来事を示唆していて...」という話には、面白くなるものが多いと個人的に感じているからです。(某館とか

 で、その際の面白さを決定する要素に、大きく分けて次の2つが挙げられると思います。

①完結する個々の物語自体の面白さ

②異なる物語群にどのような繋がりを持たさせて一つに纏めるか

 

①と②はある種トレードオフの関係になっていると思っていて、あっちを立てればこっちがあんまり立たずになるからこそ難しく、その分両方を上手く描いた時のリターンが大きいです。

 

結論から言うと、本作は①はまぁまぁで、②はてんで駄目でした。

正直かなりガックリ来るレベルで②の方が駄目でした(´;ω;`)

 

「ベスピオ2438」と「カントリーガアル」の序盤は結構好きだったんですけどね...

「学園恋愛(と呼ぶにはおこがましい)アドベンチャー」は微妙でした。

 

・3つの物語の纏め方のどこが駄目だったの?

 

3つの物語でグルグルと輪廻を形成しているだけで、作品内主体の現実世界へ影響があるように感じられなかったからです。

 

「ゲームや漫画といったコンテンツに飽きては次へ、飽きては次へとするプレイヤーを表している」、というのは確かにそうで、そういう意味ではプレイヤーの現実世界へは訴えかけてきます(とはいえこれも真新しくない使い古されたメタ的な説教)。

 

けれども肝心の、作品内の主体であるアリスに対して、その3つの物語の繋がりは特に意味を持たないように思います。

結局アリスは引きニートだったわけですが、あの物語群を見て一歩踏み出すようになるのは理解不能でした。

 

「自分で積極的に選択することが大事」だったのであれば、アリスが自殺という選択をした時点で終わっていれば一番のHappyENDだったと自分は思います。

 

何故かと言うと、結局のところアリスにはドアの外に連れだしてくれるようなモノが無かったからです。そんな者も居なければ、そんな物もなかったはずです。

もしアリスが読んだ3つの物語がそれに該当するというのが作者の意図であったのならば、それは自分にとってはズレたもののように感じられました。

 

一応、ペイントで書いた世界一わかりやすい図解を置いておきます(*^^*)

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あ、あと3つの物語を繋げるための情報の出し方もかなり下手でした。

あんな唐突に作者の都合でその時点で出したい情報だけをを出すのも厳しかったです。物語が一区切りついて、ドヤ顔でアリスがカケラの関係性を解説しだすのも...

 

説教の内容自体はまぁ人それぞれ感じ入るものが違うでしょうから掘り下げませんが、特には響かなかったです。アリス自殺でENDならあるいは...

 

成長理由が理解不能なのに勝手に更生して自分の元から飛び立たないでほしいです。

 

・良かった点

 

なんか不満点ばっかり書いちゃったので、良かったところも挙げておきます。

 

まず、一番は演出です。文句なしです。

 

次は、頑張れなくなった人間のお話があったことです。

もう一度頑張れるようになるまでの過程がもう少し丁寧で共感できるものであったらそれだけで満足できただけに残念です。

 

最後は、ベスピオ編のB級感あふれるやりとりです。作中では唯一の清涼剤でした。

 

おわり。