人を愛するだけではなく、『攻撃する』想像力があるという事を、私達は忘れてはならない
ー『 』
『ChronoBox -クロノボックス-』(2017-05-26)
・ ブランド: NO BRAND
・原画:長浜めぐみ
・シナリオ:桜庭丸男
・音楽:Team-OZ
・ジャンル:失った記憶を取り戻してはいけないADV
・プレイ時間目安:13~15時間
公式サイト
前半は、ネタバレ無しで、この作品のどこが魅力的だったかなどについて書いていきます。
本作は、ネタバレを知ってしまうと十全には楽しめなくなってしまう作品だと思うので、未プレイの方は極力踏まないようにしたほうが良いかもしれないです...
後半は、ネタバレ有りで、自分がこの作品のどこが好きだったかとプレイしていて気がついた点などを書いていきます。
あらすじ
―大海に浮かぶ小さな孤島【天使島】
そこに住まう若者達の中に、期招来那由太(きまねき なゆた)はいた
彼の通う【EDEN】に流れる、当たり前の日常
友人達と、当然のように遊び、当然のように笑う日常
そんな日々は、たった一つの黒い箱と、たった一人の黒い少女によって終止符を打たれるきっと、大丈夫
忘れたままの方がいい
思い出してはいけない過去EDENに集う天使のような仲間と、今日も日常を過ごす
少女が導く悪夢は、まだ終わらない―
屍ね――
目を背ける事の出来ない現実に、私たちは生きている。
決して覗いてはいけない記憶のブラックボックスが今開く――
狂った楽園へようこそ
この作品のどこが魅力的だったか
ChronoBox -クロノボックス- は面白い?
自分にとっては間違いなくYesだった。
グロ・リョナは苦手だったが、それを押してでもプレイする価値はあったし、クリアした後は本当に満足感があった。
一般的には伏線回収ゲーということになるだろうから、とりあえず上のあらすじやOPムービーを見て「良さそう!(*‘ω‘ *)」と思った人は、買ってもいいのではないだろうか?リョナ・グロ・残酷描写が結構あるので、そういうのが絶対に無理!という人は自己判断でお願いしたい。が、そういった部分も作品内容にきちんと組み込まれているので、少し苦手なくらいなら頑張ってプレイしてみてほしいという思いもある。
今年一番の作品である可能性やポテンシャルも感じるほどだったし(⚠2017/05/27現在)、同じように考えている人も多いのではないかと勝手に思っている。
こう言ってはなんだが、2017年新作エロゲは不作気味かな~という気がしていたので、そういう意味でもプレイできて良かった。
一番面白かった部分
早速この前半の趣旨を否定するようで恐縮だが、このゲームのどこが面白かったかをネタバレ無しで正確に説明するのことはとても難しい。というより、自分にとってはほぼ不可能である。
それは何故かと言うと、一番面白いと感じたのが「舞台・状況設定」と「その結末」であったからだ。
正に核心のど真ん中である以上、止むをえないだろう。
これについては、ネタバレ有りの後半でバシバシ語っていければなと思う。
とりあえずここでは
「きちんと伏線回収されるし、そこから見えてくる真相とその後の結末がよかった!」
ということだけが伝わっていればそれでいいです。
伏線が回収されるとは、特に序~中盤での1周目では意味の通らなかった文章が、オールクリアしてからだとほぼ全て意味が通じるようになっている、という意味である。また、そもそも1周目では伏線だと気付かなかったが2周目になって伏線だったことに気が付くということもかなり多くあり、かなり良かったと思う。
結末がよかったというのは、この物語の流れから考えられる結末としてこれ以上のものは無いだろう、と素直に思えた、くらいのことを意味している。
とはいえ、ほんの少しだけ前半でも触れてはいきたいので、エモバレ*1くらいは許容することにして書いていくことにしたい。
おすすめポイントは?
<設定やプロットがよく練られている>
序盤でばら撒かれた、意味の繋がりが薄かった伏線が、中盤以降どんどん回収され組み合わさっていき、最後までノンストップで駆け抜けることが出来たほど作品に惹きこまれた。
それでいて、迎える「結末」もかなり好みだったので、プレイし終わった瞬間は本当に気持ちが充実感で満たされた。
< 細部まで力を入れて作り込まれている>
注意深く見なければ気が付かないような背景の細かいところや、ビジュアルノベルの特性を活かした種々の演出など、作品の細かな部分もかなり気合が入っていた。
そういったことの積み重ねがじわじわと質量を持ち、驚きや衝撃という形でプレイヤーに襲いかかってきたことが特に印象的であったし、見事だったなぁと思う。
作品全体が丁寧に、ある種の明確な意図を持って作られていたということもあり、総体としての完成度が高かったという意味でオススメできる。
また、公式サイトや、本編には出てこない要素を多く持つ体験版、意匠を凝らしたパッケージなど、作品内容以外の部分にも力を入れていたのも好きだった。
<グロ・リョナ等の残酷描写にもきちんと意味がある>
端的にいうと、作中の残酷描写も作品内容にきちんと組み込まれており、この物語を描く上で必要不可欠なものであった、ということである。
これは、"グロ・リョナ物だからヒロインが(特に理由もなく)ひどいことされます"、というのとは明確に異なっている。
"18禁でしか出来ない"、というわけでは必ずしも無いかもしれないが、"18禁だからこそ出来た"部分があるのは疑いのないことであり、そういう意味でもよかった。
<(個人的には)好きなえっちシーンがあった>
卑語無修正であり、絵も美麗でそこそこの人には受ける気がします。下品な感じが個人的には好きなので、そういう趣向が好みなら結構アリかな~と。
逆に、グロ・リョナ系のしーんは苦手なので全然無理でした。
割りと濃い玉舐めがあったので、それが一番のお気に入りです(●´ω`●)
「ちんちんんんっ♪ちんちんんんんっ♪おひっ!?
おうっ、おおっ♪ちんちんきもちーっ、ちんこーっ♪
勃起ちんこーっ♪おほおっ、おっほほっほおぅっ♪」
♡があれば更に高評価でした。
ブリブリ勃起のおちんちん♡
<霍ちゃんが可愛い♡>
プレイしてみれば彼女の可愛さが分かります。
暗く厳しい展開が続く中、このおバカ系娘であるところの霍ちゃんが登場すると、まさに空気が一変するのです。この作品に轟き響く、まさに一服の清涼剤でした。
CVが唯香さんだったのも、ばっちしでしたね。
にわかわにわかわ~~~♡
(自分にとっては)ここが少し微妙だった
<作中の情報からすべての謎が解るわけではない>
俗に言う考察するのが好きな方々によって、この部分にはある程度説明が付くのかもしれない。
が、伏線が全て回収されるわけではなく、作中の情報からは絶対に判別できないだろうという部分もあるので、気になる人はモヤモヤが残ったままになるかもしれない。
<エロ・グロ・リョナが本当に無理>
本当に無理であるのなら、悪いことは言わないのでプレイするのは止めたほうが良いです。恐らく、刺激が強すぎます。君子危うきに近寄らず。
<制作陣のSNSでの一部の言動がちょっと...>
『ChronoBox -クロノボックス-』は確かに良い作品であったと思うが、その作品の製作陣も良かったと言われると、必ずしも肯定はできないように思う。
作品それ自体と製作者は、違う。悲しいことではあるが世の常である。
発売前に自らでひたすらハードルを上げたり等していたことについて、どうかなぁ...と思う部分も少しあった。確かに良い作品が出来たという自信の現れだったとは思うが...
製作者のことはあまりに気にしないようにするのが一番なのだろう。
今まで見ていなかった人は、見ないようにするのが良いのかもしれません。
結局、どうなの?
『ChronoBox -クロノボックス-』は、興味を持った人にはほぼ確実にオススメできる作品だと思う。
公式サイトやあらすじやOPムービー等を見て気になった人は、買ってプレイしても損はしないのではないだろうか。
2017年上半期エロゲーの中では、客観的に見ても上位に入るはずである。
DL版もあるが、一番オススメするのは初回パッケージ版だ。
コンプ後は特徴的な四角のパッケージを手元に置いておきたくなる*2し、初回パケ版のみ少し追加要素もあるからだ。
内容やパッケージに少しでもそそられる人は、是非パッケージ版を購入してプレイしてみてください。興味を持った人なら、損することはないと思います!
続きからは、ネタバレ有りで、この作品のどこが好きだったのかと、プレイしていて気がついた点などを書いていく。
一番好きだった点
ネタバレ無しの方でも少し触れたが、この作品で好きだったのは、「END2の結末が、この物語の流れとしてはこれ以上無いと素直に思えるほど良いものであった」ということになる。
設定が自分好みだったということも非常に大きい。
どこかぶっ壊れてしまった人間が、強い後悔と自罰・自責の念から自分と極狭い範囲だけを含んだ世界*3に辛い記憶を忘れて閉じこもり、そこで生き続ける。
しかも今回は、樺音を愛するだけではなく、いや、愛していたからこそ、那由太はそこで自分を『攻撃する』ことを選んでいたのである。
それだけでも十ニ分に狂おしいほど好きなのであるが、これだけだと何処かで見た話であり*4、ずっと尾を引くような刺さり方はしなかったかもしれない。
けれども、本作にはEND2があった。求めていたエンディングの実現があった。
現実世界に戻り、自分の意志で自分の人生に幕を引けるほどの強い想い。
この主人公であるならば、樺音へのこの気持ちとこの自責の念ならば、このような選択と結末に至るのが一番自然なのだろうと素直に思えたということが、私にとって「ChronoBox」が好きな作品となった一番の理由である。
呪縛から解き放たれたからこそ、主人公は恐らくあの神聖な場所で、自分の意志により死という浄化を選択するしかなかったのだろう。
あの時から止まってしまった時間を主人公が再び動かす為には、やはりこの結末こそがふさわしい。
色々と気がついたところ
・リアルワールドでの描写は、目パチ口パチが付いている。
・リアルワールドの那由太視点では右端が黒くなっている(右目が見えないので)+リアルワールドでの主人公が写っているCGは全部右半身が隠れている。
・SEI→135(逆さまに読む) 主人公が生き残った「135便墜落事故」の意。
・島の中央下が抉れてるのはその飛行機事故が原因だと考えられる。
・寮の部屋など至る所の教室にスピーカーが描かれている。
・リアルワールドのEdEnの校門には鉄条網が付いている。(ログワールドのEDENには無い)
・つつじ子の十字架は屍の磔の様子の暗喩っぽい。
・つつじ子√であざみ子が落下死しているが、これはリアルワールドでの出来事と対応しており好きだった。
・最序盤の一つ目のクロノボックス。みんなでしたお食事会の食べ残し(樺音の頭部のこと)の話がえげつない。
・スプーンと体育館の鎖。
・直接的すぎるが、絵本や「―――あなたを想うこの気持ち、真実だって誓うよ」という手紙。
・那由太に男性器が無かったり、右手が無いことを知っていると意味が通じる樺音の発言。
・気が付いた細かい部分はまだまだあり、量が多いため一々列挙はしないが、それも細部までこだわりを感じた。
まだ分かっていないこと
・意味ありげな描写が目立って多かったが、黒蝶沼は結局どういう存在?
・晦やメガ、にわか等の事件に関係無いギフト5人と主人公とのリアルワールドでの関係は?
・登場人物の名前の法則性
などなど
また、ここで一つ自分の考えを記しておきたい。
ログワールドは記憶を基にした主観の世界であった。そこで何が起ころうとも「夢に似ているような世界だから」という理由によって、意味のよく分からない出来事もある程度正当化されてしまうと思っている。
なので、ログワールドでの描写も全て用いて、この世界や登場人物の正確な設定などを考えることに、私は妥当性や意味をあまり感じていない。こういったことに一切言及していないのはこのためである。
最後に
物語の設定と結末が自分好みだっただけでなく、背景、CGや序・中盤にばら撒かれた伏線など、力を入れて丁寧に作ったのだろうという事が、ひしひしと伝わってくる良作でした。
プレイして本当に満足しました。良い作品でした、ありがとうございます。
おわり。