『滅び朽ちる世界に追憶の花束を(非18禁)(郷愁花屋(同人)) (2010-08-07)』コンプ
プレイ時間は35時間ほど。隠しサイト閲覧済み。
ネタバレ有りなので踏みたくない人は画像の下からは回避で。
というか、Twitterにブログ記事を投稿した際に序文あたりが表示されるやつでネタバレするのを回避するためになんか書かないといけないんですけど、これ何文字書けばいいんですかね?もういいですか?
遺し、受け継ぎ、繋いでいく。一瞬の輝きと永遠。
前向きで積極的な人間賛歌がそこにはありました。
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<あらすじ>
全てを捨てる、覚悟を決めた。
地位も名誉も財産も………そして、大切な家族も。
全てを置き去りにして、この時代から去ることを決めた。
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滅び朽ちる世界に追憶の花束を贈りましょう。
これは、いろいろな形に栄えたそれぞれの時代と、そこで生きる人々のお話。
そして自らの望みを叶えるために時空を超える旅に出た、愚かな男の物語。
長い歴史の流れから見ればほんの一瞬の生でしかない彼女たちは、それぞれの時代を果たしてどのように生きたのでしょう。
それぞれの時代に何を思い、何を成そうとしたのでしょう。
花のように、人はたった一度きりの美しい花を、それぞれの生の中で咲かせるのだと思うのです。
今回はそんな、生命力に満ちた物語をお話しましょう。
ようこそ、郷愁花屋へ。
(公式サイトより)
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8つの花とそれを冠する8つの物語。
どれも単体でお話として成立していてそれだけで結構面白いのですが、それらが徐々に繋がりを見せはじめてゆき...
という感じのお話です。
ボイスは無いのですが、作品全体の雰囲気にぴったりと合う緩やかな音楽や優しいタッチの絵が好きでした。
プレイしながら「あーだろうか、こーだろうか」と人物間や物語間の関係に考えを巡らせるのも楽しかったですね。
元の設定がきちんと考えられていることが伝わってきたので、読んでいて安心感がありました(*´ω`*)
さて、8つの物語それぞれの感想でも書いていきたいと思います。
プレイ順
circular→dear→innocent→melancholy→vivid→lost→abandoned→forever
好きな順
forever>vivid>abandoned>melancholy>dear>innocent>>lost>circular
紅&沙乎華が一番好きでした。
<「circular」:~巡り来る運命~>
冠する花は「蓮」、テーマは「救済」
救いを願った少年のお話。
―――清掃の仕事をしながら生計を立てている少年大悟《だいご》の住む街の美術館に展示されることになった、奇跡を呼ぶ力を持つという黄金の冠。
大悟はしかし、ひょんなことから原価十何億ともいわれるその冠を、盗んでしまいます。
彼が追われて逃げ延びた先は、どことも分からない林の中。
彼はそこで、マゼンタと名乗る、不思議な少女に出会います。
池の上に突如として現れた彼女は、幽霊なのか池の女神なのか。
淀んだ現世は泥の沼のように、慈悲深い彼女は蓮の花のように、罪にまみれた少年に彼女が教えるのは…。
初めにやったからなのか、宗教とか唐突に出てくるので世界に追いつけないまま終わってしまって、ぶっちゃけあんまり面白くなかったです。
なので話したいことも無いです。
メモでも貼っときます。
・remembrance mode「裏切り」マゼンタを裏切った姉妹=ユタ、ユラ
これは背教者ユダからきているのか。
(ユタが裏切った本人であり、ラは線2つでダになる。)
(がしかし、これだと"ユニ"の方がそれらしい)
・remembrance modeで年齢と合ってない。16年以上前だから5歳とかで麻薬取引って...←これは隠しサイトで作者も突っ込んでいたのでOK
<「dear」:~親愛なる世界~>
冠する花は「蒲公英」、テーマは「追憶」
親愛なる彼へ手紙を出した彼女のお話。
―――30世紀末。世界は、終わりを迎えるらしい。
そんな終末思想が支配する時代に生まれた、未黄《ミオウ》。
次第に大気の温度を下げていく地球で生きられなくなった人々は、コールドスリープすることで未来に希望を託すことにしました。
人類の長い冬の時代が訪れたのです。
子供を試験管で生み出すような時代にうんざりしていた彼女は、世界の終わりを望みます。
しかしここには、たくさんの愛の記憶があったのです…。
風船をたんぽぽの綿毛に見立て、自分の生きた記憶を飛ばす。
最愛なる世界に記録を遺し、伝える。
あのシーンが印象に残っています。
伝えるための記録というのが意味を成すためには、時間の不可逆性とそれを受け取る側の存在可能性が必要だと思います。まぁ取り留めもなくそんなことを考えていました。
ーーー彼女の意志の、その受け取り手は……
<「innocent」:~純真な悪~>
冠する花は「百合」、テーマは「正義」
正義の味方になりたかった子供のお話。
―――人類が宇宙へと足を伸ばし月に設立した裁判所、通称“アテネの学堂”。
月という何にも属さないその土地で、平等の名のもとに世界中のあらゆる討論がそこでは行われています。
そして、いくら時代を経ても答えの出ない討論がそこにはあります。
純真な悪と呼ばれるその少女闇《ヤミ》と、正義と悪についての討論を交わすために、今日も挑戦者が現れるのです。
子供の頃、正義の味方になろうと誓った百合《ゆり》と玄兎《げんと》。
異なる形でそれぞれの正義を貫く二人は…。
正義とは何か。悪とは何か。
嘘を付くと即座にバレてしまう、そんな装置がある月でのお話。
”正義の反対は別の正義”なんてよく言いますけど、結局のところを己を貫くしかないんですよ。Beleve your Justiceですね。
この物語も内容自体は特に感じ入るところがなかったので、何も書くことはないんですが、マゼンタ様の過去が垣間見えるtipsがあってそういう意味では面白かったです。
~名前とかについて~
・1章 審議記録員No.46187・・・読みが"白い花"
・玄兎
玄=クロとも読める /百合の白との対比
げんと・・・"月にいるうさぎ"の意
月は百合(白)と玄兎(黒)に割り当てられた惑星
「玄の黒」と「月のうさぎ」の2つの意味を絡めている名付けが上手いと感じました。
<「melancholy」:~憂鬱な浮世~>
冠する花は「紫陽花」、テーマは「決められた未来への憂鬱」
この世の憂鬱を嘆いた少女のお話。
―――梅雨だというのに雨が降らないことに憂鬱を感じる、紫亜《しあ》。
そんな彼女の元にある日、綾小路清四郎(せいしろう)という少年が尋ねにやってきます。
彼は紫亜の祖母である蒼子(そうこ)の旧友、清二郎(せいじろう)の孫。
その清二郎が亡くなったことを、清四郎は蒼子に知らせに来たのでした。
二人は“梅雨の日の憂鬱に負けない会”を創設した仲だという話ですが…。
清二郎の遺書の謎を解く鍵は、蒼子の思い出の中。
蒼子と紫亜、現代と未来の女子高生、二人の感じる憂鬱とは…。
思わず胸キュンしちゃうような、甘酸っぱくてどこか懐かしさを感じる恋物語。
物語としては一番独立しているお話なのですが、読んでいて純粋によかったな~と。
梅雨の時期から晴れ上がるときの爽快感と、青空に感じる未来への希望。
過去の世代からその先の世代へのバトンタッチという構成が映えていて美しかったです。
・紫亜は逆読み=あじ→あし→しあ→紫亜=薄紫 は紫陽花の色
<「vivid」:~鮮やかな紅~>
冠する花は「彼岸花」、テーマは「人間らしく生きる」
人間らしく生きたかった少女のお話
―――超能力の素質がある者として抜擢され、その能力を覚醒させるために殺し合いをしなければならなくなった紅《くれない》と沙乎華《さやか》。
支給されたナイフを使って、一週間以内に二人のうちどちらかは死ななければなりません。
赤の他人だった二人は、しかし互いに似通った部分を見つけます。
人間らしさを欠いている紅に、沙乎華は、やっと自分と分かり合える人と巡り会えた気がしたのです。
あらゆるものと繋がりを感じられない彼女らにとって、自身をこの世に繋ぎ止めるのは“生きている”ことを証明する鮮やかな赤色だけ。
まるで彼岸から此岸を眺めているかのように生きてきた彼女が、そのナイフで切り裂くのは…。
厨二病的な開幕からよもやこのようなお話になるなんて...
いい意味で期待を裏切られました。
紅&沙乎華のコンビが最高でしたね。いや、別に”百合”が好きとかそういうわけではないんですけど、二人の関係性がとても自分好みでした。
紅だけでもめちゃくちゃ好みで、作中で一番好きなキャラですね。かなり感情移入して読んでました。
foreverに次いで大事なキャラクター群の登場する物語だったと思います。
<「lost」:~失われた記憶~>
冠する花は「忘れな草」、テーマは「滅び」
臆病者の男の子のお話。
―――“ユグドラシル”と呼ばれる空中の学園都市の生徒、臆《オク》。
そこでは自然の真理に迫るための数々の研究が行われていて、臆自身も自分の研究に励んでいました。
当り前に続いていく日常…けれど彼はそんな日常に少しずつ疑問を感じ始めます。
自分は何かとても重大なことを忘れていると。
あまりにも辛い出来事を、人は自分を守るために忘れてしまいます。
忘れないでという思いが込められた小さな青い花を眺めながら、彼は…。
臆、幾、翠という名前は自身のクローン番号である09,19,41が由来であり、当時クローンが個性を求め数字ではなく名前を付けて呼ぶことを好んだ、という設定がこの時代の世界観をよく表しているようで好きでした。
物語自体は一番微妙だったのですが、あるパスワードを入れることでギリギリ耐えた気がしないでもないです。これだけ短いとループものは厳しいですね。
<「abandoned」:~見捨てられた街~>
冠する花は「向日葵」、テーマは「生きるということ」
娘を失った父親のお話。
―――“ジャンクタウン”と呼ばれる郊外のスラム街に、貴重な金属を探すべくやってきた陽炎《かげろう》。
そこは社会的に見捨てられた者が集う街であり、治安がとても悪いことで有名でした。
そんな街で彼は、ブルーという少女に出会います。
殺伐としたその街の中でも明るい笑顔を見せる彼女に、彼は亡き娘の面影を重ねます。
死んだはずの娘にどことなく似ている、少女。
ガラクタだらけのその街で、灼熱の太陽が照りつけるその場所で、落日に向かい、首を傾ける太陽の花…。
いつまでも生きているということは死んでいることと変わらない。例えクローンだったとしても、私は他の何者でもなく私である。
私が私として生きた証に、自らを壊す。
終盤のシーンで、娘のクローンであることを知られたブルーが陽炎のことを「オジサン」と呼んだセリフが印象に残っています。
「お父さん」ではなく「オジサン」。ブルーがまさしくブルーとして生を全うした証に他ならないでしょう。
普通に泣きました。
<「forever」:~永遠の愛~>
冠する花は「薔薇」、テーマは「永遠と一瞬」
永遠の愛を誓った恋人のお話。
―――醜かった自分の顔を整形し、美しい自分を手に入れた緋依《ひより》。
彼女は大学の卒業研究で、その美しさを永遠のものにするため不老不死の研究を始めます…。
かつての自分が人に踏みつけられる雑草のような存在なら、今の自分は誰もが目を留める薔薇の花のような存在。
けれど今の自分は人の力で造り変えた不自然な存在なのではないかと、次第に疑問に思い始めます。
自然には決して存在しない青い薔薇、青い薔薇の研究をしている恋人。
この幸せがずっと続いてほしいと願う彼女が永遠と一瞬の意味を知る…。
一番泣いたお話です。
ずるいです。こんなの分かってても泣きます。ガチ泣きしました。
「・・・・・・大好きな人と、・・・永遠に一緒にいたい・・・・・・」
一番卑怯なremembrance modeでした。
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~考察~
<マゼンタの本名>
「サヤカ」
(根拠)
・タイムマシンのパスワード画面で"sayaka"と打つと、「サヤカは二人います。」とメッセージが出る。作中にはvividの沙乎華しかサヤカは存在せず、他に明らかにされていないサヤカがいるはず。
・マゼンタは紅と緋色の子であり、二人を繋ぐのはvividの沙乎華だから。紅なら緋色との子供に沙乎華って名付けてもおかしくない。子は鎹とは良く言ったもんです。
公式の解答:永原沙乎華
あってました。マゼンタの本名に気が付いたときの衝撃がやばかったです。
<vividとinnocentの間に起こった出来事>
マゼンタは紅より強い予知能力を持っており、何らかの理由で母である紅を殺害。
それに付随して父である緋色も殺害。理由は不明。
どうやら緋色はマゼンタをかばった模様。
公式の解答
紅はマゼンタに殺害される。←合ってた。
「事前に未来の話は聞いてたし、沙乎華(マゼンタ)に俺(緋色)も殺されそうになったから、先に俺(緋色)が(自)殺して罪を背負わせないようにみたいな」←間違ってた
他にも色々関係性とか考えてたんですけど、公式に全て答えがあったので終了しました。
・circularに出てきたマゼンタのおじさんはabandonedの日輪おじさん
・foreverの富士教授の結婚相手はmelancholyの川野さん
とか面白かったです。
凄いですね。ちゃんと考えられた上で作られていてよかったです。
しかしまだ一つだけ謎が残っています。
FDである『滅び朽ちる世界に追憶の花束を ~present for you~』において、川野さんを見て紅が含みある視線を投げかけた理由です。
何か分かる方は是非ともコメントをお願い致しますm(_ _)m