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一二三四五六七

その時に感じたことを書きたいです。

『SeaBed』感想

例えば貴方が居なくなっても、私はずっと貴方のことを考えていて、貴方もずっとそこにいるのよ 

ー水野 佐知子/『SeaBed』

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 『SeaBed』(2016-01-25)

ブランド:paleontology(同人)

原画:hide38

シナリオ:Akira,hide38

 

公式サイト:

middle-tail.sakura.ne.jp

 

 DL版販売サイト:

www.dlsite.com

 

 

[目次]

重大なネタバレは「3節.舞台設定・登場人物・Tips」以降にしかないので、『SeaBed』が気になるけど情報がほしいという方は「2節.この作品のどこが魅力的だったか」まで読んでいただけると幸いです。

 

物語

 

リビングで亡霊を見た。
それを見るのは慣れたもので、私は気にせずに夕食を作って食べる。
亡霊は私の作った卵焼きを食べて美味しいと言った。
私は彼女の話を聞きながら、彼女と暮らした日々のことを考えた。

彼女は学生時代の私に「私達が一緒にいるために必要なものはなにか?」、と尋ねた。

 

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               誰にも頼らずに稼ぐための小さな職場。

 

 

 

 

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なんでも自由にできる静かなマンション。

 

 

と、私は答えた。

 

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80年代後半。
経済絶頂の最中、ふたりで始めたデザイン事務所の業績は上向いていた。
学生時代にふたりで話しをしていた南の島、中世の街、西海岸。
行きたい場所へ行って、見たいものを見て回った。

 

 

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       私は広いリビングでどうしてこうなったかを考えてみた。
       ふたりが殆ど無敵だった時代は過ぎていた。

       

       私はあの頃のようになんでも出来る気はしなくなっている。
       この世界はとても複雑になって、ことをなすのは難しくなった。
       以前にふたりが使っていたルールブックは無効になり

       築いた城は崩れ去っていた。

 

「あなたと一緒にいるために必要なものはなに?」、と亡霊に聞いてみる。

 

       今までにない新しい場所を準備する必要がある。

       新しい場所は誰にも壊せない。誰の手も届かないような場所にしよう。

       そして私は誰にも気づかれないように静かにことを運ぶ。
       深く、深く、誰にも見つからないような場所で。

 

 

この作品のどこが魅力的だったか

『SeaBed』は面白い?

 結論から言うと、この作品はとても好きだったし、自分にとっては面白かった。

合う人には間違いなく合う感じがするので、上の物語紹介にピンときたり、少しでも興味を持ったのなら是非プレイしてみてほしい。650円と12-13時間ばかりを費やして得られるものとしては破格のものがあるかと思う。とりあえず体験版もあるので、そこでテキストが合うかどうかだけでも確かめてみてほしい。

ともかく、この作品は自分でプレイしてみることが大事だと思う。なぜなら、頭の中で色々と組み立てたり、気が付いたりする面白さも確かにあるからだ。そして、そのための断片はあちこちに散りばめられている。2周目をプレイして初めて発見する事柄も多かった。

しかし、そのような面白さはこの作品の一端に過ぎないだろう。

 

説明しにくい面白さ

 多くの人が感想でも書きあぐねているように、この作品のどこが面白かったのかを正確に説明することは難しい。書こうとするとどうしても、作品全体の雰囲気や空気感が良いだとか、事実を淡々と述べていく描写が独特だとかになってしまう。その内容自体は正しいことではあるのだが、やはり如何ともしがたい。

そこでこの記事では、もう一歩立ち入って、一番魅力的だと思った部分をなんとか説明してみたいと思う。

 

積み重ねた年月の重さ

 まず、熱く滾る戦闘シーンがあるとか、最後に怒涛の伏線回収があるとか、ヒロインが可愛くて頭を空っぽにしても楽しめるとか、そういった分かりやすい面白さはこの作品にはない。「百合ミステリー」と銘打たれてはいるが、"ミステリー"要素は「なにか判然としない謎があって、なんとなくは判明する」くらいの意味である。普通"ミステリー"と言われて想像するものとは異なっているので、少し注意しておく必要がある。

 となると、一番の面白さといえば、やはり残った"百合"*1の部分になるのだろう。

佐知子と貴呼が一緒に積み重ねてきた23年間という重みをプレイヤーがダイレクトに受け止めざるを得ないこと、それがこの作品の一番の魅力であり、面白く感じた要因であると私は考える。

 

降りかかる出来事についてだけ考えてはいない

 『SeaBed』は、日常生活やその中でふと考えたり気が付いたりすることをかなりの文量で淡々と描写し、それにより日常を積み重ねている。そこに起伏はあまりなく、それ故「単調」と表されることも多い。

これは主人公である佐知子の客観的な性格に依るところが非常に大きい。意図的に単調にしているわけではない...とは思う。とはいえ、そのような落ち着いたタッチに膨大な文量を割き、取り留めもない日常を描写することで達成されている重大なことがある。

 それは、佐知子たちがリアルなキャラクターとして地に足のついた存在になっているということだ。

少し極端なことを言えば、物語の中では往々にして、作中で起こった出来事に対しての反応や感情だけしか描写されないし、基本的に物事は起こるべくして起こっている。物語を動かすために出来事が起こるのは当然のことであり、登場人物はいつも自身に降りかかっている困難について考え続けている*2

しかしながら、実際の人間は、フィクションの登場人物がするように、常に意味のある出来事が降りかかったり、そのことについてだけ考えているわけではない。むしろ、意味のあるような出来事は日常生活では稀だろう。昨日とあまり変わらない今日を過ごす中で、ふと外の景色を見て思うことであったり、ふとした折に思いついた物事について考えたりするのである。それが良くも悪くも現実に近いということなのだと思う。

 先程も述べたように、『SeaBed』は後者の描写にかなりのウェイトを置いている。それも、事実を淡々と連ねていくという落ち着いたものによってだ。それにより、この作品独特の雰囲気と、普通の物語の登場人物とは質の異なる"リアルさ"が醸し出されている。また、ぼやかしたような加工をした写真を背景として使用していたり、種々の細かい生活音までSEとして表現していることで、視覚的・聴覚的にも彼女たちの生活が鮮明に想起された。

そういった日常描写の積み重ねこそが、佐知子たちが地に足のついた存在であると我々に強く実感させている。しかも、その描写は佐知子や貴呼が楽しかった思い出を振り返るという形をとり二人が5歳から28歳に至るまでの23年間にも及ぶ。プレイヤーは、佐知子と貴呼が共に過ごしてきた年月の長さや重さに思いを馳せ、互いがいかに大切な存在だったかを否が応でも実感せざるを得ない。このようにして、佐知子と貴呼の関係性の深さがダイレクトに伝わってくるのである。

そして、「あぁ、佐知子は貴呼の為ならば"あんなこと"もきっと出来てしまうんだろうなぁ。」と素直に思わせる。思ってしまう。それこそが、この作品の一番の魅力にほかならないのだろう。

 

その他魅力的だったところ

・最初の方でも言ったように、本作は「百合ミステリー」ではあるが、普通"ミステリー"と聞いて期待できるような面白さがあるわけではない。とはいえ、"ミステリー要素"がこの作品に必要不可欠なものであったことは強調しておきたい。なぜなら、それが物語にきちんと組み込まれ、先述の佐知子と貴呼の関係性の深さを更に引き立てているからだ。そして、その要素が提示する世界観もとても魅力的であり、非常に良かった。

 

・作品全体を通じて80-90年代の空気感が想起され*3、そこからどことなく漂うノスタルジックな雰囲気も良かった。現代では使わないような古いものも登場しており、設定した年代の雰囲気をしっかりと伝えているように思う。

 

・90枚以上ものスチルが要所要所でしっかりと使われており、大切な場面を一層引き立てたり、間延びしがちな全体をぎゅっと引き締めたりしていた。丁寧に選定されたフリーのBGMや背景も全体の雰囲気にとてもよく合っており、終始作品世界に誘われるようだった。ビジュアルノベルとして非常に丁寧に作られていた印象で、完成度も高かったように思う。この世界にずっと浸っていたいと素直に思わされるような出来だった。

 

・どの登場人物も魅力的。佐知子と貴呼が一番好き。

・ 旅行をする。海外の色々なところに楽しそうに旅行をする。すき。

 

 

以下、致命的なネタバレがあるため、プレイ予定がある人は絶対に見ないで下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

舞台設定・登場人物・Tips

 

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 あちら側(療養所)

 恋人である貴呼が今際の際に「(死んだらどうなるか)知らない人(神)に決められるより、佐知子に決めて欲しい」と頼み、それを聞き入れた佐知子が貴呼を想い創った世界。

貴呼の世界がどれほどのものかは分からないが、この出来はどうだろうか。

ここはどこまでも拡大可能な世界、そしてあらゆる価値観を公平に内包出来る世界だった。

ー楢崎 響/『SeaBed』

楢崎は佐知子が幼少期に作った存在(イマジナリーフレンドのようなもの)なので、あちら側に行くことが出来る。また、これは想像だが、楢崎診療所を応用・発展させたものがあちら側(療養所)なのだと推測される。このように考えても別段不都合はないと思うし、色々と上手く説明出来る部分がある気がする。多分。

 

あちら側とは、ざっくり言えば、死に際の願いを聞き入れた佐知子が貴呼のために創った、二人しか居ない、内的世界・精神世界である。

 

成人女性の佐知子→繭子

少女としての佐知子→早苗

幼少期の佐知子→梢(B)

梢(B):髪飾りをプレゼントされて以降は、それを付けているかどうかで現実世界の梢(A)と見分けることが出来る。 

あちら側での貴呼と彼女らのやりとりは現実に起こったものではないが、23年の間で描かれていない場面において、似たような出来事があったり、似たような関係にあったかもしれないと想像させるものになっている。あちら側の世界をこのように設定したことで、二人が積み重ねてきた23年間の関係性に更に深みが出ており作品にきちんと組み込まれているところもよかった。

 

また、そういう意味では療養所の貴呼も創られた存在ではあるが、「佐知子の記憶の中の貴呼」と「貴呼本人」が合わさったものであり、なおかつ後者寄りなのだと思う。この部分については具体的な理由はないが、プレイした人なら素直に納得できる...気がする。

そのほうがロマンチックだし、文脈に沿うし、説明のつきやすいこともあるしで、別にいいかなぁと。あちら側は"貴呼が願って""佐知子が叶えた"ものなので勝手にそう信じている。

 

 

楢崎診療所

 これも佐知子の内的世界である。幼少期からの佐知子の記憶が保管され、楢崎が管理・記録しており、何か不具合があったときは楢崎が医者としての役割を果たし佐知子の診療を行う場所である。 

「TipsⅠ.楢崎診療所-008号室*4は、恐らく佐知子が8歳の時の記憶を保管していた部屋である。どの号室のものでも、"ここにあるものはなくなったり出てきたりする。消える瞬間は見たことがない。気がついたら無くなっている(楢崎)"らしく、部屋の中にあるものが記憶であることを示唆している。

TipsⅠ.楢崎診療所-208号室」は、28歳で貴呼が病死した直後に、そのショックから佐知子が診療所を訪れた当時の描写であると考えられる。

 「TipsⅠ.-寝室」:佐知子は、貴呼の死ぬ間際の願いを思い出す。

→「浴室」:佐知子は水に濡れ、氷のように冷たくなっている。これは、「深く、深く、誰にも見つからないような場所*5で、今までにない新しい場所=あちら側、を準備している」からだと思われる。その際、貴呼に関する記憶の一部を(貴呼の創造に必要なのか)持ち出しているため、日記から一部分が消え去っている。

「宿直室」:佐知子が楢崎診療所から消え去り、日記は白紙となっている。恐らく、佐知子が日記の中の記憶をすべて「あちら側」に持ち出し、その結果佐知子が記憶喪失となったことを意味するのだろう。このタイミングで佐知子は、誰にも気づかれないように静かに、着々とあちら側を作っている。(しかし、完成はしていないと思う。療養所は七重の旅館に似ているし、梢(B)とかは後になってからじゃないと出てこない。「序章-哲学者」においても、"今からキミが挑戦しようとしていること(あちら側の創造)に凄く興味がある"とも言われている。)

 

 

楢崎 響

 楢崎の正体は、佐知子が幼少期に作った存在(イマジナリーフレンドのようなもの)である。貴呼とお医者さんごっこ遊びをする時に使っていた人形が、楢崎の原型なのだろう。

 

 「こちら側」での楢崎視点の話は、基本的に佐知子の身体で楢崎が行動している、と解釈すると辻褄の合う記述が多い。

佐知子視点ではあまり図書館に行っていないのに七重から"図書館でよく見る"と言われたり、楢崎視点の時に梢(A)に持ってきてもらうよう頼んだ本を梢(A)が佐知子の部屋に持ってきたり、療養所での一日の記憶がまるまる無かったり(楢崎とチェスをした辺り)などである。

恐らく、二人とも意識が有るときと、片方の意識しか無く記憶が飛んでいる時とがあるのだろう。この辺りのことは、作中に出てきた半球睡眠の話に対応しているような気もする。第六章でリリィさんに”半分”とも言われていたし、リリィさんと恐らく梢(A)もこのことに気がついていた節がある。

また「序章-定期検診」においても、休養のため旅館に行く旨を楢崎が代わりに七重へ電話していたと考えられる。佐知子は七重に連絡したことを覚えておらず、七重の連絡先は旅行鞄に入れっぱなしで放置されていたので、そうなると記憶を管理してる楢崎以外連絡先が分からないことが理由になる。まだ佐知子が旅館に行っていない段階での出来事なので、そういう意味でも面白いと思った。

他にも色々と佐知子が自分の行動を忘れているところがあるが、これも楢崎が代わりに身体を操作していた時ではないかと思う。佐知子が幼少期の貴呼と共に洞窟*6へ迷い込んだ時に、”ここにずっと居たかったらそうできる。意識は戻らなくてもいつも通りのことができる。後のことは上手くやれる。"と楢崎から言われるが、これも楢崎が佐知子の身体を代わりに動かすのだとすれば、すんなりと納得できるだろう。

 

 「あちら側」においての楢崎は、佐知子の日記を貴呼に届けたり、物忘れについての話を貴呼にしたり、鍵を貴呼に渡したりと積極的に行動していたが、それは貴呼に記憶を持たせるため、つまり、佐知子のバラバラになった貴呼の思い出をひとつにまとめるためだった。(「終章:四つ葉のクローバー」より)

楢崎はそれが佐知子の治療のために必要なことだと考え、その役割を果たすために行動していたのだろう。

 

 

 坂 七重

 七重の正体は、娘が死んでしまったことを受け入れられず、自分のことをその死んだ娘だと思い込んでいる母親(死んだ娘の母)である。なので、作中に出てくる七重の本当の名前は美紀になる。

以降、作中に出てくる七重、つまり美紀のことを「七重A」とし、死んだ娘の方を「七重B」とする。

あまりはっきりとは書かれていないが、「TipsⅡ.二度目の旅」「第四章:繋がる合わさる-小母さんの話」や、特に「第6章:遠くに向かう電車-忠告」が根拠になる。あと、リリィさんが"(七重Aの母の代だとすると)妙に若く見える"と描写されているのもある。

 

この事とリリィ視点の話であることを踏まえて「TipsⅡ.二度目の旅」を読むと、その文意が通じるのではないかと思う。

以前そこにいた友人はもういない。とは言っても彼女は死んだわけではない。

ただ、あるとき私との思い出の記憶を無くしてしまったのだ。それもおそらく意図的に。今でも私にはその理由が理解できないままだ。

私は小さい頃から彼女のことを知っていた。確かに彼女には少し変わったところがあったが、私の知る限り彼女の性格ではどのようにしてもそんな事になるとは思えなかった。

 

-明井 百合香(リリィ)/「TipsⅡ.二度目の旅-二度目の旅の果てに」

 

ついでと言っては何だが、「TipsⅡ.二度目の旅-ランドスケープイマージョン」についても少し触れておきたい。ランドスケープ(landscape)とは土地とその風景、イマージョン(immersion)とは浸すことを意味する。なので、リリィが今はもう居なくなってしまった美紀と一緒に行った"場所"を巡るなかで、美紀に思いを馳せ"浸っている"ような感じを指しているのではないかなと思う。上手く説明できないので、ふんわりとなんとなくでも伝わっていればそれでいいです。

 

 

 正直な所、七重Aが実は美紀であることは非常にわかりづらくなっている。

これは単に描写が曖昧ではっきりと書かれていないこともあるが、まだプレイヤーに情報が殆ど無い段階である「第二章:丘の上の洋館-古い写真」でのミスリードも大きいように思う。

ここでは、本当は美紀(七重A)が娘(七重B)とリリィと映っているモノクロ写真が出てくる。

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しかし、自分が七重Bだと思い込んでいる七重Aは、写真の赤子を指して自分だと佐知子に言う。しかも写真がモノクロであるため、恰もこれが古いものであると錯覚し、それが正しいと自然に認識してしまう。(というか、第二章の段階では疑う余地がない。ミスリードにしてもやりすぎなのではないかと思う。)その結果、プレイヤーは一世代ズレて認識してしまうのである。

モノクロ写真であることのカラクリは、作中でそれとなく明かされる。

「第6章:遠くに向かう電者-濁った水」において、井戸の前で梢(A)と佐知子が会話するシーンがある。その時に梢(A)が持っている6年前の井戸の写真がモノクロである。つまり、写真がモノクロだからといって、必ずしも昔に撮られたことを意味しない。そして6年前という時期は、美紀(七重A)が娘(七重B)を失った頃と一致する。また、佐知子が井戸へ向かうシーンの少し前「第六章-朝食と好物」に、"それから、小さい頃の七重の写真と井戸の写真を順番にみていく。何枚目かの幼い七重の写真を見ているときに、何かが頭に引っかかった。"という描写があるのも、多分そういうことなのだろう。

 

受け入れないという選択肢

 では、なぜ七重をこのような設定にしたのだろうか。

それは恐らく、大切な人間の死を受け入れないままでいる、という選択肢もあることを提示するためだと思う。

「6章-洞窟」辺りにおいて、佐知子は幼少期の貴呼とともに洞窟に迷い込む。助けに来た楢崎は、「あちら側」の思い出の中、あるいは療養所で貴呼とともに暮らし続ける選択肢もあると佐知子に提案している。

この選択肢を選んだところで、別にそれ程悪いことでもないだろう。

なぜなら、楢崎が日常生活に支障がないように佐知子の身体を動かしてくれるわけであるし、実際、七重Aはそのような選択肢を取っている。自身が美紀であることを忘れ七重Bだと思い込んでいるが、七重Aは楽しそうに生きているし、生活に大きな困難を抱えているようでもない。リリィを悲しませているという問題があるにせよ、七重A自身のことだけを考えればやはり特に支障は無さそうである。

受け入れないという選択肢も、確かにあり得べきものとして作中では描かれている。

 しかし、佐知子はそれを選ばなかった。最終的に貴呼の死を受け入れ、楽しかった思い出は消えるわけではないことを認識し、それを糧にして生きるわけである。

それと対比される役割が、七重のこの設定にはあったのだと思う。

 

七重は貴呼に似ている

 七重は貴呼と似ている。性格と行動と考え方と、それと容姿も少し。

それは、「佐知子に貴呼のことを想起させ症状を悪化させる(6章のような状況に陥らせる)」という物語上の役割があったからだと考えられる。

「序章-定期検診」において楢崎は、出来るなら貴呼のことを思い出させるものの無いところに旅行するのが症状の改善に良いと言っており、「第二章-扉の前」において、佐知子は貴呼からの貰いものである櫛と椿油を使用し、その後すぐ幻覚を見ている。

確かに、貴呼のことを想起させるものは佐知子の症状を悪化させる方向に働いており、恐らく七重にも十分にその機能があったと考えられる。七重が佐知子に迫るシーンが有ったが、これも貴呼が恋人であることを想起させるものだ。この部分については、(七重に応じないことで)"佐知子には貴呼しかいない"ということを提示しようとしたともとれなくはないが、その目的なのであれば二人の関係性をきちんと描けている本作においては特に必要性を感じなかった。

 

 

佐藤 梢

  「こちら側」の梢(A)は実際に存在している人物であり、「あちら側」の梢は佐知子が(梢Aを見てから)創ったものだと考えている。梢(B)が梢(A)と瓜二つなのはそのためではないだろうか。現実世界で梢と会う→容姿が小さい頃の佐知子と似ていた→それを受けて「あちら側」の幼少期佐知子が創られ、当然それに引っ張られた、という感じで。この部分は作中に根拠が何もないので完全に想像です。

「こちら側」の梢(A)が実在していると思った理由は、梢がリリィの伝手で建築事務所見学をする話において、梢が実在しないとリリィの発言が不自然になってしまうことや、佐知子が梢(A)からもらったペンギンの玩具がちゃんと残っていることなどがある。リリィも実在しなければ事務所の件は説明が付きはするが、8章において楢崎が"ここ(あちら側)には小母さんや梢はいない"と言っているので恐らくリリィも梢も実在する。

 また、「あちら側」の梢(B)だけが、貴呼からのプレゼントである四葉のヘアピンをしている。例えば、「第五章:水槽の猫-梢のなくしもの」と「第六章:遠くに向かう電車-濁った水」を比べてみれば良い。

こういうさりげない情報提示の仕方もビジュアルノベルらしさがあって好みです

 

 

文・犬飼

クローバーデザイン事務所の従業員であり、言うまでもなく実際に存在する。

 

彼・彼女らの事務所でのやりとりは全体的にテンポが良くて好きでした。 

貴呼が飴玉をポリポリと噛むシーンが一番印象に残っています。

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この部分のコミカルな動きを感じさせる演出に感心した覚えがあります。

淡々とした描写が続くのであまり動きが少ない分、何をしでかすのか予想がつかない貴呼の行動はついつい見入ってしまうことが多かったですね。

 

 

 

感想

『SeaBed』で一番好きだったところ

 それは、「佐知子と貴呼が積み重ねてきた23年の年月とその関係性をダイレクトに感じられたこと」と「"楽しかった思い出は消えるわけではない"というテーマ」になる。

前者については、2節『この作品のどこが魅力的だったか』でも書いたが、「あぁ、佐知子は貴呼の為ならば"あちら側を創る"なんてこともきっと出来てしまうんだろうなぁ。」と素直に納得させるだけの関係性を、この作品全体を通じて描写できていたところが本当によかったと感じた。

 

 

 楽しかった思い出は消えるわけではない

 かなり短く纏めると『SeaBed』は、佐知子が長年連れ添った恋人の死を受け入れる過程を描いた作品になるのだろう。七重Aのように大切な人の死を受け入れず生きるという選択肢もあったが、最後には貴呼との離別を乗り越える。その直接的なシーンが「終章:四つ葉のクローバー -電話」にあたる。

佐知子と貴呼は、この電話で死別以来初めて言葉を交わしたわけであるが、その割にはなんでもなかったかのように、楽しかった思い出や近況について淡々と語り合う。そして最後には次のような別れの言葉を交わす。

幸せな日々だったわね」

『これからもね』

私が貴呼の名前を呼ぶと『うん』と貴呼が返事をした。

「・・・さよならね」

『うん、さようなら、サチ』

しばらく回線の途切れた音を聞いていた。

受話器を置くとチン、と短く高い音がした。

 

-「終章-電話」

そして、最後のシーンには次のような台詞がある。 

でも、私にとっては、あの人といた時間だけが、時を経ても変わらずに輝いている。それはどんなに辛い時でも、私を励まして支えてくれる。そのおかげで私はもうふらつく事もないし、今度は、この思いを伝えて誰かの支えになりたいって思うわ

 

-水野 佐知子/「終章-旅立ち」

彼女たちはもう二度と会うことはない。しかし、二人で一緒に過ごした頃の楽しかった思い出は消えるわけではなく、今なお色褪せずに輝き続けている。そして、それは佐知子にとって生きる糧になっているのである。貴呼にとってもそうなのだろう。佐知子に約束した通り、最後は繭子(=佐知子)を連れ旅に出るシーンでこの作品は終わる。

 彼女たちは、楽しかった思い出は消えるわけではない、ということを、記憶を振り返る過程の中で実感し、前向きに受け入れた。そして、それはプレイヤーにとっても説得力のあるものになっているように思う

「思い出や考えは時間の経過や死によって消えてしまうわけではない」というテーマは、作中において度々登場している。エピソードで言えば、「序章-南の島」での星の光の話や、「序章-哲学者」での話などがある。また、「あちら側の世界」の存在そのものがそれの極致のようなものであることも強調しておきたい。「あちら側」は、やはりこの作品のいちばん大事なところに関わっていているのである。

 

 

 自分は、昔プレイして楽しかった作品を振り返っていると、"今プレイしても楽しめないんだろうな”という思いや、えも言われぬ郷愁や物寂しさ、それを高評価していることへの少しの気恥ずかしさに襲われる時がある。こういった感情に対し、「その時に楽しかったことは嘘ではないし、その当時にそう思った事実は残り続ける」という主張を『SeaBed』は与えてくれる。

なんというか、今を楽しめばそれでいいと背中を押してくれているような気がして、それだけで少し救われた気分になる。随分と勝手なので伝わる訳がないだろうが、それでも自分がこの作品を大切に思う大きな理由の一つだ。

 

 

その他

よく分からなかった部分や解決していないこと

・美紀が居なくなってしまう前に見ていた蒼い蝶について。貴呼も同様の蝶と思われるものを見ているスチルがあるが、この蝶は結局何だったのだろう。

・多くの人が指摘しているように、年代が合わないという問題がある。物語紹介では”80年代後半に事務所を始めた”とあるが、作中の情報と整合性がない。本筋には関係ないのでどうでもいいことではある。

・「序章-ニュース」で、南国の島でボート転覆し邦人2名が行方不明になった事件が出てくるが、伏線っぽいのに特に意味はなさそう?

・「フワリンベン」って何?

・沢渡アンネリースって何者?

 

不満点、改善して欲しいこと

パッケージ版でプレイしたのでDL版では起こらないかもしれない。

・演出が遅いのにスキップできない。大事なところを読み返したいのになかなか辿り着かなかった。章選択の機能を使った際も何回もタイトル画面に戻るを選択したが、タイトル画面を出す際も少し時間がかかり、じれったかった。

・セーブできる数が5なのは少ない。大事な部分をピンポイントにセーブしておけないのが不便だった。演出スキップのほうが実装してほしいけれど。

・"gallery"機能での再現性のあるバグ。2ページ目の最下行左から2列目にある例のモノクロ写真を見ようとすると、エラーが出て強制終了せざるを得ない。

 

 

その他、感じたこと

 ・プレイをしていて、設定が似ているなぁと思った作品が一つある。『SeaBed』のような設定のゲームは色々とあるのかもしれないが、作品名を出すこと自体が重大なネタバレになってしまうので、ここでは反転文字で書いておく。

そのノベルゲームをプレイしたことが無いと思う人は、ネタバレを踏まないためにもこの部分は読み飛ばしてほしい。

 

ーーーーー反転ここからーーーーー

その作品とは『書淫、或いは失われた夢の物語。』である。これは、「雪山で一緒に遭難し怪我を負った恋人の"真剣な願い"を聞き入れ、その肉を裂き食べることで生き残った主人公が、深いトラウマを抱えぶっ壊れ、そのことを忘れて自分の内的世界に引きこり、そこで恋人と生きる話」である。こっちも医者の介入やらなんやらがあり、最終的には事実を思い出すのであるが、結局現実には帰ってこない(はず)。

 わざわざこの作品を持ち出して何が言いたいのかというと、『書淫』が強烈な出来事でもって内的世界を創るという大それたことを納得させているのに対し、『SeaBed』は二人の関係性を丁寧に重みを持たせて描くことでそれを納得させている、という点である。(念のためではあるが、”どちらの方が良いか”については一切言及していないことを一応断っておきたい。)

書淫と比べると、二人の死別は、どうしようもなく悲劇的な出来事から起こる物語的なものではなかったように思う。しかしそれにも関わらず、「あぁ、佐知子は貴呼の為ならば"あちら側を創る"なんてこともきっと出来てしまうんだろうなぁ。」と素直に納得させられるだけの関係性をしっかりと描けていたことが、やはりこの作品の本当によかった部分だと思う。

ーーーーー反転ここまでーーーーー

 

あと、繭子と貴呼が「あちら側」の花壇で一緒に植えていたのが”プリムラ”だったのもすきだった。

 

おわり。

*1:百合について全く造詣が深くないので、言葉の指すニュアンスが異なっているかもしれない。

*2:物語を動かすような出来事以外があまり描写されない以上、少なくともプレイヤーからはそのように見えてしまう部分もあるだろう。

*3:その年代の生活は知らないのに想起されたのも凄いところだと思う。

*4:"この部屋は物置になってかれこれ十年以上経過している"
との記述があり、008号室が「佐知子が8才の時の記憶の保管部屋→貴呼関連の記憶の保管場所」に変遷していると考えられる。貴呼が小6で作った陶器等があるのもそのためだろう。

*5:比喩としての海底なのだろう。

*6:「あちら側」と「こちら側」の中間点のような場所だと思われる。

『SWAN SONG』感想

「醜くても、愚かでも、誰だって人間は素晴らしいです。幸福じゃなくっても、間違いだらけだとしても、人の一生は素晴らしいです。」

 

ー尼子司/『SWAN SONG

 

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 『SWAN SONG』(2005-07-29)

ブランド:Le.Chocolat

シナリオ:瀬戸口廉也

公式サイト:[ Le.Chocolat ] - SWAN SONG

 

かなり的を絞った感想になるため、想定する読者も既プレイ者としておく。

故に、ネタバレは気にせずバンバン突っ込んでいくが、予めご了承いただきたい。

また、宗教上の理由でTrue√については一切触れない。

 

主に「尼子司はどうして今際の際に人を肯定したのか」について書く。

あろえの存在意義や、"SWAN SONG"が指すものについても少し触れる。

 

 

人は創発である

 ~あらすじ~
物語はクリスマス・イヴの晩、大地震が発生したところから始まる。主人公である尼子司を含め、何とかして生き延びた若者6人が倒壊を免れた教会に集う。

援助がいつまで経っても訪れない為、外部と接触しようと6人は移動を開始し、遂に自分たち以外の生存者が避難している学校に辿り着く。
これで一安心……していたのだが、その安心も長くは続かなかった。いつまで経っても援助は訪れず、外部との通信すらいまだに出来ない。
徐々に環境は逼迫していき、人間関係に軋轢が生まれていく。そして……

 

Normal√では、様々なすれ違いの末に、避難所である学校内でも分裂が起き、お互いに殺戮し合ってしまう。不幸にも左手を失った尼子司は、満身創痍ながらも生き延び、昔かつての仲間たちと出会った教会に辿り着く。そして、最期の瞬間にあろえが復元した継ぎ接ぎのキリスト像を見上げながら人生を賛美し、命を引き取るのであった。 

 

まずは、終盤において教会へ向かう途中のシーン。

尼子司は瀕死状態であり、意識が朦朧とし始める。

このまま僕の生物としての機能はどんどん失われていくのだろう。少しずつ、僕を構成していたものたちは、僕を形作ることをやめて、元々そうであったようにただの物質へ帰ってゆくのだ。そして最終的に僕は消えてなくなる。二十年ちょっと前に何かのいたずらで組み上げられた僕は、またバラバラに分解され世界に還元されるのだ。
なんだか寂しいな、と思った。
そして、無性に昔のことが思い出された。

 そして過去の回想に入る。昔のこととは、天才指揮者である父のオーケストラの演奏を聴いた時の思い出話のことだ。

素晴らしかった。
(中略)
他の人はどう感じたのかはわからない。でも、まぎれもなくそれは最高の演奏だった。どうして人間はこんな演奏が出来るのだろう。
(中略)
父は今日の公演を葬式だと言っていたが確かに何かが死んだようなそんな気分だった。僕はどうしてそう感じてしまうのだろうか。
オーケストラを構成する演奏者。彼らはそれぞれ別の場所に行くだけで、誰一人いなくなるわけではない。彼らに会おうと思えばその機会はあるだろうし、それは何でもないことなのだ。どう考えても、形ある何かが減ったわけでも、失われたわけでもない。なのに、妙に寂しいのはなんでだろう。誰かと別れてしまうような、変な気持ちがするのはなんでだろう。オーケストラが死ぬ。それはどういうことなのだろう。もう同じ演奏を聴くことが出来ないって、それだけじゃない、もっと深い意味があるような気がする。
その答えはきっと、今日の素晴らしい演奏のなかにあるのだ。彼らは本当に素晴らしかった。
(中略)
少年時代のあの気分と、いまの僕の気分がとても良く似ている。

 

昔は、「オーケストラ」という有機的な集合体がバラバラになって「人」という要素に還元されてしまうことが、寂しかった。今は、「自分」という有機的な集合体がバラバラになって「ただの物質」という要素に還元されてしまうことが、寂しい。

 

そして赤字太線部には、より直接的な感情が表れている。

司にとって、何かが有機的に繋がっていることは、素晴らしく、最高なことなのだ。

 だから、有機的な連なりである全体がその構成要素に還元されてしまうことを、寂しく思うのである。

 

 

 そして、司と柚香は遂に教会に辿り着く。そこにはあろえが破片を接着剤でくっつけて再現したキリスト像の姿があった。しかし、あろえはコンクリートの下敷きになっていて、既に息絶えていた。柚香はそれを見て泣き崩れ、そして心が決壊する。

「こんな世界に私は生き残ってしまって、みんなが大事にしていた貴重な生命を、私なんかが無事のまま持たされて、だから大事に生きていかなくちゃいけないって、私にはその義務があるんだって、それはわかるんです。でも私には、ここで生きることの意味が、どうしてもわからないんです。生きていることが、喜べないんです。」

 

佐々木柚香/『SWAN SONG

 自分の生きている意味が分からないと嘆く柚香に対して、司はこう返す。

「醜くても、愚かでも、誰だって人間は素晴らしいです。幸福じゃなくっても、間違いだらけだとしても、人の一生は素晴らしいです」

 人は生きているだけで素晴らしい。上でも述べた通り、「ただの物質」が有機的に組み合わさって「人」が出来るということは、それだけで素晴らしいことなのだ。 

 

全体とは、部分の総和以上のなにかである。全体とは全体であるというそのことだけで素晴らしい。勿論、人も。

人は創発である。だから、素晴らしい。

 創発(そうはつ、英語:emergence);部分の性質の単純な総和にとどまらない性質が、全体として現れること。

 

そして、司は「あろえが手ずから再現したキリスト像を立てよう」と柚香に提案する。

「見てくださいよ、この像を。あちこち歪んでますよね。なんだか不気味でさえあります」
「でも僕、これは好きだな。宗教的なものって、どっちかと言うと嫌いなんですけど、でもこれは悪くないです。やっぱりそれは、あろえが手で一つ一つ貼り付けたからだと思うんですよね。綺麗ではないけれど、すごく、いいと思うな」

 神の子なんか関係ない。これは、いまはもういない僕の友達がその小さな両手で丹念に一つ一つ組み上げた手あかのついた石のかたまりだ。僕は誇らしくてしかたがない。だから、絶対に立ててやる。そして、このやたらにまぶしすぎる太陽に見せつけてやるんだ。
僕たちは何があっても決して負けたりはしないって。

なぜ司が突然キリスト像を立てようとしたのか、初めはよく分からなかった。

しかし、今なら分かる気がする。

恐らく、「破片」という要素が有機的に組み上げられることで出来た「像」が、司にとっては素晴らしく、最高だったのだろう。

 

 

キリスト像を立てた後、司は仰向けに倒れる。ピアニストである司は恋人の柚香を泣かせたくないと、最期にこんな事を思うのである。

ピアノさえ上手に弾けたなら、僕は無敵なんだ。何もかもうまくゆく。泣いている柚香にも、あのピアノを聴かせてあげたい。可哀想な柚香のために、最高のピアノを弾いてあげたい。
(中略)
いま僕はとても良い気分だ。こういうときは、最高の演奏が出来るって知ってるんだ。最高の演奏っていうのは、心のなかにしかないはずの美しいものがたくさん外にあふれ出て、そこらじゅうの何もかもを輝かせて、それは本当に、最高で、とんでもなく素晴らしいものなんだ。

 これは独りよがりな私の想像かもしれないが、やはり下線部から”繋がり”を読み取れるように思う。

司にとってピアノを演奏することは、「自分」という要素を「周囲の人間」と繋ぎ合わせることが出来る行為だったのだろう。

人は人であるだけで素晴らしい。そんな「人」同士を、ピアノ演奏という自分の行為でさらに「周囲」と繋げられることは、本当に、最高で、とんでもなく素晴らしいことだったのだ。

 

 

 

 司が最期の時に肯定したのは、人である。

『CARNIVAL』*1で学がしたような世界への肯定ではない。

『キラ☆キラ』鹿之助√で描かれた人生への肯定*2とも少し違う。

SWAN SONG』の司は、全体としての、創発である人そのものを肯定していたのだと思う。

 

私は最初、障碍者である"あろえ"の存在意義が全くわからなかった。

だが、今までの流れを踏まえると、その一端は分かるように思う。

つまり、創発であるという一点において、障碍者である”あろえ”は普通の人と全く同じであり、「人は人であるだけで素晴らしい」という主張をあろえに適用することによって、それを強調する効果があったように感じている。

 

 最後に、タイトルでもある"SWAN SONG"が何を指していたかについても少し触れておきたい。

SWAN SONGとは名前の通り「白鳥の歌」である。これは「白鳥は死ぬ前にもっとも美しい声で歌を歌う」という伝説に基づいて、このような名前を付けているのだろう。

これを踏まえると、SWAN SONGとは「死に際のあろえが手ずから組み立てたキリスト像」を指しているように思う。

司にとって、創発であるものは素晴らしかった。「破片」という要素が有機的に組み上げられた「像」は、すごく、いいものであった。これは「ただの物質」が有機的に組み合わさり「人」が出来るということ、つまり、人が人であることが素晴らしい、という主張に通じる。

今際の際に、障碍者あろえが自らの手で一つ一つ貼り付け復元したキリスト像。そんな"SWAN SONG"を司は賛美し太陽に見せつけた。

それは死に際の尼子司が残した、最大級の肯いであり抗いだった。

 

*1:ここでは小説版での最期を指す

*2:『キラ☆キラ』鹿之助√に人生への肯定を描く部分があったかは、各々に考えがあるとは思う。しかしながら、今回は並列列挙の見栄え上こうさせて頂いた。あくまで見栄え上そうしたのであり、私が必ずしもそう捉えているわけではないことはご承知おき願いたい。

『魔女こいにっき』『魔女こいにっき Dragon×Caravan』感想

あるところに二人の夫婦がいた。

美しい男と美しい少女は自然な成りゆきと

いくつかの偶然を交えながら恋に落ちます。

互いが互いを好きで。

それだけで世界の何もかもは、華やぎ、優しくなり、

まるでおとぎ話のような時間が二人に訪れる。

この世にこれ以上はないというほどの美しい瞬間に、二人は永遠を誓う。

おとぎ話ならここでめでたしめでたしで終わるだろう。

けれど、人生はそうはいかない。

いつか少女は歳をとり。おばさんとなり、皺ができ。

生活の疲れはかつての美しさを蝕み、貧乏は彼女の心を僻ませ。

夫とのすれ違いは彼女の愚痴を多くする。

一方の夫も、頭は薄くなり。腹は出て。

いつでもどこか遠くを見ていた夢見がちな瞳は

ただ、日々の暮らしの往復を映すばかり。

あれほどみずみずしくお互いに満ちていた想いはどこかに消え失せて。

二人はほとんど話すことすらなくなりました。

いつか見た、あの美しいおとぎ話の面影すら、そこにはない。

物語はどこにいったのか?

 

-『魔女こいにっき Dragon×Caravan』プロローグ

 

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『魔女こいにっき』

ブランド:Qoo brand

企画・原案:新島夕

公式サイト:Qoobrand > 「魔女こいにっき」Official Website

 

 本作品『魔女こいにっき Dragon×Caravan』(PS Vita「魔女こいにっき Dragon×Caravan」公式サイト | ENTERGRAM)はそのCS移植版であり、

・「失われた物語」(氷室百合視点の物語)

・「灼熱の王子と小さな竜」ルート

が追加シナリオの主要な部分となっている。また、原作ヒロインにもいくつか新規エピソードが追加されている。

 

Q.無印と「Dragon×Caravan」のどちらをプレイすればいいの?

A.無印→Dragon×Caravan」の順にどちらもプレイすることが望ましいです。

無印は18禁なのでえっちシーンがあり、それは「魔女こいにっき」のとある解釈には欠かせないものだからです。

Dragon×Caravan」ではえっちシーンは全カットですが、その代わり追加シナリオがあります。

「失われた物語」はありすの友達である氷室百合の話で、読む価値はあったと思うくらいにはよかったです。

「灼熱の王子と小さな竜」は、無印でのSECRET√(后・アリスの話)後のお話です。CS版をわざわざプレイする大きな理由になるとは思いますが、正直賛否が分かれそうです。私にとっては微妙であったので、あまり積極的には勧められないですね。

 

 

 以下、ネタバレを含みます。

想定する読者は無印or「Dragon×Caravan」の既プレイ者、もしくはネタバレを気にしない方です。

 

全5節で14000文字強になります。

0.節→あらすじ

1.節→南乃ありす√について

2.節→后アリス(SECRET√)について

3.節→PC版アリス√のもう一つの解釈について

4.節→vita版追加シナリオ「灼熱の王子と小さな竜」について

 

0.物語概要

 ~STORY~

バラ色町の商店街にある理容室で一人暮らす少女、南乃ありす。

学園二年目の春も、特別な事は何もなく、いつもの電車に揺られ、いつもの友達と過ごします。

そんなある日。友達と一緒に、学園はずれの森にある時計塔に探検をしたありすは、塔から落ちてきた不思議な日記を拾います。

持ち帰り、そっとその日記を開いてみるのですが、そこにはある少年の日々がつづられていました。

小さな町を舞台に、一冊の日記をめぐり、少女の初恋の...失恋の物語が始まります。

ー公式サイトより

 

基本的に、少女「南乃ありす」が一人称視点で日記を読んでいくという形式でゲームが進行していく。

物語内での重要な内容も後半に極端に偏っており、時系列がぐちゃぐちゃであることも相まって、設定を追うだけで精一杯であり気がついたら終わっていた、という人もいるのではないだろうか。(少なくとも、私は1周目そのような自体に陥っていた。)

 

そこで初めに、事柄を時系列に沿って簡単に整理しておきたい。その際、公式で販売されている『魔女こいにっき ビジュアルファンブック』に記載されている時系列表を参考にしたので、正確なものになっているかと思う。

 

 なお、物語の区別がしやすいように”第一の物語”、”第二の物語”、”第三の物語”、”日本昔ばなし”、”沢山の物語”と名前を付けた。これはこの感想内で便宜上付けた名前であり、作中では出てこない。

 また基本的に、片仮名の「アリス」は后・アリスを、平仮名の「ありす」は南乃ありすを指すとする。

 

約210年前:第一の物語=砂漠の国の物語

・砂漠の国の王・ジャバウォックが隣国の姫・アリスに一目惚れをして結婚する。

物語が好きで夢見がちなジャバウォック王は、”永遠に止まらない時計塔”を建設しようとしたが失敗し、王国を追放され、后・アリスや魔法使い・崑崙らを従え楽園を目指し西へ進む。しかし、疲弊が積み重なり、途中で立ち往生してしまうことになる。

 

・ジャバウォック王の眼中には楽園しかなく、そこにアリスはいない事に胸を痛めた后アリスは、崑崙に命じて”竜の書”を作り上げる。この”竜の書”は「使用者は不老不死の生命を得て、永遠に物語を語り続ける」という効果をもつ。アリスはジャバウォックにそれを使わせることで、物語の内側に閉じ込め永遠にそれを読むことで慰めにしようとした。

 

・勿論そのような后アリスの思惑に気付かないジャバウォック王は、崑崙に「この”竜の書”に願えば、永遠に物語を語り続けることが出来る」と唆され、永遠を願い”竜の書”と契約し、不老不死の”物語”(の語り手、そしてその主人公)になった。

その後、ジャバウォックは、崑崙がよく語っていた思い出の地・日本へと渡る。

 

 ☆ちなみに、アリスは「ジャバウォックは自分(后アリス)のことを忘れるように」と願ったため、以後ジャバウォックにはアリスの記憶が無い。(この記憶を取り戻すのがシークレット√である。)

 

約200年前:日本昔ばなし①=佐納歌音との物語

・舞台であるバラ色町にある”時計塔”の成り立ちについて。

 

約80年前:日本昔ばなし②=南乃ありすの母や、相馬有栖との物語

・たくみ、学園で出会った少女(南乃ありすの母)に恋をするも、少女は幼馴染の少年と恋仲になり、二人は南乃理容室を開店する。

少女に振り向いて欲しい一心で、たくみは総合美容施設シンデレラを開店するが見向きもされず、幸せな二人の姿を遠くから見守ることに決める。

 

・たくみ、シンデレラの美容師・相馬有栖と恋仲になるが、歳をとらないたくみに有栖の精神が耐えられず、彼女との物語を終わらせることを決意する。

 

☆この時代に主人公はジャバウォックから日本人らしい名前「桜井たくみ」に改名していた。

 

約60年前:第二の物語=Cinderella Story

・南乃ありすと桜井たくみの邂逅。そして、二人は恋に落ちる。

たくみは「俺は不老不死だからお前と一緒に歳をとれない」とありすに告げ、自分の正体と過去(記憶のない后アリスの話を除く)を打ち明ける。

ありすはそれを受け入れ、共に生きることを決める。

 

約1年前①:第二の物語の終焉

・しかし、高齢者となったありすは痴呆症になってしまい自らを学園生だと思い込み、「学園に行きたい」と言い出す。たくみはせめてその願いを叶えようと学園に通わせるが、ありすが自分のことを忘れていることを知り、失意のあまり自分の記憶を全て消すよう崑崙に頼む。

(これがアリスの差し金であることが後で判明する。)

 

☆これ以降、ジャバウォックでもなく桜井たくみでもなく「主人公」と表記する。

 

約1年前②:沢山の物語

・記憶を失った主人公は、加藤恋、梢あけみ、周防聖、柏原美衣、三人組(堀田・山田・岡田)、時計坂零とそれぞれ物語を紡ぐ。そして、最後に時計坂姉妹を助ける為に魔力を使いきり消滅する。

 

☆このときもまだありすはせっせと学園生(1年生)をしている。

 

現在①:崑崙との物語

・魔力を取り戻した主人公が復活する。このとき、ほぼ全ての記憶(后アリスの話を除く)を取り戻す。……というのは大嘘で、実は崑崙が記憶を改竄しており、ありすとの生活を全て崑崙との生活だったと思い込まされていた。

・そんなことに気付かずに主人公は崑崙とイチャイチャするが、ある日崑崙に真実を告げられた主人公はありすの記憶を取り戻す。そして、バラゴンへと姿を変えてありすの元へ向かう。

 

☆このときもまだありすはせっせと学園生(2年生)をしている。

 

☆ここまでの流れを纏めておく。

「"第一の物語"(砂漠の国の物語)→ジャバウォック、アリスの記憶を失う→"日本昔ばなし"→"第二の物語"(Cinderella Story)→ありす、ボケて学園生に→たくみ、悲嘆のため記憶を捨てる→"沢山の物語"の後、主人公が消滅→復活した主人公、擬似記憶を取り戻す→主人公、ありすの記憶を取り戻し、バラゴンとなりありすの元へ→"第三の物語"」という時系列である。

 

現在②:第三の物語=自称学園生の高齢者ありすと、主人公であるバラゴンの物語

・この話は至ってシンプルである。つまり、魔女となったありすがバラゴン(=主人公)と共に、街に散らばった物語の欠片を拾い集め、”日本昔ばなし”、”第二の物語”、”沢山の物語”を読みながら、上に書いた時系列を辿るお話。

・そして全ての物語を読んで、真相を知った主人公とありすは、物語の果てに辿り着く。これがオーラス√=ありす√である。

 

☆ここで”全て”や”真相”といった言葉を使ったが、本当は”物語”の支配者であるアリスについての記憶はまだ無い。これを取り戻し、アリスの本心、つまり『魔女こいにっき』の真の構造を知って終幕となる。これがシークレット√=アリス√である。

 

 

 

1.バラ色の日々はおとぎ話のように

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 本作は、学園生だと思い込んでいるありすが時計塔に行き「魔女こいにっき」を手にするところから始まる。先程の時系列でいえば、現代①である。

覚えているだろうか。そこでありすたちは竜の咆哮を耳にしている。

時系列のまとめを思い出すと、実はこの咆哮が、ありすに忘れられ失意のうちにバラゴンとなった主人公のものであることが分かる。

なんだろう気になるうなり声……。

怖いとも違う。

その声が、なぜか悲壮に…切なそうに聞こえて。気になってしょうがない。

ーありす

 その後、バラゴン=主人公と邂逅した南乃ありすは「魔女こいにっき」を読み進める、つまり、ありすがありす自身の物語を読むことで記憶を取り戻し、"物語の先頭"へと向かっていく。

"物語の先頭"とは、”第二の物語=ありすとたくみの物語”であるCinderella Storyでの二人の出会いを指すのだろう。ボケ老人となった南乃ありすは様々な物語を読むことによって時系列を整理し、バラゴン=主人公=桜井たくみとの出会いの記憶を思い出す。そして、遂に「物語の先頭でようやく出会う」ことが出来たのである。

 

 「物語の先頭」に立ったことで、ありすとたくみとの物語は再開し、そして終幕へと向かう。

 

互いが互いを好きで。

それだけで世界の何もかもは華やぎ、この世にこれ以上はないというほどの美しい瞬間に、永遠を誓った二人。

おとぎ話ならここで終わって、その幸せな瞬間は永遠に閉じ込められただろう。

めでたしめでたしだけが閉じ込められただろう。 

けれど、人生はそうはいかない。

その瞬間に都合よく存在が消えてなくなったりはしないし、生活は続いてしまう。決して止まらない。

年を経る毎に少しずつ生活に疲弊して、お互いにみずみずしく満ちていた想いも失われていってしまう。いつか見たあの美しいおとぎ話の面影すら、そこにはない。

ある日男は……妻を連れて、散歩に出かける。
今更交わす話題もなく。見慣れた近所を歩くのは、二人にとって苦痛でしかないようだ。
妻もまた、気まずい思いに駆られている。
ふと通る車の窓に映った自分の老いさらばえた姿と、そこに乗っていた美しい女性を引き比べて、憂鬱を感じる。
今日に限って自分を誘った夫の気まぐれを、うっとうしく思う。
そんな感情は夫にも伝わり、二人の散歩は、ぎくしゃくとしている。
そもそも俺はどうして今日に限ってこいつを誘ったのか。さっさと帰ろう。そして、テレビでも見ようと思ったとき。
ふと、ほのかな木漏れ日が妻の顔を照らし。そこに、一瞬、若い頃の姿を見て、夫は思う。
あらゆるものが繋がって、今があることを。何ひとつ、消えたわけではない。ただ、遠くにいっただけなのだと
そして……
男は口にする。
君といられて幸せだったと。
妻は……何言ってるの……と、口にしながら、少しうつむいて……
そうして二人で家に帰る。
それが物語だ。

 

ーたくみ/「Cinderella Story」ChapterⅣ

 

確かに、バラ色の日々はおとぎ話のようだったのかもしれない。

けれども、それは決しておとぎ話ではなかった。物語は、何ひとつ嘘ではなかった。ただ、遠くにいってしまっただけなのだ。

幸せな日々もあった。一緒にいるだけでぎくしゃくしてしまう日もあった。共に人生を歩めないことがつらいからと、お互いがお互いに相手のことを忘れてしまったこともあった。

そういったあらゆるものが繋がって、ありすとたくみの今がある。

 

そして、二人の物語は終幕を迎える。

真・けーこ、真・やっこ、栗原、三人の姉(あさひ、まひる、ひぐれ)、カルボナーラ(おかーさま)、くー(ペット)、時計坂零、カノン、崑崙、そして、たくみ。

今まで出会ってきた人々に見守られ、初めて出会ったあの日のように、ありすとたくみはダンスを踊る。

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まるで、夜の海を泳いでいるようだった。

一生忘れることはないだろう。

ううん……きっと、死んでも忘れられない。

大好きな人達に見送られて、いくつもの星々が輝く大海を、好きな人とこうして、どこまでも、こぎ出していく気持ちを。

前方には、果てしない、空が広がっている。

まだ見ぬ世界へと、私は、あなたと泳いでいく。

 

ありすとたくみの生活は続く。しかしそれは、物語の中でではない。

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看護師A

「あら……ありすさん」

「お孫さん(注:主人公のこと)、来ていたんだ」

看護師B

「またお話を読んでいたのかしら」

看護師A

「二人でお昼寝して……」

看護師B

「なんだかとても幸せそうね」

これは、ありす√のEDムービーが終わった後の、たった5セリフだけがあるシーンだ。

 

めでたしめでたしの部分だけで人生は終わらない。それからも続いていく。

変わらないものなんて無い、ましてや恋や愛という気持ちが不変であることはない。

けれど、その気持ちがなかったことになるわけではない。ただ、遠くにいってしまっただけなのだ。

 

言葉にしてしまうと随分と陳腐になってしまうが、私にとってありす√はよく描けていたし、感じ入るものも多かった。一言で言ってしまえばありきたりな人生哲学なのだろうが、やはり大切なのはそこに至る過程である。高尚な哲学だろうと記述の仕方を間違えると馬鹿馬鹿しい自己啓発になってしまうし、些細な人生観でもきちんと描けばそれは一つの人生となるだろう。

 

物語ではFinと表示が出て終わってしまう部分よりも先まで描いた、それこそ老後の話まで描いたエロゲだって色々ある。だが、それは概して老後までずっと二人は幸せなままだった。

ありす√はその点においては少し異なる。ただ、あの頃にみずみずしく満ちていた想いは遠くへいってしまっただけなのだと、そう主張する。

しかし、そこに負のイメージはあまり付与されていない。どうしようもなくそういうものなのだと、単にそう描いているように思う。この点が一番気に入っているところでもある。

ありす√は『魔女こいにっき』で一番好きな√だ。

 

過ごした時間は嘘じゃない
感じたぬくもりだって嘘じゃない

昨日までのすべてが思い出になる

ずっと一緒だと伝えた言葉だって嘘じゃなかったんだよ

 

忘れないよ

出会ってから受け取ったものすべて 全部 全部
胸に書きとめた出会いと別れの記し 恋の日記帳

忘れないよずっと

 

ー魔女こいにっき オーラスED「初恋」/WHITE-LIPS

 

 

 

 

2.ひと目惚れより永遠を

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先程の”1.バラ色の日々はおとぎ話のように”冒頭部分で「物語の先頭」を持ち出したのは、作中において「物語の果て」も語られるからだ。この「物語の果て」は、かつてジャバウォック率いるキャラバンが辿り着く事のできなかった「砂漠の果て」にある楽園を準えたものだろう。実際に、ありす√を終えるとタイトル画面はヒロイン達がオアシスで遊んでいるCGとなり、まさに楽園が象徴されている。

 

ただ、この"楽園"は、何ひとつ現実にできなかった夢見がちなジャバウォック王がいくつもの物語の末にようやく語り終えたこと、くらいを意味しているのだと思う。そんなに深い意図があるわけではない気がする。多分。

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この後、タイトル画面で放置すると「ALICE」編に突入し、「魔女こいにっき」の全貌とアリスの存在が明かされる。)

 

  しかし、それは”物語”の支配者であるアリスの意に反するものであった。 

なぜなら、アリスは永遠の物語を望んでいたからだ。幸せな瞬間に終わったおとぎ話には、永遠が閉じ込められているからだ。

 

少しアリスの状況を纏めておこう。 

・かつてジャバウォックはアリスに対してひと目惚れをして二人は永遠を誓いあったが、いつのまにかアリスは見向きもされなくなっていた。
 

私の好きな人が私のことを好きじゃない。そのことを悲しんだアリスは、「使用者は不老不死の生命を得て、永遠に物語を語り続ける」という効果をもつ"竜の書"においてジャバウォックを主人公とする物語をつくり、語り手としてジャバウォックを、読み手としてアリスを配置した。

 

・そして、その物語内に何人も「ありす」(相馬有栖や南乃ありすや周防有朱など。恐らくほぼ全てのヒロインの本名はありす)を仕込み、主人公と恋をさせた。その「ありす」に自分を投影し、永遠に楽しもうとした。

 

・物語内なら、彼(ジャバウォック)はありす(アリス)を愛してくれる。物語内なら、幸せな瞬間を何度でも何度でも読み返せる。何度も、何度も何度も何度も何度も、恋が出来る。

 

 そして、ジャバウォックは「魔女こいにっき」を読み返しこの真相に辿り着く。時計塔に向かい、そこで遂にアリスと邂逅する。

 

 アリスは語る。

あなたは、さっそうと明日へと去ってしまった

私だけが取り残された

魔法が使えたら……って

 このセリフは、本作のキャッチコピーと重なっている。

ひと目惚れより永遠を

どうか日記に残せたら

あなたが明日へ去らぬよう

私に魔法が使えたら

 

ー魔女こいにっき/OPムービー

 瞬間的なひと目惚れなどという移ろいゆくものよりも、永遠の愛がほしい。その為に、あなた(ジャバウォック)を主人公とする日記(物語)を繰り返し読むことで、あなたが明日に行かないよう物語に閉じ込めてしまおう……というアリスの心情が読み取れる。

 

また、新島氏が作詞をした他ヒロインのEDテーマ『永遠の魔法使い』も引用したい。

やがて

おとぎ話だけが取り残されて

ただ 恋心だけ取り残されて

どこにも行けず

たたずむ僕は 魔法使うよ

永遠なれ

 

ー魔女こいにっき EDテーマ「永遠の魔法使い」/monet

 物語内で愛し合っているのはあくまで「主人公」と「ありす」であり、かつての夫婦であったジャバウォックとアリスではない。二人が愛し合っていたという過去の事実の面影は最早そこにない。「おとぎ話」の中で「恋心」という形式だけが「取り残され」るのである。

それでも私に出来るのは永遠に物語を読み続けることだけなんだ……と、ここからもアリスが絶望しているような心情が見てとれる。

 

 さて、アリスの本心を知った主人公は何を思うか。以下がその返答である。

確かなものだけを俺たちは語ればいいのか

君に一目惚れをしたから

永遠に一緒にいたいと……思った

けど変わっていくんだ

確かなものなんてない

だから人は……いや、俺は、物語を求めるのかもしれないな

そこには永遠が閉じ込められているから

めでたしめでたしだけが、閉じ込められているから

 「変わらない確かなものなんてない、だから永遠を孕んでいる物語というものを求めるのかもしれない」のだと言う。

そして次の台詞に続く。

俺はいつだって、砂漠の果てにある、ありえないものを信じていた

本当にあるのかどうかなんて分からない

そのほとんどは、結局、実現できずじまいだった

嘘つきだと言われてもしょうがない

でも、語らなければならない

人は、本当に、世界にあるものだけでは、やっぱり寂しいから

その果て、あるはずのないものを信じないと……生きていけないのだから

 

ージャバウォック

アリスは答える。

そして、あなたは私から去って行った……

私だけを置き去りにして

去って行ったのだわ

 

私は、私は……っ

そんなはかないものがほしかったんじゃない

 

ーアリス

  

アリスは永遠に確実なものだけを読み続けたが、ジャバウォックは瞬間的でも不確実でもいいから語り続けた。

そしてジャバウォックは「変わらないものなんて無い。ただ、遠くにいっただけなのだ」と気付き、ありすと物語を終えた。

一方で、アリスは「変わらないという永遠を求め」て物語に取り残されたままである。

 

ここにありすとアリスの決定的な違いが表れている。

ありすとジャバウォックは変わってしまった現在を受け入れたが、アリスは変わらないものを過去という物語に求め続けた。

 

こうして、ジャバウォックはアリスを”フった”。長い長いラブストーリーの終わりである。

 

永遠を欲しがったアリスは、二人でずっと同じ物語・同じ時の中を生き続けるため、ジャバウォックと共に物語の歯車となって永遠に廻り続けようとする。

 

歯車に押し潰される中、ジャバウォックは最後にこう告げる。

今は、もう、お前を愛することができない

その代わりに……この痛みを、歯車の悲鳴を愛そう

だから語るが良い

それがありえないものだとしても

叶わぬものだとしても

いいじゃないか

お前はつたないながら、語り始めた

人に語られるだけじゃなくて、

自ら、語り始めたんだ

存分にそれをすればいい

世界にこうあれと、願えば良い

やがて物語は竜として

天をふるわす咆哮をあげるだろう

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最後の最後で、ようやく読み手アリスは語り手アリスとなった。

移ろいゆく儚いものではなくて、変わらないものが欲しいと。

ひと目惚れより永遠が欲しいのだと。

それがありえないものだとしても、叶わぬものだとしても欲しいのだと、語り始めたのだ。

 

ジャバウォックはそれを高らかに賛美し、『魔女こいにっき』は終わる。

  

 アリス√のテーマを文面通りに解釈するなら、「変わらないものなんて無い。それでも永遠を望むなら、それが叶わぬものだとして欲しいのなら、強く求め続けろ。それに意味はある。」というところだろうか。

これは、ありす√の「変わらないものなんて無い。ただ、遠くにいってしまっただけなのだ。」というテーマと対応しているように思う。

 

永遠が叶わぬものと知りながら、それでもなお変わらないものを求めて語り始めたアリスの行く末は、vita版追加シナリオ「灼熱の王子と小さな竜」に描かれている。

これについては、次々節"4.私の好きな人が私のことを好きじゃない"で述べることにしたい。

 

3.あなたは違う。あなたはいらない。

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この節で記しておきたいのはPC版『魔女こいにっき』アリス√のテーマもう一つの解釈である。これは一言で言ってしまえば、「エロゲプレイヤーの態度への言及」である。

 

PC版『魔女こいにっき』とvita版『魔女こいにっき Dragon×Caravan』では、アリス√についての解釈が(全く)異なったものになっている、と私は考える。これは、今回の追加シナリオの性質上仕方のないことであるし、ライターの新島氏も移植にあたって意識していた点らしい。

CS化となると、新しいヒロインが一人くらい追加になって、元の作品+αというのが定石だと思いますが、本作は、本編を包括するような追加要素があって、本編をプレイしていただいた方にも、また違った一本として楽しんでいただけるようにしたいな、という野望がありました。なので違い、というと全体イメージが違うことになります。

ー新島タ 氏/PS Vita「魔女こいにっき Dragon×Caravan」インタビュー

www.entergram.co.jp

 

 では、PC版『魔女こいにっき』アリス√が「エロゲプレイヤーの態度への言及」ともとれることについて説明していこう。(vita版アリス√については4節で述べる。)

 

一番わかりやすく示されているのは、PC版の発売一ヶ月後ボイスである。

何?私?私はアリスよ。今更こんなところに、何の用なの?

知ってる。ここ一ヶ月、あなたが何をしていたか。さんざん私たちをもてあそんで……翌月には別のゲームのヒロインにうつつを抜かしていたのよね。知っているわ。

でもいいわ……。恋ってそういうものだよね。心はいつだって、ヒラヒラと、移り気で……取り残された物語だけが、漂い続けるのね。私はここで、あなたとの物語を何度も繰り返すことにするわ。だから、あなたは帰っていいの。あなたは違う。あなたはいらない。

だから……ばいばい。

ーアリス/PC版『魔女こいにっき』発売後一ヵ月ボイス

Qoobrand > 「魔女こいにっき」Official Website

 

 vita版まで含めた「魔女こいにっき」というコンテンツ全体の中で、プレイヤーについて直接言及しているのは、この発売後ボイスだけのはずである。

このボイスにおいて、アリスは一ヶ月のうちに何人ものヒロインを攻略しているだろう一般的エロゲーマー対して「(物語の主人公としての)あなたとの日々を繰り返すことを選び、(プレイヤーとしての)あなたはいらない」と言っていると解釈できる。

 

 思い返してみると、主人公はヒロイン達(恋や梢、美依、聖など)と取っ替え引っ替え関係を持っていった。これは、次々とヒロインを攻略していくプレイヤーと対応している。

また、各√のエンディングにおいて、主人公は消えヒロイン達は取り残される。これも、ハッピーエンドを迎え攻略を終えたプレイヤーがヒロインの元から去ってしまう(物語がそこで終わってしまう)ことに対応している。

 

  次は、OPムービー内のキャッチコピーについて。

あなたを好きになりました
日記を買いました
物語がはじまりました

 1行目「あなたを好きになりました」と2行目「日記を買いました」の繋がりは些か唐突すぎるが、これは「プレイヤーがヒロインに(一目惚れして)好きになり、エロゲを買ってプレイし始めること」を指していると解釈すれば解决するだろう。

 

実際、vita版のインタビューからも監督の新島氏が”絵の可愛さ”、つまり一目で好きになってもらえるかを意識していた節が窺える。

逆に言うと絵を素晴らしくしないと手にも取ってもらえないような企画とも言えるのですが

ー新島タ 氏/PS Vita「魔女こいにっき Dragon×Caravan」インタビュー

PS Vita「魔女こいにっき Dragon×Caravan」公式サイト | スペシャル

 

 

キャッチコピーはこう続く。

ひと目惚れより永遠を
どうか日記に残せたら
あなたが明日へ去らぬよう
私に魔法が使えたら

この部分は、「始まりはプレイヤーの一目惚れでも永遠の愛をエロゲに残せたら。あなた(プレイヤー)が他のヒロインやゲームに去っていかないよう魔法が使えたら。」という思いにも読みとれる。

 

 最後に、EDテーマ「永遠の魔法使い」の歌詞全文を引用しておきたい。

八方美人で 調子いい事言って
理想語る 瞳は まっすぐ
その気にさせるのは 上手いのに
実現できないね 結局

どうにかするきっと
死んでも守るから 絶対
一生懸命 やったふりして
あきらめて

やがて おとぎ話だけが 取り残されて
ただ恋心だけ取り残されて
どこにも行けず たたずむ僕は
魔法を使うよ
永遠なれ


一生一度の恋だ ブラボー!
君のいない世界なんて ありえない
口にするたび どうして
後ろめたいんだろう

永遠に愛する
死んでも離さない 君を
強く抱きしめるふりをして
遠ざかる

やがて恋心だけ 取り残されて
おとぎ話だけが取り残されて
どこにも行けず たたずむ僕は
魔法を叫ぶよ

やがて君が 大人になったら
ぼんやり思い出すだろうか
馬鹿な 望みさ

そしてまだ君が好きで
取り残された 魔法使いがたそがれる町に
かなうことない 未来だけが
歌い続ける

いつか君は 古ぼけた
おとぎ話を 読むだろう ああ
どこにも行けず たたずむ僕が
そこにいるだろう
永遠なれ

ー魔女こいにっき EDテーマ「永遠の魔法使い」/monet

 

 これは、「エロゲーマーがヒロインに一度は永遠を誓ったにも関わらず去っていき、取り残されて佇むヒロインたちが永遠を願っている」と読み取れる。 

 下線を引いた最終部分は、「プレイヤーがそのゲームを再プレイした時に、どこにも行けず取り残され佇んだままのヒロインを目にすることになる」ということを表しているように思う。

 

 

  

 以上のことは、そう解釈できることを提示しただけであり状況証拠にすぎないが、個人的にはクロ、つまり、「エロゲという媒体においてエロゲプレイヤーのヒロインに対する態度に言及しようとした」作品でもあると勝手に思っている。

では、なぜそれがPC版の方のみであり、vita版ではないのかということについてだが、これは次の3点が主だった理由である。

 

① vita版まで含めた「魔女こいにっき」というコンテンツ全体の中で、プレイヤーについて直接言及しているのは、PC版発売後ボイスだけであるから。

 

②プレイヤー(主人公)から取り残されたヒロイン(アリス)がまだいるのに「Congratulation!全てのヒロインを攻略する事が出来ました。」と皮肉っぽく表示されるPC版のみなので。vita版ではこの文字列は無い。

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③アリスが取り残されたヒロインを意味するとすれば、アリスのその後を描いてしまったvita版ではその"取り残された"意味が薄れてしまい、あまり適切でないから。

 

 あのよく分からなくて曖昧なPC版アリス√の終わり方じゃないとどこかしっくりこないというか、なんだかんだであの投げっぱなしのような幕引き感が嫌いではない。

PC版とvita版は結構別物みたいなところがあって、あまり単純には比較できないが、私はPC版のほうがやっぱり好きである。

 

4.私の好きな人が私のことを好きじゃない

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 vita版追加新規シナリオ「灼熱の王子と小さな竜」編について。

 

⚠即ネタバレ満載です。

 

主人公の真田甘楽(上の画像の子)の正体は、上の構図が2節冒頭のCGと全く同じことであることからも分かるように、アリスである。ただし、アリスとしての記憶は失った状態になっている。

ざっくりいえば、ありすが「Cinderella Story」で記憶を取り戻したのと同じように真田甘楽(アリス)が記憶を取り戻す過程が「灼熱の王子と小さな竜」の話である。

 

 本編(記憶を失う前)において、アリスはジャバウォックが好きなのに、ジャバウォックはアリスにもう見向きもしなくなっていた。そのことについてアリスが絶望している様子が窺える部分がある。

好きな人が出来た
その人が好きで……その人が世界の全てで
だけど、その人は私のことが好きじゃないって
私の好きな人が私を好きじゃない
こんなの、耐えられないよ
こんな世界、耐えられないよ

 

-けーこ

これは確か一人目のサブヒロインを攻略し終わったあたりで、けーこが猫(みゃあ)を崑崙のまじないのための生贄に捧げる部分だ。

これはアリスが自分の心情を「魔女こいにっき」に綴った部分と解釈したい。(アリスはところどころ魔女こいにっきを改編している。)

 

 

 記憶を失いその絶望も忘れ真田甘楽となったアリスはなんやかんや「Cinderella Story」と同じ過程を辿り、アリスとしての記憶を取り戻す。

(なんやかんやの部分については特に言うことはないので、各自でプレイをして補完していただきたい。この感想では一切この部分について触れない。)

そして、病んでしまう前の気持ちを思い出すのである。

言いたくてしょうがなかった。

私の好きな人が私を好きじゃない。

だけど……

あなたの幸せを願います。

ただ、その一言が言いたかった。

けれど、あなたが好きだという思いが、欲しいという思いが、暗い感情がそれを許してくれなくて。

 

ー真田甘楽/「灼熱の王子と小さな竜」

本編のSECRET√において、一目惚れという瞬間を永遠にすることが叶わぬものと知りながら、それでもなお変わらないものを求めていたアリス。

「私の好きな人が私を好きじゃない。こんな世界、耐えられない。」と、ジャバウォックと共に時計塔で永遠を過ごそうとしたアリス。

 

長い年月の中で赤黒く爛れていった、そんな恋心が許してはくれなかった一言、

「だけど、あなたの幸せを願います。」

それがようやく言えたのである。

あの手を二度とつかむことはない。

ただ憧れたまま、私は、私の物語に幕を下ろそう。

全てを終わらせる魔法の言葉を口にして。

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 魔女こいにっきに込められていた、かなえられなかった物語。

それが遂に終わりを迎えた。

 

 これが、追加シナリオ「灼熱の王子と小さな竜」の内容だ。

 終わり方だけを見れば十分私好みのものではあったが、いかんせんそれに至る過程が内容を伴っていない。

記憶を無くして別人になってしまった以上、いくらアリスの記憶を取り戻しても、長年熟成したあのどろどろと鬱屈とした情念が薄れてしまっているように感じてしまう。

我々(私)が見たかったのは、単に綺麗にまとまった結末ではなく、それでも永遠を求めたアリスの強い情動の行く末である。物語として上手く完結してしまった分、そういう情念をきちんと見届けたかったのになぁ、という思いが逆に浮き彫りになってしまった印象がある。

結末は嫌いではないし、移植の際の追加シナリオとして物語を上手く纏め上げていたが、プレイヤーが見届けたいと期待していた部分とは少しズレがあったように感じている。悪くはないが、良くもない、私の評価としてはそういったところである。

 

 

 

 この『魔女こいにっき』という作品においては、ありす(ヒロイン)が歳を取るのであり、ジャバウォック(プレイヤー)は不老であった。

しかしながら、現実世界では真逆である。ヒロインはいつまでも変わらずそこにいて、私達だけが年老いていく。

気がつくと、千歳佐奈より年上になり、タマ姉より年上になり、お姉さんキャラよりも年上になっていた。そう遠くないうちに婚期逃しヒロインよりも年上になり、ゆくゆくは人妻よりも年上になるだろう。

だが、それはどうしようもなくそうなっているという、単にそれだけのことである。

あの頃に彼女たちのことを好きだった気持ちは嘘ではなく、ただ、年月の経過によってその気持ちが遠くに行ってしまうだけなのだと、ありす√でそう背中を押された気がする。

いつかもう少し大人になって色々な物語を読み返した時に、取り残されたヒロインたちをみて私が何を思うのか、それは分からないことではあるが、今この瞬間に彼女らのことを想っているのは確かなことであり、少なくとも今はそれだけで良いのだと、そう思う。

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2016 9月新作の感想 ~千の刃濤、桃花染の皇姫・カノジョ*ステップなど~

 この世には2種類の人間がいます。

「今月の新作何買った?」と聞かれる人と「今月の新作何買わなかった?」と聞かれる人です。

だいたい3:97くらいなんじゃないですかね。知らないですけど。

 

 

さて、もう10月も半ばになってしまいました。

 

なので新鮮でもなんでもないのですが、プレイした作品の感想などを書いていきます。

プレイしたのは以下の6作品です。

 

『千の刃濤、桃花染の皇姫  』(AUGUST)

『カノジョ*ステップ』 (SMEE)

『夏の魔女のパレード 』(Wonder Fool) 

『JD温泉。 ~エロエロダイナマイト女子大生との温泉生活 ♨~ 』(アトリエかぐや

『大迷宮&大迷惑 -GREAT EDGES IN THE ABYSS- 』(Liar Soft(ビジネスパートナー)) 

D.C.III With You ~ダ・カーポIII ウィズユー~』(CIRCUS) 

 

ネタバレはあります。

 

『千の刃濤、桃花染の皇姫  』(AUGUST)

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 グラフィックがとても美麗で圧巻でした。

シナリオは...まぁ、うん。めちゃくちゃ悪いってことは無いと思います。

作品全体としてのクオリティは高かったです。お金かかってますね~

 

カッコイイOP映像が流れる中、突然「ういにゃす•おっちょこバニー」みたいな文字列が出てくるのはなんだかなと思わないでもないです。

 

キャラクターは子柚ちゃん(CV:羽鳥いちさん!)と睦美さんが好きです♡

 

自分の頭のなかだと、未だ根の国では千の波濤が絶えることなく此方の国では年中桃の花が絢爛に舞い誇っています。ちなみに、ユースティアの点数を上げました。

 

メインヒロインではエルザちゃんが一番ですね。声優補正。

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『カノジョ*ステップ』 (SMEE)

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絵以外は割といつものSMEEでした。

今作も良い意味でSMEEらしかった部分もあれば、悪い部分もありました。

不快なシーンや設定や性格の整合性など悪い点がちょっといつもより目立ってたかな~と。

グラフィックは、立ち絵も含めなんでこうなっちゃったんでしょうね...

 

良い部分が100あれば悪い部分が50あった、みたいな感じです。

まぁその良い部分にとても良かったところがあるので、私にとっては魅力のある作品でした。

ヒロインが非常に可愛く感じられれば、他は割と何でもいいんです。

 

メインヒロインの"4人"は各々に魅力があり、付き合うという過程の中で見える様々な側面にはキュンキュンくる場面も多かったので満足しました(*´ω`*)

キャラクターとしてそれぞれのヒロインが立っている分、ヒロイン同士の絡みが共通パートでも殆ど無いのが残念でしたね(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

 

 

残りの1人のヒロインは、実は公式にも一切載ってない隠しヒロインなんですけど自虐がネタにならないレベルで酷くて、明らかにスリムで美少女なのに作中でしつこくデブでブスとか言われてもポカーンとなって終了しました。

 

ピュアコネよりはフレラバに近いので、SMEEが好きな人なら別に買っても大外れすることは無いと思います。

 

お気に入りは、椎名先輩と久遠後輩(*´ω`*)♡

 

 

③『夏の魔女のパレード 』(Wonder Fool) 

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柳ひとみさんと美月さん目当てで購入。

当然お二方のキャラはとても良かったです♡

キャロル(金髪)も、他ヒロイン√で主人公に振られて、突然ガチ切れして主人公をボッコボコに殴りだすシーンがお気に入りでした(*‘ω‘ *)

 

 

柳ひとみさんの妹キャラはこんな感じで

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実妹なら最強クラスのパワーがあるんですけど、世間では実は偽妹だったことで色々言われてるみたいですね。

 

私は”妹であること"に異常に執着しているわけでもなく、設定的にも赤の他人では無かったこともあり普通に耐えました。

 

実は設定では主人公が幼い頃に無意識に生み出した使い魔、ざっくり言えば実体化したイマジナリーフレンドなので、血縁的には主人公の筋と言えなくも無いからOKです。

 

 

 

全体的にシナリオは唐突な謎シリアスに加え、展開も掛け合いも特に面白くないんですが、CG(特に乳首)がかなりえっちで実用性も◎。シーンのテキストに「♥」が含まれてるのはやっぱシコ度がめちゃアガりますね。全作品で実装して欲しい♡

 

ルイスママ(実母・攻略不可)が抜群に可愛かったのでもうそれだけで最高でした

~(*‘ω‘ *)

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神。

 

 

④『JD温泉。 ~エロエロダイナマイト女子大生との温泉生活 ♨~ 』(アトリエかぐや)

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いつものアトリエかぐやのこのラインです。えっち。

 

『大迷宮&大迷惑 -GREAT EDGES IN THE ABYSS- 』(Liar Soft(ビジネスパートナー)) 

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ニコライト√最後にある取っ組み合いの姉妹喧嘩が一番好きでした。

 

自分には合わなかったというのが本音。

というかこれ序盤は希さんだけど中盤とか別人が書いてるんじゃ...

 

耳に残るOPが印象的。fullが早く聴きたいです。

 

D.C.III With You ~ダ・カーポIII ウィズユー~』(CIRCUS) 

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四季さんが攻略できて良かったです。

D.C.II Dearest Marriage ~ダ・カーポII~ ディアレストマリッジは神。

 

 

来月は何買いましょうかね。発売予定表を見るところからはじめます。

おわり。

『滅び朽ちる世界に追憶の花束を』感想

『滅び朽ちる世界に追憶の花束を(非18禁)(郷愁花屋(同人)) (2010-08-07)』コンプ

プレイ時間は35時間ほど。隠しサイト閲覧済み。

 

ネタバレ有りなので踏みたくない人は画像の下からは回避で。

 

というか、Twitterにブログ記事を投稿した際に序文あたりが表示されるやつでネタバレするのを回避するためになんか書かないといけないんですけど、これ何文字書けばいいんですかね?もういいですか?

 

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遺し、受け継ぎ、繋いでいく。一瞬の輝きと永遠。

 

前向きで積極的な人間賛歌がそこにはありました。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

<あらすじ>

全てを捨てる、覚悟を決めた。
地位も名誉も財産も………そして、大切な家族も。
全てを置き去りにして、この時代から去ることを決めた。


***

滅び朽ちる世界に追憶の花束を贈りましょう。
これは、いろいろな形に栄えたそれぞれの時代と、そこで生きる人々のお話。
そして自らの望みを叶えるために時空を超える旅に出た、愚かな男の物語。

長い歴史の流れから見ればほんの一瞬の生でしかない彼女たちは、それぞれの時代を果たしてどのように生きたのでしょう。
それぞれの時代に何を思い、何を成そうとしたのでしょう。
花のように、人はたった一度きりの美しい花を、それぞれの生の中で咲かせるのだと思うのです。
今回はそんな、生命力に満ちた物語をお話しましょう。

ようこそ、郷愁花屋へ。

 

(公式サイトより)

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8つの花とそれを冠する8つの物語。

どれも単体でお話として成立していてそれだけで結構面白いのですが、それらが徐々に繋がりを見せはじめてゆき...

という感じのお話です。

ボイスは無いのですが、作品全体の雰囲気にぴったりと合う緩やかな音楽や優しいタッチの絵が好きでした。

プレイしながら「あーだろうか、こーだろうか」と人物間や物語間の関係に考えを巡らせるのも楽しかったですね。

 

元の設定がきちんと考えられていることが伝わってきたので、読んでいて安心感がありました(*´ω`*)

 

 さて、8つの物語それぞれの感想でも書いていきたいと思います。

 

プレイ順

circular→dear→innocent→melancholy→vivid→lost→abandoned→forever

好きな順

forever>vivid>abandoned>melancholy>dear>innocent>>lost>circular

紅&沙乎華が一番好きでした。

 

 

 

 

<「circular」:~巡り来る運命~>

冠する花は「蓮」、テーマは「救済」

救いを願った少年のお話。

 

―――清掃の仕事をしながら生計を立てている少年大悟《だいご》の住む街の美術館に展示されることになった、奇跡を呼ぶ力を持つという黄金の冠。
大悟はしかし、ひょんなことから原価十何億ともいわれるその冠を、盗んでしまいます。
彼が追われて逃げ延びた先は、どことも分からない林の中。
彼はそこで、マゼンタと名乗る、不思議な少女に出会います。

池の上に突如として現れた彼女は、幽霊なのか池の女神なのか。
淀んだ現世は泥の沼のように、慈悲深い彼女は蓮の花のように、罪にまみれた少年に彼女が教えるのは…。

 

初めにやったからなのか、宗教とか唐突に出てくるので世界に追いつけないまま終わってしまって、ぶっちゃけあんまり面白くなかったです。

なので話したいことも無いです。

 

メモでも貼っときます。

 

・remembrance mode「裏切り」マゼンタを裏切った姉妹=ユタ、ユラ

これは背教者ユダからきているのか。

(ユタが裏切った本人であり、ラは線2つでダになる。)

(がしかし、これだと"ユニ"の方がそれらしい)

 

・remembrance modeで年齢と合ってない。16年以上前だから5歳とかで麻薬取引って...←これは隠しサイトで作者も突っ込んでいたのでOK

 

 

 

 

<「dear」:~親愛なる世界~>

冠する花は「蒲公英」、テーマは「追憶」

親愛なる彼へ手紙を出した彼女のお話。

 

―――30世紀末。世界は、終わりを迎えるらしい。
そんな終末思想が支配する時代に生まれた、未黄《ミオウ》。
次第に大気の温度を下げていく地球で生きられなくなった人々は、コールドスリープすることで未来に希望を託すことにしました。
人類の長い冬の時代が訪れたのです。

子供を試験管で生み出すような時代にうんざりしていた彼女は、世界の終わりを望みます。
しかしここには、たくさんの愛の記憶があったのです…。

 

風船をたんぽぽの綿毛に見立て、自分の生きた記憶を飛ばす。

最愛なる世界に記録を遺し、伝える。

あのシーンが印象に残っています。

 

伝えるための記録というのが意味を成すためには、時間の不可逆性とそれを受け取る側の存在可能性が必要だと思います。まぁ取り留めもなくそんなことを考えていました。

 

ーーー彼女の意志の、その受け取り手は

 

 

 

 

<「innocent」:~純真な悪~>

冠する花は「百合」、テーマは「正義」

正義の味方になりたかった子供のお話。

 

―――人類が宇宙へと足を伸ばし月に設立した裁判所、通称“アテネの学堂”。
月という何にも属さないその土地で、平等の名のもとに世界中のあらゆる討論がそこでは行われています。
そして、いくら時代を経ても答えの出ない討論がそこにはあります。
純真な悪と呼ばれるその少女闇《ヤミ》と、正義と悪についての討論を交わすために、今日も挑戦者が現れるのです。

子供の頃、正義の味方になろうと誓った百合《ゆり》と玄兎《げんと》。
異なる形でそれぞれの正義を貫く二人は…。

 

 正義とは何か。悪とは何か。

嘘を付くと即座にバレてしまう、そんな装置がある月でのお話。

 

”正義の反対は別の正義”なんてよく言いますけど、結局のところを己を貫くしかないんですよ。Beleve your Justiceですね。

パワポケシリーズもバルスカも大好きです。

 

この物語も内容自体は特に感じ入るところがなかったので、何も書くことはないんですが、マゼンタ様の過去が垣間見えるtipsがあってそういう意味では面白かったです。

 

~名前とかについて~

・1章 審議記録員No.46187・・・読みが"白い花"

 

・玄兎 

玄=クロとも読める /百合の白との対比

げんと・・・"月にいるうさぎ"の意 

月は百合(白)と玄兎(黒)に割り当てられた惑星

 

「玄の黒」と「月のうさぎ」の2つの意味を絡めている名付けが上手いと感じました。 

 

 

 

<「melancholy」:~憂鬱な浮世~>

 冠する花は「紫陽花」、テーマは「決められた未来への憂鬱」

この世の憂鬱を嘆いた少女のお話。

 

―――梅雨だというのに雨が降らないことに憂鬱を感じる、紫亜《しあ》。
そんな彼女の元にある日、綾小路清四郎(せいしろう)という少年が尋ねにやってきます。
彼は紫亜の祖母である蒼子(そうこ)の旧友、清二郎(せいじろう)の孫。
その清二郎が亡くなったことを、清四郎は蒼子に知らせに来たのでした。
二人は“梅雨の日の憂鬱に負けない会”を創設した仲だという話ですが…。

清二郎の遺書の謎を解く鍵は、蒼子の思い出の中。
蒼子と紫亜、現代と未来の女子高生、二人の感じる憂鬱とは…。

 

思わず胸キュンしちゃうような、甘酸っぱくてどこか懐かしさを感じる恋物語

物語としては一番独立しているお話なのですが、読んでいて純粋によかったな~と。

梅雨の時期から晴れ上がるときの爽快感と、青空に感じる未来への希望。

過去の世代からその先の世代へのバトンタッチという構成が映えていて美しかったです。

 

・紫亜は逆読み=あじ→あし→しあ→紫亜=薄紫 は紫陽花の色

 

「vivid」:~鮮やかな紅

冠する花は「彼岸花」、テーマは「人間らしく生きる」

人間らしく生きたかった少女のお話

 

―――超能力の素質がある者として抜擢され、その能力を覚醒させるために殺し合いをしなければならなくなった紅《くれない》と沙乎華《さやか》。
支給されたナイフを使って、一週間以内に二人のうちどちらかは死ななければなりません。
赤の他人だった二人は、しかし互いに似通った部分を見つけます。
人間らしさを欠いている紅に、沙乎華は、やっと自分と分かり合える人と巡り会えた気がしたのです。

あらゆるものと繋がりを感じられない彼女らにとって、自身をこの世に繋ぎ止めるのは“生きている”ことを証明する鮮やかな赤色だけ。
まるで彼岸から此岸を眺めているかのように生きてきた彼女が、そのナイフで切り裂くのは…。

 

厨二病的な開幕からよもやこのようなお話になるなんて...

いい意味で期待を裏切られました。

紅&沙乎華のコンビが最高でしたね。いや、別に”百合”が好きとかそういうわけではないんですけど、二人の関係性がとても自分好みでした。

紅だけでもめちゃくちゃ好みで、作中で一番好きなキャラですね。かなり感情移入して読んでました。

 

foreverに次いで大事なキャラクター群の登場する物語だったと思います。

 

 

 

<「lost」:~失われた記憶~>

冠する花は「忘れな草」、テーマは「滅び」

臆病者の男の子のお話。

 

―――ユグドラシル”と呼ばれる空中の学園都市の生徒、臆《オク》。
そこでは自然の真理に迫るための数々の研究が行われていて、臆自身も自分の研究に励んでいました。
当り前に続いていく日常…けれど彼はそんな日常に少しずつ疑問を感じ始めます。
自分は何かとても重大なことを忘れていると。

あまりにも辛い出来事を、人は自分を守るために忘れてしまいます。
忘れないでという思いが込められた小さな青い花を眺めながら、彼は…。

 

忘れな草花言葉の通り、「私を忘れないで」というお話です。

臆、幾、翠という名前は自身のクローン番号である09,19,41が由来であり、当時クローンが個性を求め数字ではなく名前を付けて呼ぶことを好んだ、という設定がこの時代の世界観をよく表しているようで好きでした。

 

物語自体は一番微妙だったのですが、あるパスワードを入れることでギリギリ耐えた気がしないでもないです。これだけ短いとループものは厳しいですね。

 

 

 

<「abandoned」:~見捨てられた街~>

冠する花は「向日葵」、テーマは「生きるということ」

娘を失った父親のお話。

 

―――“ジャンクタウン”と呼ばれる郊外のスラム街に、貴重な金属を探すべくやってきた陽炎《かげろう》。
そこは社会的に見捨てられた者が集う街であり、治安がとても悪いことで有名でした。
そんな街で彼は、ブルーという少女に出会います。
殺伐としたその街の中でも明るい笑顔を見せる彼女に、彼は亡き娘の面影を重ねます。

死んだはずの娘にどことなく似ている、少女。
ガラクタだらけのその街で、灼熱の太陽が照りつけるその場所で、落日に向かい、首を傾ける太陽の花…。

 

いつまでも生きているということは死んでいることと変わらない。例えクローンだったとしても、私は他の何者でもなく私である。

私が私として生きた証に、自らを壊す。

 

終盤のシーンで、娘のクローンであることを知られたブルーが陽炎のことを「オジサン」と呼んだセリフが印象に残っています。

 

「お父さん」ではなく「オジサン」。ブルーがまさしくブルーとして生を全うした証に他ならないでしょう。

 

普通に泣きました。

 

 

<「forever」:~永遠の愛~>

冠する花は「薔薇」、テーマは「永遠と一瞬」

永遠の愛を誓った恋人のお話。

 

―――醜かった自分の顔を整形し、美しい自分を手に入れた緋依《ひより》。
彼女は大学の卒業研究で、その美しさを永遠のものにするため不老不死の研究を始めます…。
かつての自分が人に踏みつけられる雑草のような存在なら、今の自分は誰もが目を留める薔薇の花のような存在。
けれど今の自分は人の力で造り変えた不自然な存在なのではないかと、次第に疑問に思い始めます。

自然には決して存在しない青い薔薇、青い薔薇の研究をしている恋人。
この幸せがずっと続いてほしいと願う彼女が永遠と一瞬の意味を知る…。

 

一番泣いたお話です。

ずるいです。こんなの分かってても泣きます。ガチ泣きしました。

 

・・・・・・大好きな人と、・・・永遠に一緒にいたい・・・・・・

 

一番卑怯なremembrance modeでした。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

~考察~

 

<マゼンタの本名>

 

「サヤカ」

 

(根拠)

・タイムマシンのパスワード画面で"sayaka"と打つと、「サヤカは二人います。」とメッセージが出る。作中にはvividの沙乎華しかサヤカは存在せず、他に明らかにされていないサヤカがいるはず。

 

・マゼンタは紅と緋色の子であり、二人を繋ぐのはvividの沙乎華だから。紅なら緋色との子供に沙乎華って名付けてもおかしくない。子は鎹とは良く言ったもんです。

 

公式の解答:永原沙乎華

 

あってました。マゼンタの本名に気が付いたときの衝撃がやばかったです。

 

<vividとinnocentの間に起こった出来事>

マゼンタは紅より強い予知能力を持っており、何らかの理由で母である紅を殺害。

それに付随して父である緋色も殺害。理由は不明。

どうやら緋色はマゼンタをかばった模様。

 

公式の解答

紅はマゼンタに殺害される。←合ってた。

 

「事前に未来の話は聞いてたし、沙乎華(マゼンタ)に俺(緋色)も殺されそうになったから、先に俺(緋色)が(自)殺して罪を背負わせないようにみたいな」←間違ってた

 

 

他にも色々関係性とか考えてたんですけど、公式に全て答えがあったので終了しました。

・circularに出てきたマゼンタのおじさんはabandonedの日輪おじさん

・foreverの富士教授の結婚相手はmelancholyの川野さん

とか面白かったです。

 

 

凄いですね。ちゃんと考えられた上で作られていてよかったです。

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しかしまだ一つだけ謎が残っています。

FDである『滅び朽ちる世界に追憶の花束を ~present for you~』において、川野さんを見て紅が含みある視線を投げかけた理由です。

 

何か分かる方は是非ともコメントをお願い致しますm(_ _)m

 

 

 

 

今年プレイした中で好きなゲーム9つ

中途半端な時期ですが、気が向いたので書きます。

ちょっとした感想を添えて紹介する感じなのでよければ気軽に見ていって下さい。

 

順不同で挙げていくか、ランキング形式という体裁にするかで悩んだんですけど、ブログに書く時点でかなり個人的なものになっているので、後者のランキング形式にしようかな~と。

 

面白かった順ではなく、あくまで自分が好きな順(という体)にしています。

 

また、ネタバレは極力避けていく方針です。

が、ネタバレのラインは人それぞれなのでそれに抵触していたらごめんなさい(._.)

 

ま、こんな予防線貼ってる時点でオタク感がやばいですね。さっさといきましょう。

 

 

9.『闇を奔る刃の煌き』(影法師(同人)) (2011-08-13) 

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www.kagehoushi.org

 

あらすじ

 ――認めさせてやる――

武士の世が終らんとする中、若侍は不意に運命とすれ違った。
商家の一人娘、中村蛍の手を取った瞬間、全てが動き出す!
強引、破天荒、けれとも頼もしい男が、愛する女と共に戦い、
道を切り拓いて行く。『流れ落ちる調べに乗せて』の前日譚。
二人三脚で紡がれる新たな立志伝――ここに開幕!

 

 (パッケージより引用)

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

快男児の武士-重蔵と芯の強い大和撫子-蛍の関係はまさに理想の夫婦の体現でした。

二人の関係の、その本質を捉えた幕開けのやり取りからもう既に心を掴まれましたね。

 

魅力的な登場人物達と織りなす疾走感ある立志伝にスルスルと惹きこまれ、楽しみなが

ら駆け抜けた先に迎えた結末には驚嘆の一言でした。

 

プレイ時間は10時間強くらいで、ボイスは無しです。 

 

最後の展開には賛否両論あるかとは思いますが、自分は好きですね。

 

江戸末期のあのゴタゴタした時代の中を駆け抜ける疾走感、そこで紡がれるサクセス・ストーリー、魅力的なキャラクター同士の浪漫あるやりとり、そういうところが良かったです。

Amazoで1080円と廉価なので手にも取りやすいのではないかと思います。

 

あ、これは非18禁です。

 

 

8.『銀色、遥か』(tone work’s) (2016-08-26)

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ーーー君と初めて過ごした冬。そして、10年後に過ごす冬。

中学生編、学園編、アフター編と三部構成で描かれる、まばゆい恋の物語。

 

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プレイ時間は35~40時間ほどで、結構な分量でした。ボイス有りです。

 

中学編というエロゲでは珍しい時間軸から10年という長いスパンで物語を描かれていることで、主人公とヒロインとの色々な人生を見届けることが出来ました。

EDムービーが卑怯で、普通にだいたい泣いていました。中盤にも挿入歌がかかる場面でも盛り上がりがあって、そこでも泣いてましたね。

 

物語の始まりを予感させ、距離を近づけてゆく中学編

彼女と心を交わし絆を深めてゆく学園編

彼女と契りを結び一緒の人生を過ごしてゆくアフター編。

どの√もとても丁寧で、そのヒロインとだからこそ歩める人生だと強く実感出来ます。

 

さっきから人生、人生言っていますが、この作品をプレイしての正直な感想が

「『銀色、遥か』は人生。」

なんですよね。

 

もう少し正確に言うと、

 

「自分の人生に影響を及ぼすような強いものはないが、『銀色、遥か』では主人公とヒロインとの若いうちの一生が描かれており、それを見届けることが出来て自分は良かったと思う。」

 

という感じです。

 

メッセージ性とかそういう強いものはないんですが、あれは確かに人生でした。

 

どういうところが特徴的だったかというと、 一番は、

主人公に決まった夢がないため付き合うヒロインとの関り合いによってやりたいことが決まり、ヒロイン毎に就くことになる職が異なる、という点ですね。

 

このことによって、そのヒロインと付き合うことで歩むことになる将来という意味付けが為されていて、そのヒロインとの人生"だからこそ"という感覚が新鮮でした。

 

そのせいで主人公万能すぎだろ、みたいな意見も出てるみたいですけど、コンセプト単位での仕掛けなので已む無しであり自分的にはOKという感じです。

また、物語に起伏がなさすぎるという意見も分からなくはないんですが、「人生にそんな起伏なんてあまりない」ことを思えば、コンセプト上の許容範囲内でした。

日常が数ヵ月単位飛んで描かれるのも、長いスパンで描くかつ人生に起伏はそんなにないという点からも、コンセプト的に仕方ない範囲かなと。

 

あと、このブランドの作品の例に漏れず、BGMも歌曲もとても素敵でした。

特に、EDムービーはどれも非常に良かったですね。個人的にべスリー√のが一番です。

挿入歌「夢の季節」とED「beloved story」「ヒマワリ」もかなりお気に入りでした。

ここ最近毎日『銀色、遥か Vocal Collection』を聴いては思いを馳せています。

 

 

 

7.『falling』

(非18禁) (にんじゃはなんにんじゃ(同人)) (2014-08-18)

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nerigomadango.wixsite.com

 

■あらすじ

 数年前に父親を亡くし、莫大な遺産を引き継いだ青年マクビーは、
しかしやりたいこともなく、その金と美貌を持て余しながら
自堕落な生活を続けていた。
 そんな中、彼の家に突如不思議な少女が現れる。

「マクビーがあたしを誘拐したんだからね!」

 自分が少女を家に連れ込む姿が録画されたレコーダー。
 少女はそれを持ち出してマクビーを「脅し」にかかる。
 しかしマクビーに少女を連れ込んだ記憶はない。

 マクビーは経験したことのない事態に翻弄されていき、
少女を取り巻く「厄介事」に巻き込まれていく。

――俺が本当に誘拐したのか?

 マクビーと少女が出会った意味とは?
 そして世間を騒がす「連続児童誘拐事件」とは。

 まるで「降って湧いた」かのような奇怪な運命は、
やがてマクビー自身をも変えていくことになる……。

 

(公式より引用)

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プレイ時間4~5時間ほどのフリゲです。

簡潔で過不足のない文章、優しげなイラスト、しっかりと伝わってくる人物描写、表題に絡めた章タイトル、と全体的な纏まりが◎。

ジュブナイル成長物語の典型なのですが、じっくりと心に染み入ってきました。

自分好みの作品でとても満足しましたね。読後も優しい空気感に包まれて、しばらく充実感とともにぼけ~~としてました。

 

実はこの物語にはEDが2つあるのですが、そのうちの片方がむちゃくちゃ好きです。

 

短くて、纏まっていて、そして何よりフリーなので、気軽に一度やってみてほしいです(*´ω`*)

 

 

 

 6.『見上げてごらん、夜空の星を FINE DAYS』 (PULLTOP) (2016-05-27)

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『見上げてごらん、夜空の星を』のFDなのでプレイする場合は前作からが推奨です。

 

なんで入っているかというとFDで追加された美晴先生√がとても好きだからです。

 

■あらすじ

住み込みのバイト先「さをとめ」で同居している、かつての恩師であり今はオーナーの娘としてニート状態の早乙女美晴先生。

かつてのやる気に満ちた麗しい姿は今はもう見る影もない。

先生が教師を辞めることになった理由には、主人公たちも少なからず関係していて...

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

自分がどうにかしてあげないといけなくて、でもどうしたらいいのか分からなくて、結局何も出来なかった。そんな無力感に苛まれて、苦悩を抱えながらも全てを投げ出して諦めてしまった人の物語。

 

本当になんか死ぬほどぶっ刺さりました。

こういうの大好きなんです。

 

 好きすぎて抱き枕カバーも買いました。抱き枕を使うのは初めてなので楽しみ(*´ω`*)

 

 

5.『ROSE GUNS DAYS -The Best-』

(非18禁) (07th Expansion(同人)) (2016-08-31)

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 (画像はLast Season盤。ベスト盤はその再販で、ショートストーリーが追加されています。入手難易度を考えても、今ならベスト盤を購入するほうが良いです。)

http://07th-expansion.net/rose/Main.htm

 

■あらすじ

1944年。

日本にとっての第二次世界大戦は、唐突に終わりを告げた。
列島全規模の大災害により、日本は壊滅状態に。
米中連合軍は人道的見地から無条件休戦を提案。日本政府はこれを受託。
ここに、日本の戦争は終わりを告げた。

壊滅状態の日本を復興するため、米中連合軍は共に進駐。
将来、日本の新たな米中戦争の火種にしないため、南北2分割でなく、
市政レベルで細かなチェス模様のように複雑に2分割。
両国はそれぞれの国威を示すため、競い合うように急速な戦後復興を行なっていった。

その結果、ほんの数年足らずで、日本は荒廃から立ち直ることになる。
しかし、中国軍管区はチャイナタウン化し、米軍管轄もアメリカナイズドされ、
その姿はもう、かつての日本のそれとは大きく掛け離れていた。

米中からの大量の移民により、日本人はマイノリティー化。
故国を失った日本人たちは、日本という名の新しき異郷で生きることを強要された。

日本人は、今や亡国の民。
しかしそれでも。身を寄せ合い、彼らは狡猾に、そしてたくましく生き抜いていた・・・。

 

 

舞台は1947年、23番市暗黒街。薔薇と銃の日々が幕を開ける!

物語を彩るは、硝煙と抗争、酒と女と薔薇の花びら…

米中に分割統治された戦後東京の暗黒街を、男と女が駆け抜ける!

 

(公式サイト及びパッケージより) 

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これ一本で「シリーズ4作+ショートストーリー 」の全てが収録されています。

これで2000円+税はお得ですね。

プレイ時間は30時間強くらい。ボイスは無しです。

 

人間的な魅力に溢れたキャラクター達が幾重にも絡みあい、それぞれの思惑や仁義が交錯し紡がれてゆく物語は読んでいて非常に面白く、続きが気になって気になってあっという間にクリアしてしまいました。

 

本当にざっくりいえば、「立派な理想を掲げるものの実力が伴わない弱小マフィアが大切なものを守るために暗黒街でのし上がっていくお話」なんですが、そう一言で片付けられる内容ではありません。

 

そこには、その複雑な時代を駆け抜けた人間の仁義と生き様があり、掲げた理想とやるせない現実があり、守りぬいた過去と受け継がれる未来がありました。

 

各勢力の思惑が交錯しハラハラする先の読めない展開や、熱い男女の滾るバトルパート、胃が痛くなるほど感情移入せざるを得ないシーンなど物語としてかなり面白かったです。

 

シナリオが竜騎士さんなので少し説教くさいところもありますが、それはご愛嬌ということで。

 

最近ベスト盤が発売されたので、とりあえず買ってプレイしてみても損はないんじゃないかと思います。

 

www.youtube.com

 

Season1OP曲「愛はオメルタ」が流れるタイミングも抜群で、かっこ良くて大好きです。

オメルタ(伊:Omertà)とは、シチリアのマフィアにおける約定。沈黙の掟、オメルタの掟などとも言う。)

 

最高の薔薇と銃の日々をありがとう。

一番好きなキャラはメリル・田無です。主人公のレオは伝説です。

 

 

 

4.『書淫、或いは失われた夢の物語。』

(Force) (2000-07-15)

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ーーー蜘蛛の糸を伝って。
いつかキミに、
抱かれる日が訪れるまで。

 

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この作品を挙げて他人に何を思われようが、自分が好きな作品のことは好きと言いたいので挙げます。

 

さて、巷では構成ゲーだの言われていますが、一番感服したのは「設定とその暗喩、メタファー」です。

こればっかりはプレイしてもらわないと本当に何も言えないんですが、1つの物事で2つのことを暗喩していたのが非常に上手く、それに気が付いた時は脳汁がやばかったです。

 

全部プレイし終わって、これはどういう設定のどういう物語だったのかを考えると、これもまたとても好みのものが立ち現われてきました。

 

キーボードに何度も打ち込んだあの5文字の重さを、一生忘れることは無いと思います。

 

 

 

 

3.『さくらむすび』 (CUFFS) (2005-08-05)

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■あらすじ

僕には、両親がいない。
そのことに気づいたのは、物心ついてしばらく経ってからのことだった。
僕の側には桜がいて紅葉がいて、養ってくれる大人たちもいて。
それで、何もおかしいことなんてない。
そう思っていた。

だから両親が事故で他界しているのだ、ということを理解した際も、特に衝撃を受けたという記憶がない。
どうしたって、僕にとっての両親は、ここまで僕を育ててくれた二人でしかありえなかったから。

けれども…
どうして僕と桜が別々の家に引き取られたのか。
そのことだけは、とても疑問に思っていた。

子供を一人養うということがどれだけ困難であるか。
当時は、それを想像することすらできなくて…
幼い日の僕たちにとって、それはただ理不尽な話でしかありえなかった。

どうして兄妹が離れて暮らさなければいけないのか。
この世界には神様だとか魔法だとか、何かしら目に見えない大きな力があって。
それが僕たちから両親を奪い、そして今度は妹までをも奪おうとしているんじゃないか?

そんな幼い考えに囚われていた、あの頃。

僕は確かに子供で…
自分一人ではなんにもできなくて…

ただ、桜の実の兄であること。
それが、幼い僕の精一杯だった。

だから――
早く大人になって、僕が桜を守るんだ、と…
僕だけはずっと桜の側にいてあげるんだ、と…


あれから、ずいぶんな時が流れ
数ヶ月後には卒業し、真剣に将来を見据えなければならないこの時になっても

しかし僕は、未だ子供のまま――

いつかの幼い誓いを、果たすことができずにいる

 

(公式サイトより引用)

ーーーーーーーーーーーーーーーー

プレイ時間は15時間ほど。ボイスは無し。

 

初めてプレイしたトノイケ作品でした。

撫でるようなタッチで優しく描かれるやりとりは実に心地よく、軽妙でテンポ感もあり、会話を通してキャラクター達の日常の距離感や感情がよく伝わってきました。

心情描写も繊細かつとても丁寧で、けれども圧力を伴ってじくじくと胸に浸透してくるような感じが印象的でしたね。

 

優しい絵と優しい音楽と優しいキャラクター達の織りなす優しい世界、そしてそこに横たわる拭えない不気味さ。プレイ中にはおぼろげな輪郭しか掴めなかったそれが、プレイ後に考察をみることによって形をなした時には、本当に驚きました。

 

ネタバレ込みで書いた感想です。

no1234shame567.hatenablog.com

 

あらすじの文章を読んで良さそうだな、と思った方は是非やってみてください。

繊細な心理描写には本当に感じ入るものがありました。

 

 

 

 

 1位は同率で2作品あります。

 

1.『Dear world -Re.-』

(非18禁) (non color(同人)) (2009-02-08)

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www.dlsite.com

 

■あらすじ

はじめて笑って。はじめて泣いて。

はじめてケンカをして。はじめて仲直りして。

そんな風な、たくさんのはじめてが詰まった時代。

 

どんな大人も通った時代。

包まれて護られて、疑わなかった時代。

ーーそんな時代に、少年はいた。

 

 皆守ユウキは小学生。
 毎日、仲間たちと飛ぶように遊んでいる。
 ある日女の子が引っ越してきた。
 彼女の名前はリリィ。

 ずばり、仲良くなりたい。
 でも、方法がわからない。
 とりあえず、一緒に遊ぶことにした!

すべてが終息してから十数年。

止まりかけていた世界で、少年は少女と出会い、少しの時を過ごす。

 

そして知る。

大きなもの、ゆるぎないもの。そのつながりを。

 

 (公式サイト、DLsiteより引用)

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プレイ時間は6時間ほど。ボイスなし。

この作品の一部は前作『Dear world-the one-』の続編なのです。十全に楽しむためには前作プレイ必須なので頑張ってください。

 

それを乗り越えて本作をプレイする価値は十二分にあると信じています。

 

 

小学校時代。それは誰しもに存在する、あのなんとも言い表せない郷愁を伴った時代。

包まれて護られて、疑わなかった時代。

 

きっかけが無ければ普段思い出すことはない、原体験の一杯詰まったあの時代。

 

記憶自体はあやふやでも、胸に去来するものはきっと多いはず。

 

そんな時代のことを掘り返して思い返させてくれる、非常に稀有な作品です。

もう本当に得難い、大好きな作品として強く心に残っています。

本当に好きです。

あらすじを読んで物語を思い出し噛みしめるだけで、その温かさに泣きました。

ノベルゲームの中で一番泣いた作品かもしれないです。

 

 

 

 

 

 

 

 

1.『CHAOS;CHILD』(非18禁) (5pb.) (2016-04-28)

 dmm

 

多くは語らないです。

ただその構成と演出の妙に、放心状態にならざるをえない程ぶちのめされました。

 

死んだ場所で生まれ、出会った場所で別れる。

”2人”の道はカオスに重なった。

 

このED以外考えられないほど美しい結末でした。

 

スポットライトの演出や「風鈴」の意味などもよく考えられているなぁと、しみじみと思います。

 

勿論シナリオの細部などに粗が無いとはいえないのですが、よく考えて作られたのだろうとこだわりを感じる、本当に感じ入る部分が多い作品でした。

 

 

終わりです。

 

『トライアンソロジー ~三面鏡の国のアリス~』感想

『トライアンソロジー ~三面鏡の国のアリス~(07th Expansion(同人)) (2016-08-31)』コンプ。

プレイ時間は12時間ちょっとくらいだったと思います。

ボイス無しのゲームなので、感覚的には結構がっつり読んだかなという印象です。

 

特筆すべきは、やはりナカオボウシさん手掛ける演出ですね。

 

もうね、むっちゃ動きます。E-moteとか3Dとかではなく、なんというか「ノベルゲームの中で出来る最大限、ノベルゲームとして動きを持たせている」って感じです。

まぁこればっかりはナカオボウシさんが演出した作品をやってみないとなかなか伝わりにくいと思うので、興味のある方は本作でもやってみてください。3000+税でこの演出が体験出来るのなら、ある程度満足出来る選択肢ではないかと思います。

 

(本作やりたくけどナカオボウシさんの演出には興味アリ!って方には、氏が代表を務めるサークルの「W-standard, Wonderland Lv.1」がオススメです。まだ完結していないんですけどこの段階でも十分面白かったですし、演出も凝っています。)

 

 

 さて、ではズバリ本作が面白かったかどうかなんですが、個人的には「まぁそこそこ面白い部分もあったかなぁ」、くらいです。

全体的に素材自体は悪くなく、演出という名の最高の調味料もあったのに、如何せん肝心のシナリオや構成という調理方法が追いついていなかったかな~と。

 

ライターの言いたかったであろうこともその熱量も伝わってはくるんですが、全体を通してみると話題が二転三転するので、ちょっとブレてしまったという印象が拭えないです。一つ一つに対する掘り下げが十分には丁寧でなかったというか。ひとことで言うと、「なんか惜しい」って感じです。 

 

ここからはネタバレありで、適当に少し掘り下げて箇条書きでお送りします。

 

ついでに言っておきますが、自分は別に竜騎士さんのファンでもなんでもないです。

『ROSE GUNS DAYS~ベスト盤~』のついでに買っておくか~、くらいの軽~い気持ちで特にシナリオには期待もせずに本作をやりました。(ナカオさんの演出には期待してました。)

 

なので、竜騎士さんのシナリオの特徴や癖についてあまり知らないですし、それを理解していない人間の感想だということを一応断っておきます。

 

・異なる3つの物語が1つに繋がっていく楽しみ...?

 

ひとつ、「のどかな田舎の世界」
…田舎育ちの仲良し4人組が高校進学を機に見事なまでに変わってしまった青春ドラマ。

ふたつ、「キラキラと輝く都会の学園世界」
…ちょっぴり怠惰な主人公が夏の終わりに「伝説の勇者」になっちゃう学園を舞台にしたドタバタ恋愛モノ。

みっつ、「遠い未来の戦争の世界」
…未来編では、人類と類人猿型宇宙人がファーストコンタクトに失敗、
全面戦争へと発展した世界の、あるところで繰り広げられている戦場を描いたハードSF!?

―――これは“腸裂きのアリス”と呼ばれる残酷な魔女が紡ぎだす、3つの世界をめぐるお伽噺…

場所や時代がまったく異なる世界で語られる3つの物語。
全てを目にした時、新たに開かれる未知なる体験をとくと堪能くださいませ!!

とらのあなWebsiteより引用)

 

このあらすじを読んで、 「田舎の青春ドラマ」と「ドタバタ学園ラブコメ」と「ドンパチ未来バトル」という全く異なる3つの物語がどのようにして一つの物語に収束していくのか、という部分をとても楽しみにしていました。ぶっちゃけかなりワクワクしていました。

 

というのも、「一見異なるように見える物語群が、実は現実世界でのある出来事を示唆していて...」という話には、面白くなるものが多いと個人的に感じているからです。(某館とか

 で、その際の面白さを決定する要素に、大きく分けて次の2つが挙げられると思います。

①完結する個々の物語自体の面白さ

②異なる物語群にどのような繋がりを持たさせて一つに纏めるか

 

①と②はある種トレードオフの関係になっていると思っていて、あっちを立てればこっちがあんまり立たずになるからこそ難しく、その分両方を上手く描いた時のリターンが大きいです。

 

結論から言うと、本作は①はまぁまぁで、②はてんで駄目でした。

正直かなりガックリ来るレベルで②の方が駄目でした(´;ω;`)

 

「ベスピオ2438」と「カントリーガアル」の序盤は結構好きだったんですけどね...

「学園恋愛(と呼ぶにはおこがましい)アドベンチャー」は微妙でした。

 

・3つの物語の纏め方のどこが駄目だったの?

 

3つの物語でグルグルと輪廻を形成しているだけで、作品内主体の現実世界へ影響があるように感じられなかったからです。

 

「ゲームや漫画といったコンテンツに飽きては次へ、飽きては次へとするプレイヤーを表している」、というのは確かにそうで、そういう意味ではプレイヤーの現実世界へは訴えかけてきます(とはいえこれも真新しくない使い古されたメタ的な説教)。

 

けれども肝心の、作品内の主体であるアリスに対して、その3つの物語の繋がりは特に意味を持たないように思います。

結局アリスは引きニートだったわけですが、あの物語群を見て一歩踏み出すようになるのは理解不能でした。

 

「自分で積極的に選択することが大事」だったのであれば、アリスが自殺という選択をした時点で終わっていれば一番のHappyENDだったと自分は思います。

 

何故かと言うと、結局のところアリスにはドアの外に連れだしてくれるようなモノが無かったからです。そんな者も居なければ、そんな物もなかったはずです。

もしアリスが読んだ3つの物語がそれに該当するというのが作者の意図であったのならば、それは自分にとってはズレたもののように感じられました。

 

一応、ペイントで書いた世界一わかりやすい図解を置いておきます(*^^*)

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あ、あと3つの物語を繋げるための情報の出し方もかなり下手でした。

あんな唐突に作者の都合でその時点で出したい情報だけをを出すのも厳しかったです。物語が一区切りついて、ドヤ顔でアリスがカケラの関係性を解説しだすのも...

 

説教の内容自体はまぁ人それぞれ感じ入るものが違うでしょうから掘り下げませんが、特には響かなかったです。アリス自殺でENDならあるいは...

 

成長理由が理解不能なのに勝手に更生して自分の元から飛び立たないでほしいです。

 

・良かった点

 

なんか不満点ばっかり書いちゃったので、良かったところも挙げておきます。

 

まず、一番は演出です。文句なしです。

 

次は、頑張れなくなった人間のお話があったことです。

もう一度頑張れるようになるまでの過程がもう少し丁寧で共感できるものであったらそれだけで満足できただけに残念です。

 

最後は、ベスピオ編のB級感あふれるやりとりです。作中では唯一の清涼剤でした。

 

おわりです。