一二三四五六七

その時に感じたことを書きたいです。

『ChronoBox -クロノボックス-』感想

人を愛するだけではなく、『攻撃する』想像力があるという事を、私達は忘れてはならない

ー『                 』

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『ChronoBox -クロノボックス-』(2017-05-26)

・ ブランド: NO BRAND

・原画:長浜めぐみ

・シナリオ:桜庭丸男

・音楽:Team-OZ

・ジャンル:失った記憶を取り戻してはいけないADV 

・プレイ時間目安:13~15時間

 

公式サイト

nobrandxxx.com

 

 

前半は、ネタバレ無しで、この作品のどこが魅力的だったかなどについて書いていきます。

本作は、ネタバレを知ってしまうと十全には楽しめなくなってしまう作品だと思うので、未プレイの方は極力踏まないようにしたほうが良いかもしれないです...

 

後半は、ネタバレ有りで、自分がこの作品のどこが好きだったかとプレイしていて気がついた点などを書いていきます。

 

あらすじ

―大海に浮かぶ小さな孤島【天使島】

そこに住まう若者達の中に、期招来那由太(きまねき なゆた)はいた

彼の通う【EDEN】に流れる、当たり前の日常
友人達と、当然のように遊び、当然のように笑う日常
そんな日々は、たった一つの黒い箱と、たった一人の黒い少女によって終止符を打たれる

きっと、大丈夫
忘れたままの方がいい
思い出してはいけない過去

EDENに集う天使のような仲間と、今日も日常を過ごす
少女が導く悪夢は、まだ終わらない―

屍ね――

目を背ける事の出来ない現実に、私たちは生きている。

決して覗いてはいけない記憶のブラックボックスが今開く――

狂った楽園へようこそ

 

 

 

この作品のどこが魅力的だったか

 

ChronoBox -クロノボックス- は面白い?

自分にとっては間違いなくYesだった。

グロ・リョナは苦手だったが、それを押してでもプレイする価値はあったし、クリアした後は本当に満足感があった。

一般的には伏線回収ゲーということになるだろうから、とりあえず上のあらすじやOPムービーを見て「良さそう!(*‘ω‘ *)」と思った人は、買ってもいいのではないだろうか?リョナ・グロ・残酷描写が結構あるので、そういうのが絶対に無理!という人は自己判断でお願いしたい。が、そういった部分も作品内容にきちんと組み込まれているので、少し苦手なくらいなら頑張ってプレイしてみてほしいという思いもある。

 

今年一番の作品である可能性やポテンシャルも感じるほどだったし(⚠2017/05/27現在)、同じように考えている人も多いのではないかと勝手に思っている。

こう言ってはなんだが、2017年新作エロゲは不作気味かな~という気がしていたので、そういう意味でもプレイできて良かった。

 

一番面白かった部分

早速この前半の趣旨を否定するようで恐縮だが、このゲームのどこが面白かったかをネタバレ無しで正確に説明するのことはとても難しい。というより、自分にとってはほぼ不可能である。

それは何故かと言うと、一番面白いと感じたのが「舞台・状況設定」と「その結末」であったからだ。

正に核心のど真ん中である以上、止むをえないだろう

これについては、ネタバレ有りの後半でバシバシ語っていければなと思う。

 

とりあえずここでは

きちんと伏線回収されるし、そこから見えてくる真相とその後の結末がよかった!

ということだけが伝わっていればそれでいいです。 

 

伏線が回収されるとは、特に序~中盤での1周目では意味の通らなかった文章が、オールクリアしてからだとほぼ全て意味が通じるようになっている、という意味である。また、そもそも1周目では伏線だと気付かなかったが2周目になって伏線だったことに気が付くということもかなり多くあり、かなり良かったと思う。

 

結末がよかったというのは、この物語の流れから考えられる結末としてこれ以上のものは無いだろう、と素直に思えた、くらいのことを意味している。

 

とはいえ、ほんの少しだけ前半でも触れてはいきたいので、エモバレ*1くらいは許容することにして書いていくことにしたい。

 

 おすすめポイントは?

<設定やプロットがよく練られている>

序盤でばら撒かれた、意味の繋がりが薄かった伏線が、中盤以降どんどん回収され組み合わさっていき、最後までノンストップで駆け抜けることが出来たほど作品に惹きこまれた。

それでいて、迎える「結末」もかなり好みだったので、プレイし終わった瞬間は本当に気持ちが充実感で満たされた。

 

< 細部まで力を入れて作り込まれている>

注意深く見なければ気が付かないような背景の細かいところや、ビジュアルノベルの特性を活かした種々の演出など、作品の細かな部分もかなり気合が入っていた。

そういったことの積み重ねがじわじわと質量を持ち、驚きや衝撃という形でプレイヤーに襲いかかってきたことが特に印象的であったし、見事だったなぁと思う。

 

作品全体が丁寧に、ある種の明確な意図を持って作られていたということもあり、総体としての完成度が高かったという意味でオススメできる。

 

また、公式サイトや、本編には出てこない要素を多く持つ体験版、意匠を凝らしたパッケージなど、作品内容以外の部分にも力を入れていたのも好きだった。

 

<グロ・リョナ等の残酷描写にもきちんと意味がある> 

端的にいうと、作中の残酷描写も作品内容にきちんと組み込まれており、この物語を描く上で必要不可欠なものであった、ということである。

これは、"グロ・リョナ物だからヒロインが(特に理由もなく)ひどいことされます"、というのとは明確に異なっている。

 

"18禁でしか出来ない"、というわけでは必ずしも無いかもしれないが、"18禁だからこそ出来た"部分があるのは疑いのないことであり、そういう意味でもよかった。

 

<(個人的には)好きなえっちシーンがあった>

卑語無修正であり、絵も美麗でそこそこの人には受ける気がします。下品な感じが個人的には好きなので、そういう趣向が好みなら結構アリかな~と。

逆に、グロ・リョナ系のしーんは苦手なので全然無理でした。

割りと濃い玉舐めがあったので、それが一番のお気に入りです(●´ω`●)

 

「ちんちんんんっ♪ちんちんんんんっ♪おひっ!?
 おうっ、おおっ♪ちんちんきもちーっ、ちんこーっ♪
 勃起ちんこーっ♪おほおっ、おっほほっほおぅっ♪」

 

♡があれば更に高評価でした。

ブリブリ勃起のおちんちん♡

 

<霍ちゃんが可愛い♡>

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プレイしてみれば彼女の可愛さが分かります。

暗く厳しい展開が続く中、このおバカ系娘であるところの霍ちゃんが登場すると、まさに空気が一変するのです。この作品に轟き響く、まさに一服の清涼剤でした。

CVが唯香さんだったのも、ばっちしでしたね。

 

にわかわにわかわ~~~♡

 

(自分にとっては)ここが少し微妙だった

<作中の情報からすべての謎が解るわけではない>

俗に言う考察するのが好きな方々によって、この部分にはある程度説明が付くのかもしれない。

が、伏線が全て回収されるわけではなく、作中の情報からは絶対に判別できないだろうという部分もあるので、気になる人はモヤモヤが残ったままになるかもしれない。

 

<エロ・グロ・リョナが本当に無理>

本当に無理であるのなら、悪いことは言わないのでプレイするのは止めたほうが良いです。恐らく、刺激が強すぎます。君子危うきに近寄らず。

 

<制作陣のSNSでの一部の言動がちょっと...>

『ChronoBox -クロノボックス-』は確かに良い作品であったと思うが、その作品の製作陣も良かったと言われると、必ずしも肯定はできないように思う。

作品それ自体と製作者は、違う。悲しいことではあるが世の常である。

発売前に自らでひたすらハードルを上げたり等していたことについて、どうかなぁ...と思う部分も少しあった。確かに良い作品が出来たという自信の現れだったとは思うが...

製作者のことはあまりに気にしないようにするのが一番なのだろう。

今まで見ていなかった人は、見ないようにするのが良いのかもしれません。

 

 

 結局、どうなの?

『ChronoBox -クロノボックス-』は、興味を持った人にはほぼ確実にオススメできる作品だと思う。

公式サイトやあらすじやOPムービー等を見て気になった人は、買ってプレイしても損はしないのではないだろうか。

2017年上半期エロゲーの中では、客観的に見ても上位に入るはずである。

DL版もあるが、一番オススメするのは初回パッケージ版だ。

コンプ後は特徴的な四角のパッケージを手元に置いておきたくなる*2し、初回パケ版のみ少し追加要素もあるからだ。

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内容やパッケージに少しでもそそられる人は、是非パッケージ版を購入してプレイしてみてください。興味を持った人なら、損することはないと思います!

 

 続きからは、ネタバレ有りで、この作品のどこが好きだったのかと、プレイしていて気がついた点などを書いていく。

 

 

*1:内容をそのままバラす"ネタバレ"ではなく、それについてなんとな~く情報が漏れ伝わってくるかもしれないくらいの意味

*2:実際、自分はコンプ後に新品をもう一つ買いに走った。

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『SeaBed』感想

例えば貴方が居なくなっても、私はずっと貴方のことを考えていて、貴方もずっとそこにいるのよ 

ー水野 佐知子/『SeaBed』

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 『SeaBed』(2016-01-25)

ブランド:paleontology(同人)

原画:hide38

シナリオ:Akira,hide38

 

公式サイト:

middle-tail.sakura.ne.jp

 

 DL版販売サイト:

www.dlsite.com

 

 

[目次]

重大なネタバレは「3節.舞台設定・登場人物・Tips」以降にしかないので、『SeaBed』が気になるけど情報がほしいという方は「2節.この作品のどこが魅力的だったか」まで読んでいただけると幸いです。

  • 物語
  • この作品のどこが魅力的だったか
  • 舞台設定・登場人物・Tips
  • 感想

 

物語

 

リビングで亡霊を見た。
それを見るのは慣れたもので、私は気にせずに夕食を作って食べる。
亡霊は私の作った卵焼きを食べて美味しいと言った。
私は彼女の話を聞きながら、彼女と暮らした日々のことを考えた。

彼女は学生時代の私に「私達が一緒にいるために必要なものはなにか?」、と尋ねた。

 

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               誰にも頼らずに稼ぐための小さな職場。

 

 

 

 

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なんでも自由にできる静かなマンション。

 

 

と、私は答えた。

 

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80年代後半。
経済絶頂の最中、ふたりで始めたデザイン事務所の業績は上向いていた。
学生時代にふたりで話しをしていた南の島、中世の街、西海岸。
行きたい場所へ行って、見たいものを見て回った。

 

 

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       私は広いリビングでどうしてこうなったかを考えてみた。
       ふたりが殆ど無敵だった時代は過ぎていた。

       

       私はあの頃のようになんでも出来る気はしなくなっている。
       この世界はとても複雑になって、ことをなすのは難しくなった。
       以前にふたりが使っていたルールブックは無効になり

       築いた城は崩れ去っていた。

 

「あなたと一緒にいるために必要なものはなに?」、と亡霊に聞いてみる。

 

       今までにない新しい場所を準備する必要がある。

       新しい場所は誰にも壊せない。誰の手も届かないような場所にしよう。

       そして私は誰にも気づかれないように静かにことを運ぶ。
       深く、深く、誰にも見つからないような場所で。

 

 

この作品のどこが魅力的だったか

『SeaBed』は面白い?

 結論から言うと、この作品はとても好きだったし、自分にとっては面白かった。

合う人には間違いなく合う感じがするので、上の物語紹介にピンときたり、少しでも興味を持ったのなら是非プレイしてみてほしい。650円と12-13時間ばかりを費やして得られるものとしては破格のものがあるかと思う。とりあえず体験版もあるので、そこでテキストが合うかどうかだけでも確かめてみてほしい。

ともかく、この作品は自分でプレイしてみることが大事だと思う。なぜなら、頭の中で色々と組み立てたり、気が付いたりする面白さも確かにあるからだ。そして、そのための断片はあちこちに散りばめられている。2周目をプレイして初めて発見する事柄も多かった。

しかし、そのような面白さはこの作品の一端に過ぎないだろう。

 

説明しにくい面白さ

 多くの人が感想でも書きあぐねているように、この作品のどこが面白かったのかを正確に説明することは難しい。書こうとするとどうしても、作品全体の雰囲気や空気感が良いだとか、事実を淡々と述べていく描写が独特だとかになってしまう。その内容自体は正しいことではあるのだが、やはり如何ともしがたい。

そこでこの記事では、もう一歩立ち入って、一番魅力的だと思った部分をなんとか説明してみたいと思う。

 

積み重ねた年月の重さ

 まず、熱く滾る戦闘シーンがあるとか、最後に怒涛の伏線回収があるとか、ヒロインが可愛くて頭を空っぽにしても楽しめるとか、そういった分かりやすい面白さはこの作品にはない。「百合ミステリー」と銘打たれてはいるが、"ミステリー"要素は「なにか判然としない謎があって、なんとなくは判明する」くらいの意味である。普通"ミステリー"と言われて想像するものとは異なっているので、少し注意しておく必要がある。

 となると、一番の面白さといえば、やはり残った"百合"*1の部分になるのだろう。

佐知子と貴呼が一緒に積み重ねてきた23年間という重みをプレイヤーがダイレクトに受け止めざるを得ないこと、それがこの作品の一番の魅力であり、面白く感じた要因であると私は考える。

 

降りかかる出来事についてだけ考えてはいない

 『SeaBed』は、日常生活やその中でふと考えたり気が付いたりすることをかなりの文量で淡々と描写し、それにより日常を積み重ねている。そこに起伏はあまりなく、それ故「単調」と表されることも多い。

これは主人公である佐知子の客観的な性格に依るところが非常に大きい。意図的に単調にしているわけではない...とは思う。とはいえ、そのような落ち着いたタッチに膨大な文量を割き、取り留めもない日常を描写することで達成されている重大なことがある。

 それは、佐知子たちがリアルなキャラクターとして地に足のついた存在になっているということだ。

少し極端なことを言えば、物語の中では往々にして、作中で起こった出来事に対しての反応や感情だけしか描写されないし、基本的に物事は起こるべくして起こっている。物語を動かすために出来事が起こるのは当然のことであり、登場人物はいつも自身に降りかかっている困難について考え続けている*2

しかしながら、実際の人間は、フィクションの登場人物がするように、常に意味のある出来事が降りかかったり、そのことについてだけ考えているわけではない。むしろ、意味のあるような出来事は日常生活では稀だろう。昨日とあまり変わらない今日を過ごす中で、ふと外の景色を見て思うことであったり、ふとした折に思いついた物事について考えたりするのである。それが良くも悪くも現実に近いということなのだと思う。

 先程も述べたように、『SeaBed』は後者の描写にかなりのウェイトを置いている。それも、事実を淡々と連ねていくという落ち着いたものによってだ。それにより、この作品独特の雰囲気と、普通の物語の登場人物とは質の異なる"リアルさ"が醸し出されている。また、ぼやかしたような加工をした写真を背景として使用していたり、種々の細かい生活音までSEとして表現していることで、視覚的・聴覚的にも彼女たちの生活が鮮明に想起された。

そういった日常描写の積み重ねこそが、佐知子たちが地に足のついた存在であると我々に強く実感させている。しかも、その描写は佐知子や貴呼が楽しかった思い出を振り返るという形をとり二人が5歳から28歳に至るまでの23年間にも及ぶ。プレイヤーは、佐知子と貴呼が共に過ごしてきた年月の長さや重さに思いを馳せ、互いがいかに大切な存在だったかを否が応でも実感せざるを得ない。このようにして、佐知子と貴呼の関係性の深さがダイレクトに伝わってくるのである。

そして、「あぁ、佐知子は貴呼の為ならば"あんなこと"もきっと出来てしまうんだろうなぁ。」と素直に思わせる。思ってしまう。それこそが、この作品の一番の魅力にほかならないのだろう。

 

その他魅力的だったところ

・最初の方でも言ったように、本作は「百合ミステリー」ではあるが、普通"ミステリー"と聞いて期待できるような面白さがあるわけではない。とはいえ、"ミステリー要素"がこの作品に必要不可欠なものであったことは強調しておきたい。なぜなら、それが物語にきちんと組み込まれ、先述の佐知子と貴呼の関係性の深さを更に引き立てているからだ。そして、その要素が提示する世界観もとても魅力的であり、非常に良かった。

 

・作品全体を通じて80-90年代の空気感が想起され*3、そこからどことなく漂うノスタルジックな雰囲気も良かった。現代では使わないような古いものも登場しており、設定した年代の雰囲気をしっかりと伝えているように思う。

 

・90枚以上ものスチルが要所要所でしっかりと使われており、大切な場面を一層引き立てたり、間延びしがちな全体をぎゅっと引き締めたりしていた。丁寧に選定されたフリーのBGMや背景も全体の雰囲気にとてもよく合っており、終始作品世界に誘われるようだった。ビジュアルノベルとして非常に丁寧に作られていた印象で、完成度も高かったように思う。この世界にずっと浸っていたいと素直に思わされるような出来だった。

 

・どの登場人物も魅力的。佐知子と貴呼が一番好き。

・ 旅行をする。海外の色々なところに楽しそうに旅行をする。すき。

 

 

以下、致命的なネタバレがあるため、プレイ予定がある人は絶対に見ないで下さい。

 

 

*1:百合について全く造詣が深くないので、言葉の指すニュアンスが異なっているかもしれない。

*2:物語を動かすような出来事以外があまり描写されない以上、少なくともプレイヤーからはそのように見えてしまう部分もあるだろう。

*3:その年代の生活は知らないのに想起されたのも凄いところだと思う。

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『SWAN SONG』感想

「醜くても、愚かでも、誰だって人間は素晴らしいです。幸福じゃなくっても、間違いだらけだとしても、人の一生は素晴らしいです。」

 

ー尼子司/『SWAN SONG

 

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SWAN SONG』(2005-07-29)

ブランド:Le.Chocolat

シナリオ:瀬戸口廉也

公式サイト:[ Le.Chocolat ] - SWAN SONG

 

かなり的を絞った感想になるため、想定する読者も既プレイ者としておく。

故に、ネタバレは気にせずバンバン突っ込んでいくが、予めご了承いただきたい。

また、宗教上の理由でTrue√については一切触れない。

 

主に「尼子司はどうして今際の際に人を肯定したのか」について書く。

あろえの存在意義や、"SWAN SONG"が指すものについても少し触れる。

 

 

人は創発である

 ~あらすじ~
物語はクリスマス・イヴの晩、大地震が発生したところから始まる。主人公である尼子司を含め、何とかして生き延びた若者6人が倒壊を免れた教会に集う。

援助がいつまで経っても訪れない為、外部と接触しようと6人は移動を開始し、遂に自分たち以外の生存者が避難している学校に辿り着く。
これで一安心……していたのだが、その安心も長くは続かなかった。いつまで経っても援助は訪れず、外部との通信すらいまだに出来ない。
徐々に環境は逼迫していき、人間関係に軋轢が生まれていく。そして……

 

Normal√では、様々なすれ違いの末に、避難所である学校内でも分裂が起き、お互いに殺戮し合ってしまう。不幸にも左手を失った尼子司は、満身創痍ながらも生き延び、昔かつての仲間たちと出会った教会に辿り着く。そして、最期の瞬間にあろえが復元した継ぎ接ぎのキリスト像を見上げながら人生を賛美し、命を引き取るのであった。 

 

まずは、終盤において教会へ向かう途中のシーン。

尼子司は瀕死状態であり、意識が朦朧とし始める。

このまま僕の生物としての機能はどんどん失われていくのだろう。少しずつ、僕を構成していたものたちは、僕を形作ることをやめて、元々そうであったようにただの物質へ帰ってゆくのだ。そして最終的に僕は消えてなくなる。二十年ちょっと前に何かのいたずらで組み上げられた僕は、またバラバラに分解され世界に還元されるのだ。
なんだか寂しいな、と思った。
そして、無性に昔のことが思い出された。

 そして過去の回想に入る。昔のこととは、天才指揮者である父のオーケストラの演奏を聴いた時の思い出話のことだ。

素晴らしかった。
(中略)
他の人はどう感じたのかはわからない。でも、まぎれもなくそれは最高の演奏だった。どうして人間はこんな演奏が出来るのだろう。
(中略)
父は今日の公演を葬式だと言っていたが確かに何かが死んだようなそんな気分だった。僕はどうしてそう感じてしまうのだろうか。
オーケストラを構成する演奏者。彼らはそれぞれ別の場所に行くだけで、誰一人いなくなるわけではない。彼らに会おうと思えばその機会はあるだろうし、それは何でもないことなのだ。どう考えても、形ある何かが減ったわけでも、失われたわけでもない。なのに、妙に寂しいのはなんでだろう。誰かと別れてしまうような、変な気持ちがするのはなんでだろう。オーケストラが死ぬ。それはどういうことなのだろう。もう同じ演奏を聴くことが出来ないって、それだけじゃない、もっと深い意味があるような気がする。
その答えはきっと、今日の素晴らしい演奏のなかにあるのだ。彼らは本当に素晴らしかった。
(中略)
少年時代のあの気分と、いまの僕の気分がとても良く似ている。

 

昔は、「オーケストラ」という有機的な集合体がバラバラになって「人」という要素に還元されてしまうことが、寂しかった。今は、「自分」という有機的な集合体がバラバラになって「ただの物質」という要素に還元されてしまうことが、寂しい。

 

そして赤字太線部には、より直接的な感情が表れている。

司にとって、何かが有機的に繋がっていることは、素晴らしく、最高なことなのだ。

 だから、有機的な連なりである全体がその構成要素に還元されてしまうことを、寂しく思うのである。

 

 

 そして、司と柚香は遂に教会に辿り着く。そこにはあろえが破片を接着剤でくっつけて再現したキリスト像の姿があった。しかし、あろえはコンクリートの下敷きになっていて、既に息絶えていた。柚香はそれを見て泣き崩れ、そして心が決壊する。

「こんな世界に私は生き残ってしまって、みんなが大事にしていた貴重な生命を、私なんかが無事のまま持たされて、だから大事に生きていかなくちゃいけないって、私にはその義務があるんだって、それはわかるんです。でも私には、ここで生きることの意味が、どうしてもわからないんです。生きていることが、喜べないんです。」

 

佐々木柚香/『SWAN SONG

 自分の生きている意味が分からないと嘆く柚香に対して、司はこう返す。

「醜くても、愚かでも、誰だって人間は素晴らしいです。幸福じゃなくっても、間違いだらけだとしても、人の一生は素晴らしいです」

 人は生きているだけで素晴らしい。上でも述べた通り、「ただの物質」が有機的に組み合わさって「人」が出来るということは、それだけで素晴らしいことなのだ。 

 

全体とは、部分の総和以上のなにかである。全体とは全体であるというそのことだけで素晴らしい。勿論、人も。

人は創発である。だから、素晴らしい。

 創発(そうはつ、英語:emergence);部分の性質の単純な総和にとどまらない性質が、全体として現れること。

 

そして、司は「あろえが手ずから再現したキリスト像を立てよう」と柚香に提案する。

「見てくださいよ、この像を。あちこち歪んでますよね。なんだか不気味でさえあります」
「でも僕、これは好きだな。宗教的なものって、どっちかと言うと嫌いなんですけど、でもこれは悪くないです。やっぱりそれは、あろえが手で一つ一つ貼り付けたからだと思うんですよね。綺麗ではないけれど、すごく、いいと思うな」

 神の子なんか関係ない。これは、いまはもういない僕の友達がその小さな両手で丹念に一つ一つ組み上げた手あかのついた石のかたまりだ。僕は誇らしくてしかたがない。だから、絶対に立ててやる。そして、このやたらにまぶしすぎる太陽に見せつけてやるんだ。
僕たちは何があっても決して負けたりはしないって。

なぜ司が突然キリスト像を立てようとしたのか、初めはよく分からなかった。

しかし、今なら分かる気がする。

恐らく、「破片」という要素が有機的に組み上げられることで出来た「像」が、司にとっては素晴らしく、最高だったのだろう。

 

 

キリスト像を立てた後、司は仰向けに倒れる。ピアニストである司は恋人の柚香を泣かせたくないと、最期にこんな事を思うのである。

ピアノさえ上手に弾けたなら、僕は無敵なんだ。何もかもうまくゆく。泣いている柚香にも、あのピアノを聴かせてあげたい。可哀想な柚香のために、最高のピアノを弾いてあげたい。
(中略)
いま僕はとても良い気分だ。こういうときは、最高の演奏が出来るって知ってるんだ。最高の演奏っていうのは、心のなかにしかないはずの美しいものがたくさん外にあふれ出て、そこらじゅうの何もかもを輝かせて、それは本当に、最高で、とんでもなく素晴らしいものなんだ。

 これは独りよがりな私の想像かもしれないが、やはり下線部から”繋がり”を読み取れるように思う。

司にとってピアノを演奏することは、「自分」という要素を「周囲の人間」と繋ぎ合わせることが出来る行為だったのだろう。

人は人であるだけで素晴らしい。そんな「人」同士を、ピアノ演奏という自分の行為でさらに「周囲」と繋げられることは、本当に、最高で、とんでもなく素晴らしいことだったのだ。

 

 

 

 司が最期の時に肯定したのは、人である。

『CARNIVAL』*1で学がしたような世界への肯定ではない。

『キラ☆キラ』鹿之助√で描かれた人生への肯定*2とも少し違う。

SWAN SONG』の司は、全体としての、創発である人そのものを肯定していたのだと思う。

 

私は最初、障碍者である"あろえ"の存在意義が全くわからなかった。

だが、今までの流れを踏まえると、その一端は分かるように思う。

つまり、創発であるという一点において、障碍者である”あろえ”は普通の人と全く同じであり、「人は人であるだけで素晴らしい」という主張をあろえに適用することによって、それを強調する効果があったように感じている。

 

 最後に、タイトルでもある"SWAN SONG"が何を指していたかについても少し触れておきたい。

SWAN SONGとは名前の通り「白鳥の歌」である。これは「白鳥は死ぬ前にもっとも美しい声で歌を歌う」という伝説に基づいて、このような名前を付けているのだろう。

これを踏まえると、SWAN SONGとは「死に際のあろえが手ずから組み立てたキリスト像」を指しているように思う。

司にとって、創発であるものは素晴らしかった。「破片」という要素が有機的に組み上げられた「像」は、すごく、いいものであった。これは「ただの物質」が有機的に組み合わさり「人」が出来るということ、つまり、人が人であることが素晴らしい、という主張に通じる。

今際の際に、障碍者あろえが自らの手で一つ一つ貼り付け復元したキリスト像。そんな"SWAN SONG"を司は賛美し太陽に見せつけた。

それは死に際の尼子司が残した、最大級の肯いであり抗いだった。

 

*1:ここでは小説版での最期を指す

*2:『キラ☆キラ』鹿之助√に人生への肯定を描く部分があったかは、各々に考えがあるとは思う。しかしながら、今回は並列列挙の見栄え上こうさせて頂いた。あくまで見栄え上そうしたのであり、私が必ずしもそう捉えているわけではないことはご承知おき願いたい。

『魔女こいにっき』『魔女こいにっき Dragon×Caravan』感想

あるところに二人の夫婦がいた。

美しい男と美しい少女は自然な成りゆきと

いくつかの偶然を交えながら恋に落ちます。

互いが互いを好きで。

それだけで世界の何もかもは、華やぎ、優しくなり、

まるでおとぎ話のような時間が二人に訪れる。

この世にこれ以上はないというほどの美しい瞬間に、二人は永遠を誓う。

おとぎ話ならここでめでたしめでたしで終わるだろう。

けれど、人生はそうはいかない。

いつか少女は歳をとり。おばさんとなり、皺ができ。

生活の疲れはかつての美しさを蝕み、貧乏は彼女の心を僻ませ。

夫とのすれ違いは彼女の愚痴を多くする。

一方の夫も、頭は薄くなり。腹は出て。

いつでもどこか遠くを見ていた夢見がちな瞳は

ただ、日々の暮らしの往復を映すばかり。

あれほどみずみずしくお互いに満ちていた想いはどこかに消え失せて。

二人はほとんど話すことすらなくなりました。

いつか見た、あの美しいおとぎ話の面影すら、そこにはない。

物語はどこにいったのか?

 

-『魔女こいにっき Dragon×Caravan』プロローグ

 

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『魔女こいにっき』

ブランド:Qoo brand

企画・原案:新島夕

公式サイト:Qoobrand > 「魔女こいにっき」Official Website

 

 本作品『魔女こいにっき Dragon×Caravan』(PS Vita「魔女こいにっき Dragon×Caravan」公式サイト | ENTERGRAM)はそのCS移植版であり、

・「失われた物語」(氷室百合視点の物語)

・「灼熱の王子と小さな竜」ルート

が追加シナリオの主要な部分となっている。また、原作ヒロインにもいくつか新規エピソードが追加されている。

 

Q.無印と「Dragon×Caravan」のどちらをプレイすればいいの?

A.無印→Dragon×Caravan」の順にどちらもプレイすることが望ましいです。

無印は18禁なのでえっちシーンがあり、それは「魔女こいにっき」のとある解釈には欠かせないものだからです。

Dragon×Caravan」ではえっちシーンは全カットですが、その代わり追加シナリオがあります。

「失われた物語」はありすの友達である氷室百合の話で、読む価値はあったと思うくらいにはよかったです。

「灼熱の王子と小さな竜」は、無印でのSECRET√(后・アリスの話)後のお話です。CS版をわざわざプレイする大きな理由になるとは思いますが、正直賛否が分かれそうです。私にとっては微妙であったので、あまり積極的には勧められないですね。

 

 

 以下、ネタバレを含みます。

想定する読者は無印or「Dragon×Caravan」の既プレイ者、もしくはネタバレを気にしない方です。

 

全5節で14000文字強になります。

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2016 9月新作の感想 ~千の刃濤、桃花染の皇姫・カノジョ*ステップなど~

 この世には2種類の人間がいます。

「今月の新作何買った?」と聞かれる人と「今月の新作何買わなかった?」と聞かれる人です。

だいたい3:97くらいなんじゃないですかね。知らないですけど。

 

 

さて、もう10月も半ばになってしまいました。

 

なので新鮮でもなんでもないのですが、プレイした作品の感想などを書いていきます。

プレイしたのは以下の6作品です。

 

『千の刃濤、桃花染の皇姫  』(AUGUST)

『カノジョ*ステップ』 (SMEE)

『夏の魔女のパレード 』(Wonder Fool) 

『JD温泉。 ~エロエロダイナマイト女子大生との温泉生活 ♨~ 』(アトリエかぐや

『大迷宮&大迷惑 -GREAT EDGES IN THE ABYSS- 』(Liar Soft(ビジネスパートナー)) 

D.C.III With You ~ダ・カーポIII ウィズユー~』(CIRCUS) 

 

ネタバレはあります。

 

『千の刃濤、桃花染の皇姫  』(AUGUST)

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 グラフィックがとても美麗で圧巻でした。

シナリオは...まぁ、うん。めちゃくちゃ悪いってことは無いと思います。

作品全体としてのクオリティは高かったです。お金かかってますね~

 

カッコイイOP映像が流れる中、突然「ういにゃす•おっちょこバニー」みたいな文字列が出てくるのはなんだかなと思わないでもないです。

 

キャラクターは子柚ちゃん(CV:羽鳥いちさん!)と睦美さんが好きです♡

 

自分の頭のなかだと、未だ根の国では千の波濤が絶えることなく此方の国では年中桃の花が絢爛に舞い誇っています。ちなみに、ユースティアの点数を上げました。

 

メインヒロインではエルザちゃんが一番ですね。声優補正。

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『カノジョ*ステップ』 (SMEE)

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絵以外は割といつものSMEEでした。

今作も良い意味でSMEEらしかった部分もあれば、悪い部分もありました。

不快なシーンや設定や性格の整合性など悪い点がちょっといつもより目立ってたかな~と。

グラフィックは、立ち絵も含めなんでこうなっちゃったんでしょうね...

 

良い部分が100あれば悪い部分が50あった、みたいな感じです。

まぁその良い部分にとても良かったところがあるので、私にとっては魅力のある作品でした。

ヒロインが非常に可愛く感じられれば、他は割と何でもいいんです。

 

メインヒロインの"4人"は各々に魅力があり、付き合うという過程の中で見える様々な側面にはキュンキュンくる場面も多かったので満足しました(*´ω`*)

キャラクターとしてそれぞれのヒロインが立っている分、ヒロイン同士の絡みが共通パートでも殆ど無いのが残念でしたね(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

 

 

残りの1人のヒロインは、実は公式にも一切載ってない隠しヒロインなんですけど自虐がネタにならないレベルで酷くて、明らかにスリムで美少女なのに作中でしつこくデブでブスとか言われてもポカーンとなって終了しました。

 

ピュアコネよりはフレラバに近いので、SMEEが好きな人なら別に買っても大外れすることは無いと思います。

 

お気に入りは、椎名先輩と久遠後輩(*´ω`*)♡

 

 

③『夏の魔女のパレード 』(Wonder Fool) 

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柳ひとみさんと美月さん目当てで購入。

当然お二方のキャラはとても良かったです♡

キャロル(金髪)も、他ヒロイン√で主人公に振られて、突然ガチ切れして主人公をボッコボコに殴りだすシーンがお気に入りでした(*‘ω‘ *)

 

 

柳ひとみさんの妹キャラはこんな感じで

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実妹なら最強クラスのパワーがあるんですけど、世間では実は偽妹だったことで色々言われてるみたいですね。

 

私は”妹であること"に異常に執着しているわけでもなく、設定的にも赤の他人では無かったこともあり普通に耐えました。

 

実は設定では主人公が幼い頃に無意識に生み出した使い魔、ざっくり言えば実体化したイマジナリーフレンドなので、血縁的には主人公の筋と言えなくも無いからOKです。

 

 

 

全体的にシナリオは唐突な謎シリアスに加え、展開も掛け合いも特に面白くないんですが、CG(特に乳首)がかなりえっちで実用性も◎。シーンのテキストに「♥」が含まれてるのはやっぱシコ度がめちゃアガりますね。全作品で実装して欲しい♡

 

ルイスママ(実母・攻略不可)が抜群に可愛かったのでもうそれだけで最高でした

~(*‘ω‘ *)

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神。

 

 

④『JD温泉。 ~エロエロダイナマイト女子大生との温泉生活 ♨~ 』(アトリエかぐや)

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いつものアトリエかぐやのこのラインです。えっち。

 

『大迷宮&大迷惑 -GREAT EDGES IN THE ABYSS- 』(Liar Soft(ビジネスパートナー)) 

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ニコライト√最後にある取っ組み合いの姉妹喧嘩が一番好きでした。

 

自分には合わなかったというのが本音。

というかこれ序盤は希さんだけど中盤とか別人が書いてるんじゃ...

 

耳に残るOPが印象的。fullが早く聴きたいです。

 

D.C.III With You ~ダ・カーポIII ウィズユー~』(CIRCUS) 

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四季さんが攻略できて良かったです。

D.C.II Dearest Marriage ~ダ・カーポII~ ディアレストマリッジは神。

 

 

来月は何買いましょうかね。発売予定表を見るところからはじめます。

おわり。

『滅び朽ちる世界に追憶の花束を』感想

『滅び朽ちる世界に追憶の花束を(非18禁)(郷愁花屋(同人)) (2010-08-07)』コンプ

プレイ時間は35時間ほど。隠しサイト閲覧済み。

 

ネタバレ有りなので踏みたくない人は画像の下からは回避で。

 

というか、Twitterにブログ記事を投稿した際に序文あたりが表示されるやつでネタバレするのを回避するためになんか書かないといけないんですけど、これ何文字書けばいいんですかね?もういいですか?

 

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遺し、受け継ぎ、繋いでいく。一瞬の輝きと永遠。

 

前向きで積極的な人間賛歌がそこにはありました。

 

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<あらすじ>

全てを捨てる、覚悟を決めた。
地位も名誉も財産も………そして、大切な家族も。
全てを置き去りにして、この時代から去ることを決めた。


***

滅び朽ちる世界に追憶の花束を贈りましょう。
これは、いろいろな形に栄えたそれぞれの時代と、そこで生きる人々のお話。
そして自らの望みを叶えるために時空を超える旅に出た、愚かな男の物語。

長い歴史の流れから見ればほんの一瞬の生でしかない彼女たちは、それぞれの時代を果たしてどのように生きたのでしょう。
それぞれの時代に何を思い、何を成そうとしたのでしょう。
花のように、人はたった一度きりの美しい花を、それぞれの生の中で咲かせるのだと思うのです。
今回はそんな、生命力に満ちた物語をお話しましょう。

ようこそ、郷愁花屋へ。

 

(公式サイトより)

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

8つの花とそれを冠する8つの物語。

どれも単体でお話として成立していてそれだけで結構面白いのですが、それらが徐々に繋がりを見せはじめてゆき...

という感じのお話です。

ボイスは無いのですが、作品全体の雰囲気にぴったりと合う緩やかな音楽や優しいタッチの絵が好きでした。

プレイしながら「あーだろうか、こーだろうか」と人物間や物語間の関係に考えを巡らせるのも楽しかったですね。

 

元の設定がきちんと考えられていることが伝わってきたので、読んでいて安心感がありました(*´ω`*)

 

 さて、8つの物語それぞれの感想でも書いていきたいと思います。

 

プレイ順

circular→dear→innocent→melancholy→vivid→lost→abandoned→forever

好きな順

forever>vivid>abandoned>melancholy>dear>innocent>>lost>circular

紅&沙乎華が一番好きでした。

 

 

 

 

<「circular」:~巡り来る運命~>

冠する花は「蓮」、テーマは「救済」

救いを願った少年のお話。

 

―――清掃の仕事をしながら生計を立てている少年大悟《だいご》の住む街の美術館に展示されることになった、奇跡を呼ぶ力を持つという黄金の冠。
大悟はしかし、ひょんなことから原価十何億ともいわれるその冠を、盗んでしまいます。
彼が追われて逃げ延びた先は、どことも分からない林の中。
彼はそこで、マゼンタと名乗る、不思議な少女に出会います。

池の上に突如として現れた彼女は、幽霊なのか池の女神なのか。
淀んだ現世は泥の沼のように、慈悲深い彼女は蓮の花のように、罪にまみれた少年に彼女が教えるのは…。

 

初めにやったからなのか、宗教とか唐突に出てくるので世界に追いつけないまま終わってしまって、ぶっちゃけあんまり面白くなかったです。

なので話したいことも無いです。

 

メモでも貼っときます。

 

・remembrance mode「裏切り」マゼンタを裏切った姉妹=ユタ、ユラ

これは背教者ユダからきているのか。

(ユタが裏切った本人であり、ラは線2つでダになる。)

(がしかし、これだと"ユニ"の方がそれらしい)

 

・remembrance modeで年齢と合ってない。16年以上前だから5歳とかで麻薬取引って...←これは隠しサイトで作者も突っ込んでいたのでOK

 

 

 

 

<「dear」:~親愛なる世界~>

冠する花は「蒲公英」、テーマは「追憶」

親愛なる彼へ手紙を出した彼女のお話。

 

―――30世紀末。世界は、終わりを迎えるらしい。
そんな終末思想が支配する時代に生まれた、未黄《ミオウ》。
次第に大気の温度を下げていく地球で生きられなくなった人々は、コールドスリープすることで未来に希望を託すことにしました。
人類の長い冬の時代が訪れたのです。

子供を試験管で生み出すような時代にうんざりしていた彼女は、世界の終わりを望みます。
しかしここには、たくさんの愛の記憶があったのです…。

 

風船をたんぽぽの綿毛に見立て、自分の生きた記憶を飛ばす。

最愛なる世界に記録を遺し、伝える。

あのシーンが印象に残っています。

 

伝えるための記録というのが意味を成すためには、時間の不可逆性とそれを受け取る側の存在可能性が必要だと思います。まぁ取り留めもなくそんなことを考えていました。

 

ーーー彼女の意志の、その受け取り手は

 

 

 

 

<「innocent」:~純真な悪~>

冠する花は「百合」、テーマは「正義」

正義の味方になりたかった子供のお話。

 

―――人類が宇宙へと足を伸ばし月に設立した裁判所、通称“アテネの学堂”。
月という何にも属さないその土地で、平等の名のもとに世界中のあらゆる討論がそこでは行われています。
そして、いくら時代を経ても答えの出ない討論がそこにはあります。
純真な悪と呼ばれるその少女闇《ヤミ》と、正義と悪についての討論を交わすために、今日も挑戦者が現れるのです。

子供の頃、正義の味方になろうと誓った百合《ゆり》と玄兎《げんと》。
異なる形でそれぞれの正義を貫く二人は…。

 

 正義とは何か。悪とは何か。

嘘を付くと即座にバレてしまう、そんな装置がある月でのお話。

 

”正義の反対は別の正義”なんてよく言いますけど、結局のところを己を貫くしかないんですよ。Beleve your Justiceですね。

パワポケシリーズもバルスカも大好きです。

 

この物語も内容自体は特に感じ入るところがなかったので、何も書くことはないんですが、マゼンタ様の過去が垣間見えるtipsがあってそういう意味では面白かったです。

 

~名前とかについて~

・1章 審議記録員No.46187・・・読みが"白い花"

 

・玄兎 

玄=クロとも読める /百合の白との対比

げんと・・・"月にいるうさぎ"の意 

月は百合(白)と玄兎(黒)に割り当てられた惑星

 

「玄の黒」と「月のうさぎ」の2つの意味を絡めている名付けが上手いと感じました。 

 

 

 

<「melancholy」:~憂鬱な浮世~>

 冠する花は「紫陽花」、テーマは「決められた未来への憂鬱」

この世の憂鬱を嘆いた少女のお話。

 

―――梅雨だというのに雨が降らないことに憂鬱を感じる、紫亜《しあ》。
そんな彼女の元にある日、綾小路清四郎(せいしろう)という少年が尋ねにやってきます。
彼は紫亜の祖母である蒼子(そうこ)の旧友、清二郎(せいじろう)の孫。
その清二郎が亡くなったことを、清四郎は蒼子に知らせに来たのでした。
二人は“梅雨の日の憂鬱に負けない会”を創設した仲だという話ですが…。

清二郎の遺書の謎を解く鍵は、蒼子の思い出の中。
蒼子と紫亜、現代と未来の女子高生、二人の感じる憂鬱とは…。

 

思わず胸キュンしちゃうような、甘酸っぱくてどこか懐かしさを感じる恋物語

物語としては一番独立しているお話なのですが、読んでいて純粋によかったな~と。

梅雨の時期から晴れ上がるときの爽快感と、青空に感じる未来への希望。

過去の世代からその先の世代へのバトンタッチという構成が映えていて美しかったです。

 

・紫亜は逆読み=あじ→あし→しあ→紫亜=薄紫 は紫陽花の色

 

「vivid」:~鮮やかな紅

冠する花は「彼岸花」、テーマは「人間らしく生きる」

人間らしく生きたかった少女のお話

 

―――超能力の素質がある者として抜擢され、その能力を覚醒させるために殺し合いをしなければならなくなった紅《くれない》と沙乎華《さやか》。
支給されたナイフを使って、一週間以内に二人のうちどちらかは死ななければなりません。
赤の他人だった二人は、しかし互いに似通った部分を見つけます。
人間らしさを欠いている紅に、沙乎華は、やっと自分と分かり合える人と巡り会えた気がしたのです。

あらゆるものと繋がりを感じられない彼女らにとって、自身をこの世に繋ぎ止めるのは“生きている”ことを証明する鮮やかな赤色だけ。
まるで彼岸から此岸を眺めているかのように生きてきた彼女が、そのナイフで切り裂くのは…。

 

厨二病的な開幕からよもやこのようなお話になるなんて...

いい意味で期待を裏切られました。

紅&沙乎華のコンビが最高でしたね。いや、別に”百合”が好きとかそういうわけではないんですけど、二人の関係性がとても自分好みでした。

紅だけでもめちゃくちゃ好みで、作中で一番好きなキャラですね。かなり感情移入して読んでました。

 

foreverに次いで大事なキャラクター群の登場する物語だったと思います。

 

 

 

<「lost」:~失われた記憶~>

冠する花は「忘れな草」、テーマは「滅び」

臆病者の男の子のお話。

 

―――ユグドラシル”と呼ばれる空中の学園都市の生徒、臆《オク》。
そこでは自然の真理に迫るための数々の研究が行われていて、臆自身も自分の研究に励んでいました。
当り前に続いていく日常…けれど彼はそんな日常に少しずつ疑問を感じ始めます。
自分は何かとても重大なことを忘れていると。

あまりにも辛い出来事を、人は自分を守るために忘れてしまいます。
忘れないでという思いが込められた小さな青い花を眺めながら、彼は…。

 

忘れな草花言葉の通り、「私を忘れないで」というお話です。

臆、幾、翠という名前は自身のクローン番号である09,19,41が由来であり、当時クローンが個性を求め数字ではなく名前を付けて呼ぶことを好んだ、という設定がこの時代の世界観をよく表しているようで好きでした。

 

物語自体は一番微妙だったのですが、あるパスワードを入れることでギリギリ耐えた気がしないでもないです。これだけ短いとループものは厳しいですね。

 

 

 

<「abandoned」:~見捨てられた街~>

冠する花は「向日葵」、テーマは「生きるということ」

娘を失った父親のお話。

 

―――“ジャンクタウン”と呼ばれる郊外のスラム街に、貴重な金属を探すべくやってきた陽炎《かげろう》。
そこは社会的に見捨てられた者が集う街であり、治安がとても悪いことで有名でした。
そんな街で彼は、ブルーという少女に出会います。
殺伐としたその街の中でも明るい笑顔を見せる彼女に、彼は亡き娘の面影を重ねます。

死んだはずの娘にどことなく似ている、少女。
ガラクタだらけのその街で、灼熱の太陽が照りつけるその場所で、落日に向かい、首を傾ける太陽の花…。

 

いつまでも生きているということは死んでいることと変わらない。例えクローンだったとしても、私は他の何者でもなく私である。

私が私として生きた証に、自らを壊す。

 

終盤のシーンで、娘のクローンであることを知られたブルーが陽炎のことを「オジサン」と呼んだセリフが印象に残っています。

 

「お父さん」ではなく「オジサン」。ブルーがまさしくブルーとして生を全うした証に他ならないでしょう。

 

普通に泣きました。

 

 

<「forever」:~永遠の愛~>

冠する花は「薔薇」、テーマは「永遠と一瞬」

永遠の愛を誓った恋人のお話。

 

―――醜かった自分の顔を整形し、美しい自分を手に入れた緋依《ひより》。
彼女は大学の卒業研究で、その美しさを永遠のものにするため不老不死の研究を始めます…。
かつての自分が人に踏みつけられる雑草のような存在なら、今の自分は誰もが目を留める薔薇の花のような存在。
けれど今の自分は人の力で造り変えた不自然な存在なのではないかと、次第に疑問に思い始めます。

自然には決して存在しない青い薔薇、青い薔薇の研究をしている恋人。
この幸せがずっと続いてほしいと願う彼女が永遠と一瞬の意味を知る…。

 

一番泣いたお話です。

ずるいです。こんなの分かってても泣きます。ガチ泣きしました。

 

・・・・・・大好きな人と、・・・永遠に一緒にいたい・・・・・・

 

一番卑怯なremembrance modeでした。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

~考察~

 

<マゼンタの本名>

 

「サヤカ」

 

(根拠)

・タイムマシンのパスワード画面で"sayaka"と打つと、「サヤカは二人います。」とメッセージが出る。作中にはvividの沙乎華しかサヤカは存在せず、他に明らかにされていないサヤカがいるはず。

 

・マゼンタは紅と緋色の子であり、二人を繋ぐのはvividの沙乎華だから。紅なら緋色との子供に沙乎華って名付けてもおかしくない。子は鎹とは良く言ったもんです。

 

公式の解答:永原沙乎華

 

あってました。マゼンタの本名に気が付いたときの衝撃がやばかったです。

 

<vividとinnocentの間に起こった出来事>

マゼンタは紅より強い予知能力を持っており、何らかの理由で母である紅を殺害。

それに付随して父である緋色も殺害。理由は不明。

どうやら緋色はマゼンタをかばった模様。

 

公式の解答

紅はマゼンタに殺害される。←合ってた。

 

「事前に未来の話は聞いてたし、沙乎華(マゼンタ)に俺(緋色)も殺されそうになったから、先に俺(緋色)が(自)殺して罪を背負わせないようにみたいな」←間違ってた

 

 

他にも色々関係性とか考えてたんですけど、公式に全て答えがあったので終了しました。

・circularに出てきたマゼンタのおじさんはabandonedの日輪おじさん

・foreverの富士教授の結婚相手はmelancholyの川野さん

とか面白かったです。

 

 

凄いですね。ちゃんと考えられた上で作られていてよかったです。

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しかしまだ一つだけ謎が残っています。

FDである『滅び朽ちる世界に追憶の花束を ~present for you~』において、川野さんを見て紅が含みある視線を投げかけた理由です。

 

何か分かる方は是非ともコメントをお願い致しますm(_ _)m

 

 

 

 

今年プレイした中で好きなゲーム9つ

中途半端な時期ですが、気が向いたので書きます。

ちょっとした感想を添えて紹介する感じなのでよければ気軽に見ていって下さい。

 

順不同で挙げていくか、ランキング形式という体裁にするかで悩んだんですけど、ブログに書く時点でかなり個人的なものになっているので、後者のランキング形式にしようかな~と。

 

面白かった順ではなく、あくまで自分が好きな順(という体)にしています。

 

また、ネタバレは極力避けていく方針です。

が、ネタバレのラインは人それぞれなのでそれに抵触していたらごめんなさい(._.)

 

ま、こんな予防線貼ってる時点でオタク感がやばいですね。さっさといきましょう。

 

 

9.『闇を奔る刃の煌き』(影法師(同人)) (2011-08-13) 

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www.kagehoushi.org

 

あらすじ

 ――認めさせてやる――

武士の世が終らんとする中、若侍は不意に運命とすれ違った。
商家の一人娘、中村蛍の手を取った瞬間、全てが動き出す!
強引、破天荒、けれとも頼もしい男が、愛する女と共に戦い、
道を切り拓いて行く。『流れ落ちる調べに乗せて』の前日譚。
二人三脚で紡がれる新たな立志伝――ここに開幕!

 

 (パッケージより引用)

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男児の武士-重蔵と芯の強い大和撫子-蛍の関係はまさに理想の夫婦の体現でした。

二人の関係の、その本質を捉えた幕開けのやり取りからもう既に心を掴まれましたね。

 

魅力的な登場人物達と織りなす疾走感ある立志伝にスルスルと惹きこまれ、楽しみなが

ら駆け抜けた先に迎えた結末には驚嘆の一言でした。

 

プレイ時間は10時間強くらいで、ボイスは無しです。 

 

最後の展開には賛否両論あるかとは思いますが、自分は好きですね。

 

江戸末期のあのゴタゴタした時代の中を駆け抜ける疾走感、そこで紡がれるサクセス・ストーリー、魅力的なキャラクター同士の浪漫あるやりとり、そういうところが良かったです。

Amazoで1080円と廉価なので手にも取りやすいのではないかと思います。

 

あ、これは非18禁です。

 

 

8.『銀色、遥か』(tone work’s) (2016-08-26)

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ーーー君と初めて過ごした冬。そして、10年後に過ごす冬。

中学生編、学園編、アフター編と三部構成で描かれる、まばゆい恋の物語。

 

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プレイ時間は35~40時間ほどで、結構な分量でした。ボイス有りです。

 

中学編というエロゲでは珍しい時間軸から10年という長いスパンで物語を描かれていることで、主人公とヒロインとの色々な人生を見届けることが出来ました。

EDムービーが卑怯で、普通にだいたい泣いていました。中盤にも挿入歌がかかる場面でも盛り上がりがあって、そこでも泣いてましたね。

 

物語の始まりを予感させ、距離を近づけてゆく中学編

彼女と心を交わし絆を深めてゆく学園編

彼女と契りを結び一緒の人生を過ごしてゆくアフター編。

どの√もとても丁寧で、そのヒロインとだからこそ歩める人生だと強く実感出来ます。

 

さっきから人生、人生言っていますが、この作品をプレイしての正直な感想が

「『銀色、遥か』は人生。」

なんですよね。

 

もう少し正確に言うと、

 

「自分の人生に影響を及ぼすような強いものはないが、『銀色、遥か』では主人公とヒロインとの若いうちの一生が描かれており、それを見届けることが出来て自分は良かったと思う。」

 

という感じです。

 

メッセージ性とかそういう強いものはないんですが、あれは確かに人生でした。

 

どういうところが特徴的だったかというと、 一番は、

主人公に決まった夢がないため付き合うヒロインとの関り合いによってやりたいことが決まり、ヒロイン毎に就くことになる職が異なる、という点ですね。

 

このことによって、そのヒロインと付き合うことで歩むことになる将来という意味付けが為されていて、そのヒロインとの人生"だからこそ"という感覚が新鮮でした。

 

そのせいで主人公万能すぎだろ、みたいな意見も出てるみたいですけど、コンセプト単位での仕掛けなので已む無しであり自分的にはOKという感じです。

また、物語に起伏がなさすぎるという意見も分からなくはないんですが、「人生にそんな起伏なんてあまりない」ことを思えば、コンセプト上の許容範囲内でした。

日常が数ヵ月単位飛んで描かれるのも、長いスパンで描くかつ人生に起伏はそんなにないという点からも、コンセプト的に仕方ない範囲かなと。

 

あと、このブランドの作品の例に漏れず、BGMも歌曲もとても素敵でした。

特に、EDムービーはどれも非常に良かったですね。個人的にべスリー√のが一番です。

挿入歌「夢の季節」とED「beloved story」「ヒマワリ」もかなりお気に入りでした。

ここ最近毎日『銀色、遥か Vocal Collection』を聴いては思いを馳せています。

 

 

 

7.『falling』

(非18禁) (にんじゃはなんにんじゃ(同人)) (2014-08-18)

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nerigomadango.wixsite.com

 

■あらすじ

 数年前に父親を亡くし、莫大な遺産を引き継いだ青年マクビーは、
しかしやりたいこともなく、その金と美貌を持て余しながら
自堕落な生活を続けていた。
 そんな中、彼の家に突如不思議な少女が現れる。

「マクビーがあたしを誘拐したんだからね!」

 自分が少女を家に連れ込む姿が録画されたレコーダー。
 少女はそれを持ち出してマクビーを「脅し」にかかる。
 しかしマクビーに少女を連れ込んだ記憶はない。

 マクビーは経験したことのない事態に翻弄されていき、
少女を取り巻く「厄介事」に巻き込まれていく。

――俺が本当に誘拐したのか?

 マクビーと少女が出会った意味とは?
 そして世間を騒がす「連続児童誘拐事件」とは。

 まるで「降って湧いた」かのような奇怪な運命は、
やがてマクビー自身をも変えていくことになる……。

 

(公式より引用)

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

プレイ時間4~5時間ほどのフリゲです。

簡潔で過不足のない文章、優しげなイラスト、しっかりと伝わってくる人物描写、表題に絡めた章タイトル、と全体的な纏まりが◎。

ジュブナイル成長物語の典型なのですが、じっくりと心に染み入ってきました。

自分好みの作品でとても満足しましたね。読後も優しい空気感に包まれて、しばらく充実感とともにぼけ~~としてました。

 

実はこの物語にはEDが2つあるのですが、そのうちの片方がむちゃくちゃ好きです。

 

短くて、纏まっていて、そして何よりフリーなので、気軽に一度やってみてほしいです(*´ω`*)

 

 

 

 6.『見上げてごらん、夜空の星を FINE DAYS』 (PULLTOP) (2016-05-27)

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『見上げてごらん、夜空の星を』のFDなのでプレイする場合は前作からが推奨です。

 

なんで入っているかというとFDで追加された美晴先生√がとても好きだからです。

 

■あらすじ

住み込みのバイト先「さをとめ」で同居している、かつての恩師であり今はオーナーの娘としてニート状態の早乙女美晴先生。

かつてのやる気に満ちた麗しい姿は今はもう見る影もない。

先生が教師を辞めることになった理由には、主人公たちも少なからず関係していて...

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

自分がどうにかしてあげないといけなくて、でもどうしたらいいのか分からなくて、結局何も出来なかった。そんな無力感に苛まれて、苦悩を抱えながらも全てを投げ出して諦めてしまった人の物語。

 

本当になんか死ぬほどぶっ刺さりました。

こういうの大好きなんです。

 

 好きすぎて抱き枕カバーも買いました。抱き枕を使うのは初めてなので楽しみ(*´ω`*)

 

 

5.『ROSE GUNS DAYS -The Best-』

(非18禁) (07th Expansion(同人)) (2016-08-31)

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 (画像はLast Season盤。ベスト盤はその再販で、ショートストーリーが追加されています。入手難易度を考えても、今ならベスト盤を購入するほうが良いです。)

http://07th-expansion.net/rose/Main.htm

 

■あらすじ

1944年。

日本にとっての第二次世界大戦は、唐突に終わりを告げた。
列島全規模の大災害により、日本は壊滅状態に。
米中連合軍は人道的見地から無条件休戦を提案。日本政府はこれを受託。
ここに、日本の戦争は終わりを告げた。

壊滅状態の日本を復興するため、米中連合軍は共に進駐。
将来、日本の新たな米中戦争の火種にしないため、南北2分割でなく、
市政レベルで細かなチェス模様のように複雑に2分割。
両国はそれぞれの国威を示すため、競い合うように急速な戦後復興を行なっていった。

その結果、ほんの数年足らずで、日本は荒廃から立ち直ることになる。
しかし、中国軍管区はチャイナタウン化し、米軍管轄もアメリカナイズドされ、
その姿はもう、かつての日本のそれとは大きく掛け離れていた。

米中からの大量の移民により、日本人はマイノリティー化。
故国を失った日本人たちは、日本という名の新しき異郷で生きることを強要された。

日本人は、今や亡国の民。
しかしそれでも。身を寄せ合い、彼らは狡猾に、そしてたくましく生き抜いていた・・・。

 

 

舞台は1947年、23番市暗黒街。薔薇と銃の日々が幕を開ける!

物語を彩るは、硝煙と抗争、酒と女と薔薇の花びら…

米中に分割統治された戦後東京の暗黒街を、男と女が駆け抜ける!

 

(公式サイト及びパッケージより) 

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これ一本で「シリーズ4作+ショートストーリー 」の全てが収録されています。

これで2000円+税はお得ですね。

プレイ時間は30時間強くらい。ボイスは無しです。

 

人間的な魅力に溢れたキャラクター達が幾重にも絡みあい、それぞれの思惑や仁義が交錯し紡がれてゆく物語は読んでいて非常に面白く、続きが気になって気になってあっという間にクリアしてしまいました。

 

本当にざっくりいえば、「立派な理想を掲げるものの実力が伴わない弱小マフィアが大切なものを守るために暗黒街でのし上がっていくお話」なんですが、そう一言で片付けられる内容ではありません。

 

そこには、その複雑な時代を駆け抜けた人間の仁義と生き様があり、掲げた理想とやるせない現実があり、守りぬいた過去と受け継がれる未来がありました。

 

勢力の思惑が交錯しハラハラする先の読めない展開や、熱い男女の滾るバトルパート、胃が痛くなるほど感情移入せざるを得ないシーンなど物語としてかなり面白かったです。

 

シナリオが竜騎士さんなので少し説教くさいところもありますが、それはご愛嬌ということで。

 

最近ベスト盤が発売されたので、とりあえず買ってプレイしてみても損はないんじゃないかと思います。

 

www.youtube.com

 

Season1OP曲「愛はオメルタ」が流れるタイミングも抜群で、かっこ良くて大好きです。

オメルタ(伊:Omertà)とは、シチリアのマフィアにおける約定。沈黙の掟、オメルタの掟などとも言う。)

 

最高の薔薇と銃の日々をありがとう。

一番好きなキャラはメリル・田無です。主人公のレオは伝説です。

 

 

 

4.『書淫、或いは失われた夢の物語。』

(Force) (2000-07-15)

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ーーー蜘蛛の糸を伝って。
いつかキミに、
抱かれる日が訪れるまで。

 

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この作品を挙げて他人に何を思われようが、自分が好きな作品のことは好きと言いたいので挙げます。

 

さて、巷では構成ゲーだの言われていますが、一番感服したのは「設定とその暗喩、メタファー」です。

こればっかりはプレイしてもらわないと本当に何も言えないんですが、1つの物事で2つのことを暗喩していたのが非常に上手く、それに気が付いた時は脳汁がやばかったです。

 

全部プレイし終わって、これはどういう設定のどういう物語だったのかを考えると、これもまたとても好みのものが立ち現われてきました。

 

キーボードに何度も打ち込んだあの5文字の重さを、一生忘れることは無いと思います。

 

 

 

 

3.『さくらむすび』 (CUFFS) (2005-08-05)

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■あらすじ

僕には、両親がいない。
そのことに気づいたのは、物心ついてしばらく経ってからのことだった。
僕の側には桜がいて紅葉がいて、養ってくれる大人たちもいて。
それで、何もおかしいことなんてない。
そう思っていた。

だから両親が事故で他界しているのだ、ということを理解した際も、特に衝撃を受けたという記憶がない。
どうしたって、僕にとっての両親は、ここまで僕を育ててくれた二人でしかありえなかったから。

けれども…
どうして僕と桜が別々の家に引き取られたのか。
そのことだけは、とても疑問に思っていた。

子供を一人養うということがどれだけ困難であるか。
当時は、それを想像することすらできなくて…
幼い日の僕たちにとって、それはただ理不尽な話でしかありえなかった。

どうして兄妹が離れて暮らさなければいけないのか。
この世界には神様だとか魔法だとか、何かしら目に見えない大きな力があって。
それが僕たちから両親を奪い、そして今度は妹までをも奪おうとしているんじゃないか?

そんな幼い考えに囚われていた、あの頃。

僕は確かに子供で…
自分一人ではなんにもできなくて…

ただ、桜の実の兄であること。
それが、幼い僕の精一杯だった。

だから――
早く大人になって、僕が桜を守るんだ、と…
僕だけはずっと桜の側にいてあげるんだ、と…


あれから、ずいぶんな時が流れ
数ヶ月後には卒業し、真剣に将来を見据えなければならないこの時になっても

しかし僕は、未だ子供のまま――

いつかの幼い誓いを、果たすことができずにいる

 

(公式サイトより引用)

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プレイ時間は15時間ほど。ボイスは無し。

 

初めてプレイしたトノイケ作品でした。

撫でるようなタッチで優しく描かれるやりとりは実に心地よく、軽妙でテンポ感もあり、会話を通してキャラクター達の日常の距離感や感情がよく伝わってきました。

心情描写も繊細かつとても丁寧で、けれども圧力を伴ってじくじくと胸に浸透してくるような感じが印象的でしたね。

 

優しい絵と優しい音楽と優しいキャラクター達の織りなす優しい世界、そしてそこに横たわる拭えない不気味さ。プレイ中にはおぼろげな輪郭しか掴めなかったそれが、プレイ後に考察をみることによって形をなした時には、本当に驚きました。

 

ネタバレ込みで書いた感想です。

no1234shame567.hatenablog.com

 

あらすじの文章を読んで良さそうだな、と思った方は是非やってみてください。

繊細な心理描写には本当に感じ入るものがありました。

 

 

 

 

 1位は同率で2作品あります。

 

1.『Dear world -Re.-』

(非18禁) (non color(同人)) (2009-02-08)

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www.dlsite.com

 

■あらすじ

はじめて笑って。はじめて泣いて。

はじめてケンカをして。はじめて仲直りして。

そんな風な、たくさんのはじめてが詰まった時代。

 

どんな大人も通った時代。

包まれて護られて、疑わなかった時代。

ーーそんな時代に、少年はいた。

 

 皆守ユウキは小学生。
 毎日、仲間たちと飛ぶように遊んでいる。
 ある日女の子が引っ越してきた。
 彼女の名前はリリィ。

 ずばり、仲良くなりたい。
 でも、方法がわからない。
 とりあえず、一緒に遊ぶことにした!

すべてが終息してから十数年。

止まりかけていた世界で、少年は少女と出会い、少しの時を過ごす。

 

そして知る。

大きなもの、ゆるぎないもの。そのつながりを。

 

 (公式サイト、DLsiteより引用)

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プレイ時間は6時間ほど。ボイスなし。

この作品の一部は前作『Dear world-the one-』の続編なのです。十全に楽しむためには前作プレイ必須なので頑張ってください。

 

それを乗り越えて本作をプレイする価値は十二分にあると信じています。

 

 

小学校時代。それは誰しもに存在する、あのなんとも言い表せない郷愁を伴った時代。

包まれて護られて、疑わなかった時代。

 

きっかけが無ければ普段思い出すことはない、原体験の一杯詰まったあの時代。

 

記憶自体はあやふやでも、胸に去来するものはきっと多いはず。

 

そんな時代のことを掘り返して思い返させてくれる、非常に稀有な作品です。

もう本当に得難い、大好きな作品として強く心に残っています。

本当に好きです。

あらすじを読んで物語を思い出し噛みしめるだけで、その温かさに泣きました。

ノベルゲームの中で一番泣いた作品かもしれないです。

 

 

 

 

 

 

 

 

1.『CHAOS;CHILD』(非18禁) (5pb.) (2016-04-28)

 dmm

 

多くは語らないです。

ただその構成と演出の妙に、放心状態にならざるをえない程ぶちのめされました。

 

死んだ場所で生まれ、出会った場所で別れる。

”2人”の道はカオスに重なった。

 

このED以外考えられないほど美しい結末でした。

 

スポットライトの演出や「風鈴」の意味などもよく考えられているなぁと、しみじみと思います。

 

勿論シナリオの細部などに粗が無いとはいえないのですが、よく考えて作られたのだろうとこだわりを感じる、本当に感じ入る部分が多い作品でした。

 

 

終わりです。